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ーXX県 集落

美也

...ようやくこの時ね

一帯が暗闇に包まれる山中

虫の奏でる音色しか聞こえない中、草むらに潜む[美也]はそう呟いた。

美也がここを抜けてからもう三年経つんだもんな。

僕からしたらたった三ヶ月だけど

美也は念願の時...だよね。

傍らで身を潜める[透]がその声に応える。

ぱっと見た風貌は男らしい見た目だが

それに反して身体はやや華奢な様子だ。

そして美也も、その美しい顔つきとはうってかわって

身体つきは所々骨格がわかるような肉体であった。

それもそのはず、二人の性別は見た目とは逆。

美也は男、透は女だ。

美也

朱里からだ。

朱里

「美也、透へ」

朱里

「24:00よ。
もう持ち場にはついてるかな。

朱里

今後、メールへの返信は不要。
私の指示通りに行動して。

朱里

理由は簡単。
きっと返信する暇もないでしょうし

朱里

返信する暇があれば
とっとと次の指示に従って
行動してほしいから。

朱里

どのみち、私の指示通りに
動けなければ捕まって一発で
アウトなのだから

朱里

返信で
泣き言言われてもどうしようも
できないのだけれどね。」

美也は[朱里]と呼んだ人物のメールを淡々と読み進めた。

朱里は冷酷ともとれる言葉遣いで 文章を綴ってあった。

朱里

「入り口以外は完全に封鎖されて
る上に、カメラでの監視は24時
間体制よ。

朱里

唯一入り口は24:00に
入れ替わる数分だけ無人。
勿論カメラはある...

朱里

でも大丈夫。
話してある通り、私がクラック
してその数分は止められる。

朱里

確実にこの時間で侵入して。

朱里

侵入後は直ぐ様住人エリアへ
移動して。

朱里

見回りは必ず毎時20
分に出るから猶予はあるわ。

朱里

安全な死角へ隠れ、次の指示を
待って。」

美也

ーだってさ。

...今更だけど。

本当にこいつは信じられるのか?

メールを読み終えた美也が隣で除き見ていた透に話しかける。

透はこの朱里という人物を、あまり気に入っていないようだった。

美也

透は朱里と話してないもんね。
でも大丈夫。

美也

この内部の情報を全て知ってる上に

美也

この集落の管理者に女は一人もいないこと知ってるでしょ?

そうだけど...

美也

朱里は同じ苦痛を味わった[聖献者]としか話したくないんだって。

美也

電話でも話したし、信用に足りる人物よ。

...まあ、美也が信じてるなら、僕も信じるけどさ。

歯切れ悪く透が呟く。

無理矢理自分に納得させているようで、それは見ても分かるが、朱里にたいしてのこの反応はいつものことだった。

美也はそんな透を無視して、携帯を肩に下げたショルダーバッグへしまうと、集落の入り口を見つめ、口を開いた。

美也

ーここは[男の楽園]。

美也

男が男のために作った、欲望にまみれた集落。

美也

そして

美也

今から私たちが壊す、憎んでも憎みきれない最低の場所。

美也は表情を歪めながら、静かに、 だが力強くそう言った。

美也

ここを憎む人間は、私は話せばわかるの。

美也

しかも、もう、どうせ引き返せない。

悔しそうな、哀しそうな、そんな表情をする美也を見て、透はため息をついた。

...そうだな。
悪かったよ、水を差して。

もう時間だ。
ぶっ壊してやろうぜ。

僕らで、ここを。

200mほど離れた集落の入り口で、 ライトを持った男が後ろを振り返り立ち去っていく。

それを見て、透と美也は立ち上がった。

美也

ええ。
私たちで、壊すの

美也

私たちの生まれ育った、この場所を

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