自分は慣れない道を鞄1つで歩いた
あるのはこの国の通貨と入国許可書
そして数日分の日用品のみ
何を思ったのか、通信器具などは全て置いてきてしまった
語り部
おや、お客人

語り部
この国に来るなんて珍しい方もいたものだ

語り部
して、この国にはどんなご用事かな?

語り部
………おお!この国について興味があると!

語り部
いやいや、失礼。少し驚いてしまったよ

語り部
この国の"人"を研究したいと言う研究者は山のようにいたんだがね

語り部
君のような、この国の文化や生活を知りたいと思う人は今までいなかったのさ

語り部
とても嬉しいね、君なら色々話せそうだ

"この国の人について研究者する"と言った彼の目に少し悲しそうな色が混ざったような気がした
語り部
ああ、そんな暗い顔をなさるな、ここの国の者達はみんな気にしていないさ

語り部
記念だ、飯でも奢ってやろう、付いておいで

連れてこられたのは綺麗なレストランだった
進められた食事はとても美味しかった
語り部
そうだ、この国で勉強する前に予備知識は必要だろう?

語り部
この私がお話しようじゃぁないか

語り部
さて、まずこの国の人間についてだ

語り部
一番重要かもしれん、よーく聞いといてくれ

語り部
この国はな、人間社会から追放された者達の集まった国なのさ

語り部
決して犯罪者という訳ではないよ

語り部
ただ、他の人とは少し違う所があるんだ

語り部
ほら、あそこで踊ってる嬢ちゃんを見てみな、綺麗に水を纏っているだろう?

彼の視線を追うと
彼の言うとおりに、水を体に纏わせながら楽しそうに踊る少女がいた
語り部
あの子は生まれつき水に好かれててな、水を操れるのさ

語り部
ここのシェフは火を出すことが出来るぞ

語り部
人体発火を自由に起こすことができて、なおかつ微調整まで出来る。すごい能力だろ?本人はガス代が浮いて便利だ、なーんて言ってるがな

語り部
そしてこの私も、ほら

語り部
体に植物を生やすことが出来るのさ、なかなかメルヘンチックだろう?

語り部
こんな姿や能力を持っているからかな、外の人らには理解されず、追い出され、逃げてきた人がほとんどだ

語り部
ああ、また暗くなってしまった、申し訳ないね

語り部
この国は、助け合いの精神で続いて来ている

語り部
何かしら困った事があればその辺のやつに声をかけてみると良い。
きっと力を貸してくれるさ

語り部
私に声をかけてくれても良いぞ?いつもこの辺りをふらふらしてるからな

語り部
……ただ1つだけ、外の人から暴力を振るわれてきた子がいるってことも忘れないでくれ

語り部
君に怯えて逃げ出してしまう子もいるだろう、どうか気を悪くしないで欲しい

語り部
………うん、君なら大丈夫そうだ

語り部
さぁ、話が長くなってすまなかったね

語り部
ようこそ、"枯れ木に花咲く国"へ

語り部
存分に楽しんでいってくれ

語り部
君の望む物が見つかることを願っているよ

彼に背中を押され街に出る、振り替えると彼の他にレストランで食事をしていた人達が手を振っていた