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３年Ｄ組のクーデター

第9話 - 休み時間　一方そのころ【２】

2024年10月15日

#心理戦

#ゲーム

#デスゲーム

#ミステリー

#犯人当て

#エターナル・コウタ・ブリザード

日比野響

志賀先生

保護者のみなさん、担任の志賀です。

志賀先生

この場を借りて、みなさんに幾つかのご報告をさせていただこうと思います。

志賀先生

まず、３年Ｄ組は私が完全に占拠させていただきました。

志賀先生

現在、私を含め、数名の仲間で教室を見張っています。

ヨウタ父

息子は？
息子は無事なんだろうな？

志賀先生

ヨウタ君ですか？
心配いりません。
ヨウタ君は無事です。

セイヤ母

ヨウタ君は……ということは、無事ではない子もいるということですか？

本当は自分の息子の安否を知りたい。

でも、それは他のご両親も同じはず。

グループメール内で混乱を起こさぬように、あえてセイヤの母は核心には迫らなかった。

志賀先生

残念ながら、そういうことになります。

志賀先生

事実、現時点で12人の生徒が犠牲になりました。

シズカ母

え……12人も。

志賀先生

はい、誰が……までは言いませんが、お悔やみを申し上げます。

ハカセ父

もしそれが本当ならば、とんでもないことだ！

志賀先生

おっと、ハカセのお父さんは現役の刑事さんでしたよね？

志賀先生

ならば仕方ないのですが、警察の方の介入は、ハカセのお父さんに留めておいていただけませんか？

志賀先生

組織的に介入されると厄介ですので。

志賀先生

もし、警察の気配が少しでもした場合は、残りの生徒も全員殺します。

志賀先生

これは脅しではありません。
命令です。

志賀先生

自分の子どもの命が惜しければ、警察は絶対に介入させないこと。

志賀先生

とくにハカセのお父さん。あなた自身が警察の関係者であるということをお忘れなく。

志賀先生

あくまでも刑事としてではなく、ハカセの父親として向き合っていただきたい。

セイヤ母

あの、先生。
なにが目的なのですか？

レイ母

私の娘に手を出したら、絶対に許しませんからね。

志賀先生

おー、急にキレる感じ、娘さんのレイにそっくりですねぇ。さすがは親子だ。

ハカセ父

それで、先生はなぜこんなことをしたのですか？

ハカセ父

お答えいただきたい。

志賀先生

罪を償わせるためですよ。

セイヤ母

罪？

志賀先生

えぇ、そうです。
３年Ｄ組には罪深き生徒達がいるのです。

志賀先生

その生徒達が罪を認めて償わない限り、占拠はずっと続くことでしょう。

志賀先生

もちろん、それだけご子息、ご息女も命の危険にさらされることになります。

志賀先生

ご安心ください。罪を認めて償ってさえくれれば、生徒達は解放します。

ツヨシ父

本気なのか？
捕まったら、あんた死刑だぞ。

志賀先生

……極刑は免れないでしょうね。

志賀先生

ですが、それでもやらねばならないのです。

志賀先生

３年Ｄ組の罪を浄化するために。

志賀先生

それでは、また連絡を差し上げますので、それまでしばらくお待ちください。

セイヤ母

ちょ、ちょっと待って先生！
まだ話は終わってませんよ！

ヨウタ父

そうだ！
セイヤ君のお母さんの言う通りだよ！

ハカセ父

駄目ですね。
どうやらこちらの話を聞くつもりはないようです。

シズカ母

それにしても……罪ってなんでしょう？
シズカは無事なんでしょうか？

レイ母

うちの子は？
レイは無事よね？

セイヤ母

みなさん、落ち着きましょう。
きっと大丈夫です。
それに、本当に12人もの子が殺されたとは限りません。

レイ母

でも……どうすれば？
娘が殺されるのを、指をくわえて待っていろと？

ハカセ父

落ち着いてください。

ハカセ父

少し気になる点があります。

ハカセ父

まず一点目。
どうやら志賀先生には仲間がいるようです。

ハカセ父

その人物は果たして誰なのか。

ハカセ父

学校関係者？
それとも、全く無関係の人間なのか。

ハカセ父

それと、これは推測の域を出ないのですがね……。

ハカセ父

本当に志賀先生が首謀者なのでしょうか？

セイヤ母

それ、どういう意味ですか？

ハカセ父

怪文書ですよ。
あれ、おかしいと思いませんか？

レイ母

怪文書がおかしい？

ハカセ父

えぇ、みなさんも分かっているとは思いますが、志賀先生は自分の犯行を堂々と宣言しています。

ハカセ父

自分が占拠事件の犯人であると言わんばかりに、こうしてグループメールにまで姿を現しました。

ハカセ父

つまり、志賀先生は自分がやろうとしていることを隠すつもりなんてないのです。

ハカセ父

むしろ、自分がやったことを主張しているようにさえ思える。

ハカセ父

そんな人間が、わざわざ新聞紙か週刊誌だかの切り抜きを使って、怪文書を作るでしょうか？

ハカセ父

別に筆跡を隠す必要もないわけですし、わざわざ切り抜きで怪文書を作る必要もない。

ハカセ父

では、なぜ怪文書は切り抜きで作られていたのか？

セイヤ母

もしかして、怪文書を作成したのは志賀先生じゃないということですか？

ハカセ父

その可能性は充分にあると思います。

ハカセ父

とにかく、先生が言った仲間の存在が気になりますね。

ヨウタ父

それで、これからどうしますか？
やっぱり警察に……。

ハカセ父

いえ、あらゆる可能性を考慮すると、やはり応援を呼ぶのは悪手です。

ハカセ父

今は刺激をしないようにしなければ。

ゴミ母

でも、このままなにもしないなんて耐えられません。

ハカセ父

もちろん、このまま指をくわえて待っているつもりはありません。

ハカセ父

少々危険ではありますが、学校への潜入を試みます。

セイヤ母

そんな、大丈夫なんですか？

ハカセ父

曲がりなりにも刑事の端くれですから。

ヨウタ父

それなら私も一緒に行きます。

ハカセ父

いえ、一般の方を危険に晒すわけにはいきませんよ。

ヨウタ父

いやいや、あなただって刑事である以前に、ハカセ君の父親でしょう？
立場は同じですよ。

ヨウタ父

それに、自分の子が危険な目に遭っているかもしれないのに、じっとなんてしていられませんよ！

ゴミ母

それは私達も同じです。

ハカセ父

……分かりました。
ですが、大勢で動くと目立ちますので、私とヨウタ君のお父さんの２人で動きましょう。

ハカセ父

他の方々はバックアップをお願いします。

シズカ母

でも、学校の出入り口には鍵がかかってるんですよね？
どうやって中に入ります？

ヨウタ父

もう窓を割って中に入りましょうよ。緊急事態だから学校も許してくれるでしょう。

ハカセ父

いえ、それだと志賀先生に気づかれてしまいます。

ハカセ父

学校の責任者に連絡を取って、鍵を預かった上で……中の鎖はチェーンカッターで切れば、時間はかかりますが潜入できるでしょう。

ゴミ母

……ダストシュート。

ハカセ父

え？

ゴミ母

みなさん、体育館の端にダストシュートがあるのご存知ですか？

セイヤ母

あぁ、確かにそんなものがありましたよね。

セイヤ母

ＰＴＡの総会で体育館をお借りした時、そこからゴミ袋を外に……あ、そうか。

ゴミ母

あそこって、ダストシュートの入り口が閉じられているだけで、特に鍵とかは必要なかったはずなんですよ。

ハカセ父

なるほど、そこからなら中に入れるかもしれませんね。

ハカセ父

それでは、ヨウタ君のお父さん。
学校の近くにあるコンビニで落ち合いましょう。

ハカセ父

どれくらいで準備できます？

ヨウタ父

いつでも行けますよ！
せがれのピンチに店なんて開けていられねぇ！
今日は臨時休業だ。

ツヨシ父

こういう時、自営業は羨ましいですね。

レイ母

あの、気をつけてくださいね。

ハカセ父

えぇ、任せてください。

セイヤ母

２人とも、どうかご無事で。

？？？？

報告。
ヨウタ父、ハカセ父、
体育館のダストシュートより
校内への侵入を図る模様。
至急対策されたし。

志賀先生

ありがとうございます。
仲間を向かわせて対策をしてもらいます。

？？？？

なお、保護者のグループラインにはうまい具合に潜り込めていると思われる。
勘づかれている様子もない。

志賀先生

そうですか。
引き続き、そちらの動向を報告いただけるとありがたいです。

？？？？

了解した。
ささいなことではあるが、ハカセの父が首謀者は別にいるのではないかと疑っている。
今は様子を見るが、状況によっては手を打たなければならないかもしれない。

志賀先生

承知しました。
仕方ないとはいえ、やはり警察の人間は厄介ですねぇ。

？？？？

こればかりは仕方がない。

志賀先生

ありがとうございます。
こちらは昼食を終えたらそろそろ２時間目に入ろうと思っています。ダストシュートについては、すぐに対応しますので。

？？？？

了解した。
では、また動きがあったら連絡をする。

志賀先生

えぇ、それではまた後で――。

志賀先生

ハカセの親父さん……思った以上に厄介な相手かもしれないなぁ。

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