立花 遥
いつもと同じ部屋
立花 遥
いつもと同じ香り
立花 遥
いつもと同じ人
立花 遥
いつもと違う光景
立花 遥
私が体験した不思議な話
立花 遥
この話は本当に不思議な話だったので覚えている範囲でここに書いてみます
立花 遥
私は今から約3ヶ月前に付き合い始めた大好きな彼氏の家に泊まってました
立花 遥
何の変哲もない1日でした
立花 遥
その日も幸せで在り来りな日々
立花 遥
二人でテレビを見たり一緒にご飯を食べて幸せな夜を過ごしました
立花 遥
本当に幸せな時間を過ごしてました
立花 遥
二人で一緒の布団に入りずっとこんな日が続けばと願っていました
立花 遥
それが朝起きたら3人になっていました
立花 遥
私はまだ理解が出来ません
立花 遥
彼氏が2人います
立花 遥
何故でしょう
立花 遥
1人は怯え
立花 遥
1人は私を抱き締めています
立花 遥
現状を理解出来ません
立花 遥
寝ぼけているのでしょうか夢を見ているのでしょうか
立花 遥
昨日までは1人だけだったのに
蒼太A
お前誰?
立花 遥
(私を抱えている彼氏が怯えている彼氏に聞いた)
蒼太B
蒼太だよ、お前ら誰だよ、立花さん?立花さんだよね?何してるの!?
蒼太A
俺が蒼太だよ、何だよこれ、何で俺がいるんだよ
蒼太B
は?俺が俺だよ、お前誰だよ、マジで意味わからん
立花 遥
(もう一人の彼氏は大きく息をしていました、私はただ二人の後ろで震えていました)
蒼太A
落ち着けよ
蒼太B
落ち着けるかよ、警察呼ぶわ
蒼太A
待てよ、警察呼んでなんて説明するんだよ、取り敢えず落ち着いて考えようよ
立花 遥
(無言が3人を包み込む、何分くらいたったのだろうか)
立花 遥
(一人はベットの上、一人は椅子の上に座っていた)
立花 遥
(私は彼の隣に座りその二人の様子をじっと見つめていました)
蒼太B
何が起きたんだよ、まず立花さんは何してるの?
立花 遥
何してるのって、昨日泊まってそのまま一緒に寝たからそのまま
蒼太B
え、俺と立花さんが?何で?
立花 遥
何でって恋人だし
蒼太B
え、いや、違う
立花 遥
(彼は気が動転しているのだろうか私と昨日一緒にいた事を忘れているようでした)
蒼太A
昨日は映画を見て、一緒に寝た。俺が本物だ。俺が本物だ!
立花 遥
(もう一人の彼は一点を見つめながら小言を繰り返していた)
立花 遥
(彼も気が動転しているのでしょう)
立花 遥
(私も焦りはあるが二人を落ち着かせなければいけない)
立花 遥
(私はキッチンに行き三人分のコーヒーを沸かせることにした)
蒼太B
立花さん何でコーヒーの場所知ってるの?
立花 遥
だって何度も来てるから
蒼太B
俺と立花さんが?分からない、やっぱりおかしい
蒼太A
俺とな、お前じゃない、俺と遥が付き合ってるんだ、何度もコーヒーを作ってもらった、俺が本物だ
立花 遥
まってちょっと、すぐに沸くから、一旦落ち着いて
立花 遥
(はぁ、っと二人同時にため息をこぼした)
立花 遥
(やはり二人とも蒼太だ)
立花 遥
(私の中の恐怖心は少しずつ消えていって好奇心のようなものがじわじわと湧いてきた)
立花 遥
(ベットにいる方の蒼太は確実に私の知っている蒼太で昨日までの蒼太だ)
立花 遥
(そのおかげで安心感もあった)
蒼太B
いったいどうなってるんだ、現実なのかまだ理解出来てない、どうしたらいいんだ
立花 遥
(私の知っている方の彼氏は腕を組み怯えてる)
立花 遥
(こんな時でも私は彼を可愛いと思ってしまった)
立花 遥
(もう一人の彼は布団を半分被ったままベットから動こうとしない)
立花 遥
(何でこっちの彼は私の事を知らないのだろう)
立花 遥
(いや名前は知っているようだ)
立花 遥
(だが仰々しく苗字で呼んでくる)
蒼太B
いつから付き合ってるの?
蒼太A
いつからってイルミネーションを見にいった時だよ、自分に質問されるの気持ち悪いな
蒼太B
自分に質問するのも気持ち悪いよ
立花 遥
(二人とも機嫌が悪い、一触即発しそうだった)
立花 遥
(私が何とか間に入り上手く中和しないといけないと本能的に感じました)
立花 遥
もっと本人しか知らない質問すればいいんじゃない?
蒼太B
あ、ああ、そうだな、誕生日は?
蒼太A
7月22日
蒼太B
正解
蒼太B
血液型は?
蒼太A
A型だよ
蒼太B
正解、はあ、どうしよう、思いつかない
蒼太A
ちょっと待て次は俺に質問させろよ
蒼太B
あ、ああ、いいよ
蒼太A
母親の名前は?
蒼太B
聖子だよ
蒼太A
正解
蒼太A
父親の名前は?
蒼太B
正樹
蒼太A
正解
立花 遥
ちょっと二人とも何か調べれば出来そうな質問じゃんもっと何か無いの?
立花 遥
(二人は同時にコーヒーをすすった。少し考えていた)
蒼太B
はじめて見た映画は?
蒼太A
ゴジラだよ、他の怪獣がいっぱい出るやつ、あの、ほら名前は出ないけど
蒼太B
んー、正解だ、これは本当に俺かもしれない
立花 遥
(また二人は同時にコーヒーを飲んだ)
立花 遥
(私はそんな姿が愛おしく思えてきた
蒼太B
立花さんは何してるの?
立花 遥
何してるのって昨日から一緒にいたじゃん
蒼太B
どうしても思い出せない、やっぱり変だよ、立花さんがいるのは、俺がいるのも変だけど
立花 遥
何で私の事覚えてないの?
蒼太B
いや立花さんは知ってる、仕事で一緒じゃん
蒼太B
でも付き合ったりはしていない
蒼太B
うちの場所も知らないし
蒼太B
コーヒーの場所も知らない
蒼太B
俺に彼女もいない
蒼太A
やっぱりお前が偽物だな、
蒼太A
俺が告白してほぼ毎週彼女はうちに来てくれたし何度もコーヒーを沸かしてくれた、料理も作ってくれたじゃん
立花 遥
(本物の蒼太は優しかった)
立花 遥
(偽物の蒼太は私と過ごした日々を全く覚えていなかった)
立花 遥
(蒼太が何人いても私を知らない蒼太がいるのは傷つきました)
立花 遥
(少しずつ涙が出てきました)
立花 遥
(私は蒼太のことこんなに知っているのに)
立花 遥
(全く理解が出来ませんでした)
立花 遥
(蒼太なのに蒼太じゃない彼をじっと見つめる)
立花 遥
(彼は怯えた目でこっちをみている)
蒼太B
動くなよ!
立花 遥
何でそんなこと言うの?
蒼太B
近寄るなよ!
立花 遥
大丈夫だよ怖がらないで
立花 遥
(彼は布団にくるまりながらじっと睨みつけてくる)
立花 遥
(それは小動物にも見えるし肉食動物にも見える)
立花 遥
(とても恐ろしい目だった)
立花 遥
(警戒と不安が混じり合い攻撃的な表情をしていた)
立花 遥
(洗い息だけがこの沈黙の部屋に響いていた)
蒼太A
気をつけて
立花 遥
うん。大丈夫
蒼太B
出て行けよ!出て行けよ!
立花 遥
(彼が怒鳴る。部屋に響くその声は私を一瞬怯ませた)
蒼太B
出て行けよ!
蒼太B
いいから出て行けよ!
立花 遥
(彼は勢いよく起き上がり私を力いっぱい突き飛ばした)
立花 遥
(私は床に座り込むしか無かった)
立花 遥
(そして彼と彼は同じ服を掴み合い、お互い引っ張り合う)
立花 遥
(お互い同じ力なのか全く微動だにしない)
蒼太A
遥!助けて!
立花 遥
(私は慌てて何か彼の助けになる物を必死に探した)
立花 遥
(私はテーブルの上にあった灰皿で彼の頭を力いっぱい殴りつけた)
蒼太B
うっ!
立花 遥
(彼は苦しそうにしながら私の彼に鬼の形相でしがみつく)
蒼太A
遥もう一回!
立花 遥
(私は彼を守るために彼を殴った)
立花 遥
(ドンと硬いもの同士が重なる鈍い音が響く)
立花 遥
(力が抜け膝が崩れ落ちる)
立花 遥
(それでも彼は必死に抵抗する)
立花 遥
私は無我夢中でガラスの灰皿を振り下ろし続けた)
立花 遥
(そこから私は意識を無くした)
立花 遥
私が気がつくと彼が一人
立花 遥
赤と黒の混ざった液体を零しながら白目を半分開けていた
立花 遥
ピクピクと痙攣している
立花 遥
私は灰皿を手に取り偽物の彼に口づけをした