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主
しにがみ
公園のベンチで座ってた 俺の顔の横に、にょきっと 缶ジュースが伸びてきた
慌てて受け取ると しにがみくんは俺の隣に 腰掛けてきた その手には俺にくれた ものと同じジュース
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
遠慮がちに、できるだけ 音を鳴らさないように 缶を開ける
夏の日は長いと言うが もうどっぷりと暮れていた それでも7月の風は生温く 喉を通るジュースの冷たさは 心地よい
らっだぁの行きそうな場所を 探したものの、結局 らっだぁは見つからなかった
スマホを見ると、もう夜の 8時を回りそうであった こんな時間までしにがみくんに ついてきてもらって…… 連れ回して、 そう思うと申し訳なさで苦しく なって、もう一度
ぺいんと
と声を漏らした しにがみくんはそれを ジュースに対することだと 捉えたのか
しにがみ
と、俺の頭を小突いた
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
手で顔を覆った しにがみくんを見て笑う 笑ってる俺を、しにがみくんは じっと見つめている
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
しにがみくんが言う 不器用なこの友人は 不器用にも俺を励まそうと してることがわかった
ぺいんと
俺はなんとか返事だけすると 一気に、ジュースを飲み干した できる限り、上を向く 夏の星空はゆらゆらと ぼやけた
さてと、と言いながら 立ち上がると、しにがみくんは 離れたゴミ箱に狙いを 定めた
”あきかん”という文字の 下に穴がふたつ 無謀にも、あの穴に空き缶を 通そうとしているらしい
勢い良く投げる
がんっ、からから……
……当たり前だ 入るわけないのに
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
外に転がっていた 空き缶を拾い、ゴミ箱に 入れるしにがみくん 彼はそのまま、ゴミ箱を 叩きながらこっちを向いた
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
しにがみくんは ニヤニヤとした 渋々空き缶を投げる 入るわけないのに
どうやらこの同級生は 友達に、自分と同じ失敗を してもらいたいらしい
俺の投げた空き缶は 放物線を描きながら ゴミ箱の前に落ち…る と思われたが
何かに弾かれたように 浮き上がり、そのまま 吸い込まれるように穴の 中に入っていった
しにがみ
その空き缶の動きに しにがみくんは目玉が 飛び出んばからりに驚く
ぺいんと
ぺいんと
喜ぶ俺に
しにがみ
としにがみくんは 俺に挑戦を申し込んだ
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
そう言った瞬間 生ぬるい風が2人の間を 通った、振り返ったが 何も無い
2人は、いつものように 帰路についた
らっだぁ目線
しにがみ
しにがみくんに干された ぺいんとがいやいや 空き缶を投げる
俺が落ちそうになった 空き缶を捕まえ、勢い良く 穴に入れてやると 2人は驚いた
何やってんだ俺 ただの怪奇現象だろ、これ
自分でやっておいて 余計に虚しくなる
『俺は、この力を 持ったのには、ナンカ意味が あるって思っテル』
『例えば…… らっだぁさんみたいな 奴の助けになる、トカ』
みどりの言葉を思い出す 今俺の姿を見れるのは みどりだけ
助けを求めるなら あいつに頼るしかない
…助けってなんだ? 役目を終えた俺が何を するんだ? そもそもなんで俺は こんな所にいるんだ? みどりに成仏を 手伝ってもらうとか?
いざとなったらそれも いいかもな、と1人自潮の 笑みを浮かべる はは、と出した声は届かない どこにも、誰にも
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
そう言ったぺいんとの 言葉に息が止まりそうに なった
あのお人好しは 消えた自分のことを まだ考えてくれているのだ
…わかってた、わかってたよ 俺、ぺいんとにまだなんも 言い残せてないよ 消えれないんだよ
俺は歩き出す2人の前に 先回りして立ちはだかる 2人を抱き締めれるように 両手を広げ 2人に向かっていった
俺の両手は、2人を すり抜けて虚空を抱いた
あぁ、やばいな、コレ
上を向いて息を整えると 俺は帰る、2人とは反対の 方向に走った
いっそ、このまま、夏の夜に 溶けてしまいたかった
クロノア視点
クロノア
俺が声をかけるとぺいんとは ぴんっ、と背筋を伸ばした
ぺいんと
クロノア
ぺいんとはちゃんと あと片付けやるしね
ぺいんとが居たのは 3階の空き教室だった 普段は吹奏楽部に占領される 校舎だが、最近の吹奏楽部は 外部の練習が多いらしく 他の文化部が悠々と使っていた
勿論、美術部も例外ではない
ぺいんとはう〜んと 唸りながら鉛筆の線を 消し始めた
夏も本番 他の部員が順調に制作を 進める中、彼はなにやら 行き詰まっているようだ
ぺいんと
ぺいんとは消しゴムを置き 水筒に手を伸ばした
クロノア
俺の言葉の意味が わからないらしく ぺいんとは、こてん、と 首を傾げた
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
まぁ、当たり前の質問だ
クロノア
クロノア
クロノア
何ですかそれ、と 笑うぺいんと しかし直ぐに困った顔に なるあたり、どうやら そのことわざもあながち 間違えではないようだった
クロノア
ぺいんと
弱々しく笑う ぺいんと
ぺいんと
ぺいんとは少し考え込む 微笑みをそのままに
ぺいんと
嘘をついてるのでは なさそうだった 彼は実際に制作に 行き詰まってる
しかし、ぺいんとを悩ます 何かがあること、 そうやって悩むぺいんとを 気にかけてしにがみくんが 元気をなくしていることは 容易に推測されることだった
部長はなんでも お見通しなんだよ
そうは言わずに、俺は 違う言葉をぺいんとに かけた
クロノア
俺は授業をするように 教卓の前に躍り出る 肘を置くと教卓は ぎしっと音を立てた
クロノア
ぺいんと
クロノア
ぺいんとは俺のアドバイスを 受けて更に考え込んだ
クロノア
その言葉にぺいんとは ぱっと顔をあげた
クロノア
クロノア
クロノア
ぺいんとの肩に力が 入らないよう、 真面目な話も出来るだけ おちゃらけた風に 喋る
ぺいんと
クロノア
ひとはしあわせ…と ぺいんとは俺の言葉を 呟いた
クロノア
クロノア
ね?と、ぺいんとに 問いかける
はは、と微笑んだ彼の笑みは 少しだけ明るくなった気がした
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
教室を後にしようとして ぺいんとに呼び止められる
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
笑った彼の顔は また弱々しいものに 戻っていた
きっと俺には触れられない 何かがあって、わからない 何かがあって、どうしてあげる ことも出来ない何かがある
きっと救い出してあげれるのは 俺ではないことも多いし 今回もそうだろう
だけど、感じるのだ 自分でもわからない 不思議な感覚 血が騒ぐように、 身体全体が自分に 訴えるのだ
彼らを守れと 美術部皆の幸せが 俺の幸せでもあると
部長が去っていった 教室に1人残った彼は 何かを思いついたように 絵の具を並び始めた
主
主
主
主
主
主