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ある日の昼休み。 咲は屋上へと続く階段の踊り場で、 クラスの男子と話をしていた。 特に親しいわけでもない その男子に呼び止められ、 「ちょっと話がある」と言われたのだ。
男子生徒
不意の告白に、咲は戸惑った。 その男子とは、 ろくに話したことすらなかったからだ。
咲
できるだけ柔らかく断ろうとした瞬間、 階段の影から何かの気配を感じた。
視線を上げると―― そこに立っていたのは、哲汰だった。 何も言わず、ただじっと、ふたりを見ていた。
その目はいつもと違い、少し冷たく、 そして複雑な色を帯びていた。
咲はハッとして男子に頭を下げると、 その場を離れた。 哲汰のところへ駆け寄るも、 彼は目を合わせようとしなかった。
咲
哲汰
咲
焦る咲に、哲汰は小さく首を振った。
哲汰
けれど、その声にはどこか 寂しさが混じっていた。 それが咲の胸に、ズクンと痛みを落とす。
哲汰
哲汰
咲
哲汰
そう言って初めて、彼は咲を見た。 その瞳は、まっすぐで、 まるで心の奥を覗き込んでくるようだった。
咲は、ほんの少しだけ目を伏せる。
咲
咲
その瞬間、哲汰はふっと表情を緩めた。
哲汰
咲
哲汰
咲の胸がドクンと鳴った。 哲汰の言葉が、またしても心の奥に刺さる。
咲
そう言いながらも、 咲の頬は、少し赤く染まっていた。