静(じん)さんやかすみさんの裁判が終わってから
あすみさんは一生懸命リハビリに取り組み
長い時間をかけ少しずつ
だが確実に快方に向かっていた
梶原智香
沢田マリカ
芹沢大和
梶原智香
梶原智香
梶原智香
裁判も終わり
私達の役目はそこで終わっていたのだが
あすみさんのことを心配した梶原さんが
休日などに病院へ出向き
個人的に様子を見に行っていた
時には梶原さんのご主人も同行し
少しでも早く学校に通えるようにと
あすみさんに勉強を教えてくれているそうだ
梶原智香
梶原智香
梶原智香
梶原智香
年末年始も殆ど病室から出ることはできなかったが
これまでになく穏やかな新年を迎えることができたようだ
優真さんの手錠のお陰で不安定になることもなく
一般病棟に移ってからは夜中に暴れることもなくなった
一見すると異様な姿に見えるかもしれない
でもあの手錠は彼女にとっての安定剤
心を落ち着かせるのにとても有効なお守りのようなもの
優真さんもきっと
今でもあすみさんの無事を祈り続けているはず
離れる道を選んでしまったけれど
二人の想いは同じ
何があっても揺らぐことはないのだから
沢田マリカ
芹沢大和
芹沢大和
まだまだ続くあすみさんのリハビリ
退院したら児童養護施設に行くことが決まっていて
時々、児童相談所の職員や施設の職員も面会に来ている
あすみさんはしっかりと受け答えができていて
相談所の職員も施設の職員も安堵した様子で帰っていった
芹沢大和
芹沢大和
沢田マリカ
この一連の事件を担当してから半年以上
こんなにも長く関わった事件は今回が初めてだった
単なる誘拐、監禁事件であれば直ぐに解決したかもしれない
でもこの事件には虐待と言う大きな闇が隠れていた
それら全てがやっと解決して
やっと前を向ける
離れる道を選んだ優真さん
その決意を受け入れ送り出したあすみさん
届かぬ想いを胸に罪を償うと誓った静さん
それぞれが色んな形で未来へ進んでいく
2011年7月10日
十ヶ月にも及ぶ入院生活を終え
あすみさんは退院の日を迎えた
一般病棟に移ってからほぼ毎日
懸命にリハビリに励んだ結果
日常生活を送れるまでに回復し
杖などを使わなくても歩けるようになった
かすみさんや静さんの殴打による痣は完全に消えたが
静さんに切りつけられた数えきれないほどの傷が
凸凹した白い線のような状態で残ってしまった
幸いなことに
顔につけられた微かな傷は消えていて
静さんが故意に顔への攻撃を避けたのだと推測された
梶原智香
井川あすみ
井川あすみ
その日は梶原さんが最後まで付き添い
退院するあすみさんを見送った
井川あすみ
搬送された時、治療にあたった医師や看護師達は
歩けるようになったあすみさんの姿を嬉しそうに見つめていた
一人の青年の渇愛と純情が
愛する少女の命を救った
私は一生、忘れることはないだろう
鮮烈で少し歪んだ愛に満ちたこの事件を
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