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それから数日、関 哲汰の存在は 学校中の話題の中心だった。
登校すれば誰かが彼の話をしていて、 休み時間には廊下に人だかりができる。 休みの日に彼のSNSを見たっていう子が 騒いでいたし、女子たちはこぞって “接点”を探していた。
だけど、咲だけは、そんな波に乗ることなく、淡々と日々を過ごしていた。
彼と目が合うことも何度かあった。 それでも咲は、 あえて感情を出さずにすっと視線を逸らす。
女子生徒
女子生徒
クラスの女子たちのそんな囁きが聞こえるたび、咲は心の中で苦笑いを浮かべていた。
咲
けれど、ある放課後。 教室に忘れ物を取りに戻った咲は、 ふと後ろから声をかけられた。
哲汰
振り向くと、そこには哲汰がいた。 制服のネクタイを緩め、 少しだけ気の抜けた表情で、 でもまっすぐに咲を見ていた。
咲
そう答えようとして、 でも咲はなぜか言葉に詰まった。 哲汰の瞳には、好奇心でも見下しでもなく、 「本気の関心」が映っていたからだ。
哲汰
咲
すると彼は、ふっと微笑んだ。
哲汰
咲
哲汰
その言葉に、咲の胸が一瞬だけざわついた。
哲汰
それは、咲が今まで何度も言われてきた 「気のあるセリフ」とはまったく違った。
どこまでも真っ直ぐで、 どこか寂しさを知っているような、 そんな響きだった。
咲
そう言って教室を出たけれど―― 心の奥に、哲汰の声が、小さく残った
……俺だけは、ちゃんと
それは、誰にも届かなかった咲の本音に、 そっと触れるような言葉だった。