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静(じん)さんやかすみさんの裁判が終わってから

あすみさんは一生懸命リハビリに取り組み

長い時間をかけ少しずつ

だが確実に快方に向かっていた

梶原智香

やっと普通食が食べられるようになったんだって!

沢田マリカ

よかったですね!

芹沢大和

歩行訓練も始まってるんですよね?

梶原智香

そうなの!

梶原智香

少しずつだけど色んなことができるようになって

梶原智香

本人も嬉しいみたい

裁判も終わり

私達の役目はそこで終わっていたのだが

あすみさんのことを心配した梶原さんが

休日などに病院へ出向き

個人的に様子を見に行っていた

時には梶原さんのご主人も同行し

少しでも早く学校に通えるようにと

あすみさんに勉強を教えてくれているそうだ

梶原智香

旦那はたまにしか行けないし

梶原智香

面会時間も限られてるから大したことはできてないんだけど

梶原智香

それでも勉強したいって頼まれて

梶原智香

昔、塾講師のバイトしてたのが役に立ってるみたい

年末年始も殆ど病室から出ることはできなかったが

これまでになく穏やかな新年を迎えることができたようだ

優真さんの手錠のお陰で不安定になることもなく

一般病棟に移ってからは夜中に暴れることもなくなった

一見すると異様な姿に見えるかもしれない

でもあの手錠は彼女にとっての安定剤

心を落ち着かせるのにとても有効なお守りのようなもの

優真さんもきっと

今でもあすみさんの無事を祈り続けているはず

離れる道を選んでしまったけれど

二人の想いは同じ

何があっても揺らぐことはないのだから

沢田マリカ

いつか会える日が来るでしょうか?

芹沢大和

あぁ……

芹沢大和

信じていればきっと……

まだまだ続くあすみさんのリハビリ

退院したら児童養護施設に行くことが決まっていて

時々、児童相談所の職員や施設の職員も面会に来ている

あすみさんはしっかりと受け答えができていて

相談所の職員も施設の職員も安堵した様子で帰っていった

芹沢大和

彼女も前に向かって進んでるんだ

芹沢大和

俺達も前を向いて行かなきゃな!

沢田マリカ

はい!

この一連の事件を担当してから半年以上

こんなにも長く関わった事件は今回が初めてだった

単なる誘拐、監禁事件であれば直ぐに解決したかもしれない

でもこの事件には虐待と言う大きな闇が隠れていた

それら全てがやっと解決して

やっと前を向ける

離れる道を選んだ優真さん

その決意を受け入れ送り出したあすみさん

届かぬ想いを胸に罪を償うと誓った静さん

それぞれが色んな形で未来へ進んでいく

2011年7月10日

十ヶ月にも及ぶ入院生活を終え

あすみさんは退院の日を迎えた

一般病棟に移ってからほぼ毎日

懸命にリハビリに励んだ結果

日常生活を送れるまでに回復し

杖などを使わなくても歩けるようになった

かすみさんや静さんの殴打による痣は完全に消えたが

静さんに切りつけられた数えきれないほどの傷が

凸凹した白い線のような状態で残ってしまった

幸いなことに

顔につけられた微かな傷は消えていて

静さんが故意に顔への攻撃を避けたのだと推測された

梶原智香

元気でね

井川あすみ

はい

井川あすみ

ありがとうございます

その日は梶原さんが最後まで付き添い

退院するあすみさんを見送った

井川あすみ

お世話になりました

搬送された時、治療にあたった医師や看護師達は

歩けるようになったあすみさんの姿を嬉しそうに見つめていた

一人の青年の渇愛と純情が

愛する少女の命を救った

私は一生、忘れることはないだろう

鮮烈で少し歪んだ愛に満ちたこの事件を

渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

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