ことはの言った 「弱くなった」 その言葉の意味を 俺は理解出来ずにいる。 キッチン方面から漂ってくる匂いは コーヒー豆の匂いと オムライスの美味しそうな 匂いがほのかに香ってきた。
桜
ことは
桜
先程までのおちゃらけた顔とは 違い、まっすぐ俺を見据え 真剣そうな瞳でこちらを見ていた。 その茶色い瞳は、 初めてであった頃とは 変わらず、しっかりと俺の不思議な 容姿を捉えていた。
ことは
ことは
「初めて私が会った時みたいに、 人を諦めた目でね」 とことはが一言付け加えた。 目の前に出された珈琲の色は 俺の心を映し出したかの様に どこまでも黒く、 不満げな俺の顔も映し出した。
桜
ことは
桜
ことは
ことは
ことは
桜
ことはに反撃したくても、 俺ができるのは素直に話す事のみ。 全てことはが言っていた事が 正解だと思ったからだ。 暗い顔をし、 カウンターテーブルを見つめていると、 目の前にオムライスが差し出された。
ことは
桜
珈琲に映し出された俺の顔は、 まだ不満げなままだった。 気を使ってか、 それともただオムライスが 出来たからか、 俺の前に出来たてで、 美味しそうなオムライスが 目の前に出された。
桜
ことは
ことは
桜
思わずことはが言っていた 言葉を繰り返した。 今俺がどうするべきなのかは、 正直分からない。 どうやってお前が隣に居ない 毎日を、生きていくのかも分からない。
ことは
桜
ことは
ことは
桜
「俺から離れた方がいい。」 その言葉を言いかけて、 自分の口を閉じた。 自分でこれを言ってしまえば、 もう二度と話し合うことなど 出来ない。そう思ったからだ。
ことは
ことは
オムライスを1口ほお張りながらも、 ことはの言葉に耳を傾けた。 コイツの言葉は、 どこまでも俺の心の奥へと 差し込まれた。 そうだった。 俺は何を怖がっていたのだろうか。 社会に出て、 社内で酷い事を言われ続けた からだろうか。 アイツと話すのが怖いと思ってしまったからだろうか。
会社に着いてからと言う物、 容姿を酷くいじられた。 出来上がった資料に 大人気なく 悪意に満ち溢れた言葉をかかれた 時でさえ、何も思わなかった。 何とも思ってないと 思い込んだだけかもしれない。
俺が気づかないだけで、 弱っていたのかもしれない。 だからあの日、 急に不安になったんだ。 いつまで経っても 増えないキスの数と スキンシップに 本当に愛されているのかと。
気づいてしまえば、 俺の決心は早かった。 拳を高く握り、 珈琲に映し出された俺の顔は、 硬い決心をした顔だった。 どんどん力が入る拳に、 今すぐこの場を去り、 あいつに会いたいと思ってしまった。
桜
ことは
ことは
桜
雲がかかったはずの 俺の心は、 一気に晴れ晴れしくなった 様な気がした。 あの時の告白とは 逆に、 今度は俺が本音を話す番だ。 そう思い美味しそうな匂いを 漂わせるオムライスを 口いっぱいに放り込んだ。
あの時、桜君から 別れを告げられた。 夜明け前の少し明るい 空が見えかけていた日に。
下に顔を俯かせた桜君の 表情は、何を映し出して いるのかは分からなかった。 白黒の綺麗なツートーンカラーの 髪が、俺の視界いっぱいに入った。
俺がタバコを吸う理由。 君はそれに気づいている様だった。 気づいていて、 毎回タバコを吸う俺を 心配して、 わざわざ寒いベランダに 裸足で出てきて俺に 暖かい体温を分け与えてきた。
そんな君が愛おしくてたまらなくなる 反面、君の純粋さを 汚してはならないと、 自分の愛の重さに 気づいてしまった日。 俺は君と別れなければならない。 距離を取らなければならない。 そう考え事をし、 あの日1人ベランダで 好きでもないタバコを吸った。
君から抱きしめられた時、 再度思ってしまった。 別れたくないなぁと、 後ろから抱きついてきた 君の頭を優しく頭を撫でた。
薄着な君は ブルりと寒そうにしていた。 もう戻ろう。 そう言い宥め、君と俺は部屋の中へと 行った。
その時だ。 愛しい、大好きすぎる君に 別れを告げられたのは。 丁度いい。ちょうど良かったんだ。 君と離れられる 別れるチャンスができたと。 俺は引き止めたい思いを 全部飲み込んで、
君の申し出を難なく飲み込んだ。 そのあっさりすぎる答えに、 君は驚いた顔をしたあと、 酷く傷ついた顔をしていた。 その顔は俺の胸をうちつけ、 忘れたくても忘れられない 思い出になっていた。
俺たちの初恋は、 この瞬間に、 全て消えてなくなってしまったのだ。
コメント
5件
ことはちゃんナイス!蘇枋さんも側から見たらあっさりと見える別れにちゃんと深く考えてたのが本当に最高です!桜も社会人になっていい性格になりましたね!原作でもあのツンデレは最高ですが……
なんか言葉が出てこない… 桜頑張れ(´;ω;`)