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自然豊かな町、 木漏れ日がさす森を、 櫻井日菜は歩いていた。
翌日に小学校の入学式を控えた日菜は、 探検気分で森の最深部までたどり着いた。
日菜
興味本位で覗いた穴の中は空洞で、 真っ暗な闇が広がっていた。
その時、 うっすらと見えた影が、 勢いよく日菜の頭を直撃した。
日菜
とてつもない衝撃とともに激しい光に包まれ、 日菜は思わず目を瞑る。
再び目を開けた日菜の前にいたのは、 背中に羽の生えた、 同じぐらいの背の少年だった。
???
生意気な口を利くその少年は、 日菜を不思議そうに睨みつけている。
何が起こっているのかわからない日菜は、 ある異変に気づいた。
日菜
背中に何かがついている、 というより生えていた。
辺りを見回すと、 さっきまで見ていた景色の全てが、 大きく見える。
近くにあった泉に顔を覗かせると、 日菜の姿は目の前の少年に、 酷似していたのだった。
日菜
動揺が隠せない日菜に対して、 慌てふためく姿を呆然と見つめていた少年は、 ため息混じりに口を開いた。
???
だけ、で済まされる問題ではない。 それと『妖精』という現実離れした情報に、 日菜の頭の中では、 混乱を示すひよこが回り続けていた。
日菜
???
反省の色を一切見せない少年の態度に、 日菜は怒りを覚えながらも名乗ることにした。
日菜
トト
なぜかこれから仲良くしていこう、 という口ぶりのトト。
そんなことは当然お断りの日菜は、 トトに対して声を荒げた。
日菜
トト
きっぱりと言い放ったトトの言葉に、 絶望する日菜。
日菜
うなだれる日菜をよそに、 トトは通ってきた穴をまじまじと覗いていた。
トト
第二の影が、 先ほどの再放送のように、 トトの頭を直撃した。
トト
穴から出てきたのは、 トトと瓜二つの少年だった。
???
トト
露骨に嫌な顔をしたトトに、 ララはお構いなしに突っかかる。
ララ
うるうるとわざとらしい涙目で、 トトに擦り寄るララ。
日菜からすれば、 どっちがどっちなのか判別できないほど、 二人はよく似た双子だった。
日菜
日菜が二人の馴れ合いに割り込む。
それに反応したララは、 じっくりと観察しながら、 日菜の周りをぐるりと一周した。
ララ
トト
反論できないトトは、 ゆっくりと視線を逸らした。
ララ
ララの容赦ない煽りが始まった。
トト
ララ
ふてくされ、 そっぽを向いたトトに、 呆れた表情を浮かべたララは、 再び日菜のほうを向き直した。
ララ
笑顔で握手を求めてきたララに、 日菜は恐る恐る手を伸ばし、 少しひんやりとした手を優しく握った。
日菜
ララ
無邪気ながらも大人びた、 不思議な雰囲気を纏ったララは、 お兄さんといった立ち位置で、 日菜に話しかける。
それが癪に触るのか、 トトがすかさず口を挟んだ。
トト
俺の方が先に知っていた、 とあからさまな態度で、 自慢げに鼻を鳴らす。
ララ
ララの言葉に日菜が小さく頷く。
ララ
今度はララが自慢げに鼻を鳴らした。
面目丸潰れのトトは明確に睨みを効かす。
日菜
流石に妖精の姿のままでは、 人前に出ることができない。
しかし、 家に帰らなければ、 確実に警察が出動することになるだろう。
トト
トトは日菜に向けて、 指を一振りした。
その瞬間、 日菜は光に包まれ、 人間の姿へと変わった。
日菜
手のひらにトトを乗せて、 日菜は姿が変わったことを再確認した。
トト
ララ
日菜の右手と左手に座り、 また言い合いを始める二人。
日菜
正反対で似た者同士の双子に、 日菜は興味津々だった。
「「どこが!」」
反論の言葉さえ息ぴったりで、 思わず日菜は吹き出してしまった。
それを見て恥ずかしくなったのか、 既に空中に移動していた双子は、 顔を見合わせ赤らめた。
日菜
日菜は時計を見て、 空を見上げた。
日菜
そう言って日菜が手を振ろうとすると、 トトは不思議そうな顔をした。
トト
日菜
どこまで図々しいのか、 日菜は驚きのあまりこれ以上言葉が出ない。
ララ
解釈違いを起こしているララに、 呆れた眼差しを向ける日菜。
トト
ララ
優遇するどころか、 家に招き入れる心持ちさえない日菜は、 言い合いに割り込んだ。
日菜
「「え?」」
日菜と双子の間に冷たい風が吹き抜ける。
止まってしまった時間を再び動かすように、 ララが口を開く。
ララ
ララは徐にクッキーを取り出し、 謎のごますりを始めた。
トト
そう言いながらララのクッキーをひょいと掴み、 つまみ食いするトト。
ララ
空中で続く言い合いを、 どう収拾づけるべきか、 日菜は選択したくなかった答えを、 導き出していた。
日菜
その言葉に勢いよく振り返る双子。
ララが高々と拳を上げて叫んだ。
ララ
収拾はついたものの、 どこか納得のいかない日菜であった。
ララは日菜の左肩に座り、 足をぶらぶらさせている。
その一方で、 トトは日菜が背負っているリュックの、 小さなポケットで寝ていた。
日菜
日菜の声かけでトトが目を覚ます。
ララは既に日菜から離れ、 玄関のドアの覗き穴を頻りに観察していた。
日菜
日菜がドアノブに手をかけ助言する。
ララ
ララはそう言った後もまだ覗き続けていた。
日菜は二階の部屋に着くや否や、 リュックを放り投げ、 ベッドに寝転んだ。
日菜
日菜が双子に視線を向ける。
ララ
トト
幾度と見た光景に深いため息をついた日菜は、 静かに目を閉じて状況を整理することにした。
どれだけ考えても完全には理解できず、 同じ考えが日菜の頭の中を巡るだけだった。
トト
ゆっくりと目を開ける日菜の額に、 人差し指をちょんと突き立てたトトが、 恥じらいもなく至近距離で日菜を見つめていた。
日菜
驚いた日菜は勢いよく起き上がった。
その頭を間一髪で避けたトトは、 不思議そうに再び見つめる。
トト
日菜
日菜は自分の顔が熱くなっていることに気づいた。
もしトトが人間であったなら、 一瞬で虜になってしまっていたかもしれない。
日菜はそんな妄想にストップをかけ、 平常心を保とうとする。
トト
トトはそう言って日菜から距離をとった。
ララはその光景を見て何かを察する。
ララ
にやにやするララは、 そう囃し立てた。
言葉の意味を理解できない日菜は、 気にせずスマホをいじり始める。
トトも同様に、 部屋の探索へと戻っていった。
夕食済ませ、 就寝の準備をする日菜。
机の横に置いてある、 新品のランドセルを見つめながら、 翌日のことを想像する。
日菜
トト
不安そうな日菜に声をかけたのは、 窓際で星を眺めていたトトだった。
日菜
ララ
物騒な説明に身体を震わせたララは、 真っ赤なランドセルにぼんやり映る、 自分の姿を見つめていた。
日菜
ララ
日菜の気持ちが伝わり、 ララも不安な表情になる。
日菜
あまりにも可愛い悩みに、 トトが声をあげて笑いだした。
突然の出来事に日菜は目をまん丸にさせる。
日菜
トト
トトの言っていることが、 日菜は理解できなかった。
ララ
ララが優しく助言する。
トト
そう言って窓際から離れたトトは、 日菜の目を見て言い直した。
トト
かっこつけではない心からの本音が、 日菜の胸につっかえていたものを洗い流していく。
出会ってまだ一日も経っていない、 早すぎる友達宣言が、 なんの躊躇いもなく心に染み渡っていくのを、 日菜は感じていた。
日菜
大きな感謝を伝える声が小さくなったのは、 恥ずかしさと嬉しさが、 日菜の心を染めた証拠だった。
トト
相変わらずの態度だが、 それがトトの優しさだと日菜は気づく。
ララ
明るく言っていても、 ララの言葉の内容は脅しそのものだった。
しかし、 鈍感なトトには通じない。
トト
ララ
トトのあっけらかんとした態度に、 ララは頬を膨らませ睨みを効かす。
トト
ララ
またまた始まる兄弟げんか。
日菜は『けんかするほど仲が良い』と、 いつの日か母が言っていたことを思い出した。
ことわざを頭の中に刻み、 日菜はその光景を微笑みながら眺めていた。
ララ
ララが日菜の表情に気づいて声をかける。
トト
察する能力ゼロのトトが、 ララの後ろから顔を出す。
日菜
適当にけんかを仲裁し、 日菜は布団に潜り込んだ。
双子もちゃっかり布団に入り、 目を閉じる。
三人はお互いに「おやすみ」と言い合い、 眠りについた。