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5 - 不思議な世界の王子様

♥

314

2022年07月20日

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すとぷり 「不思議な世界の王子様」

この世界は、私たちが住む世界とは、全く違う世界である。

異なる世界、と言っても何も話さなかったり、何かをかかない訳では無い。

だが、この世界に住む人々は、必ず能力を持っていた。

能力を持たない者は存在しなかった。

私たちの世界にも、能力者は何人か存在する。

絶対音感、共感覚、映像記憶能力…

だが、みんなが能力を持っているというわけではない。

だから、私はこの世界を「私たちが住む世界とは全く違う世界」と呼ぶ。

…そろそろ前置きは終わりにするとしましょう。

あるところに、6つの王国があった。

それぞれの国を、6人の王子が従え、平和に暮らしていた。

王子たちは、とても仲良しだった。

6人の王子たちには、それぞれ違う能力があった。

人々が持つ能力には、なぜ違いが生まれるのか。

たくさんの人が考えたが、それは未だに解明されていなかった。

一番有力だとされている説は、

『人々の体に存在する色と関係がある』

という説である。

この世界に住む人々の体に違いが生まれる場所は「髪」と「目の色」である。

なぜ、色と能力が関係あるのか。

それは、色によって連想されるものと、人々の能力が一致しているからだ。

具体的な例を、6人の王子たちの色で紹介してみよう。

具体的な連想の場合、 宇宙、夜の空、アメジスト、女性、プラプラ貝がある。

抽象的な連想の場合は、 神秘的、癒し、直感、芸術的、高貴、高尚、上品、優雅、希少な、珍しい、 個性的、複雑な、珍しい、特別、権力、王位、豪華などと、 王家のようなイメージのある連想が多い。

紫という王子の場合は、宇宙を操るという能力を持っていた。

他には、病気や精神的疲労でエネルギーが弱っているときに、 心を癒す能力を持つ者もいた。

具体的な連想の場合、 太陽、火、みかん、紅葉がある。

抽象的な印象の場合は、 あたたかい、明るい、楽しい、陽気、楽しい、温情、快活、歓喜、華やか、 晴れやか、健康、元気、外向的、社交的、親しみ…。 明るさをイメージさせられる連想が多くある。

橙という王子の場合は、太陽を操るという能力を持っていた。

他には、人々にショックやトラウマを与えるという能力を持つ者もいた。

具体的な連想の場合は、 ハート(心臓)、女性、女の子、なでしこ、さくらがある。

抽象的な連想の場合は、 かわいい、美しい、優雅、贅沢、豪華、華やか、優美、か弱い、やさしい、 配慮、ボランティア、愛情、自己愛、与える、奉仕、献身など、 女の子らしい連想が多くある。

桃という王子の場合は、敵の攻撃を自分の物にするという能力を持っていた。

他には、人々に幸福を与えるという能力を持つ者もいた。

具体的な連想の場合は、 空、水、水中、海、ラピスラズリがある。

抽象的な連想の場合は、 静寂、冷たい、冷淡、冷静、保守的、内向的、誠実、信頼、平和、落ち着き、大人しい、知性、清潔、悲しみ、ゆううつ、精神的という、 クールなイメージのある連想が多くある。

青という王子の場合は、周囲に冷気をもたらすという能力を持っていた。

他には、人々の感情を一時的に無くすという能力を持つ者もいた。

具体的な連想の場合は、 太陽、血、火、バラ、りんご、口紅。

抽象的な連想の場合は、 情熱、危険、興奮、暑い、怒り、爆発、圧力、活動的、動き、派手、生命、 勇気、燃える、争い、強烈、激しい、積極、愛情などの 人の感情に近い連想が多くある。

赤という王子の場合は、炎を操る能力を持っていた。

他には、人々の感情を豊かにするという能力を持つ者もいた。

具体的な連想の場合は、 太陽、光、星、ひまわり、レモン、バナナ、卵、ひよこがある。

抽象的な連想の場合は、 明るい、楽しい、陽気、明朗、快活、躍動、子供っぽさ、注意、注目、 目立つ、軽い、不安、軽率、愉快、閃き、英知、知性など、 活発で、優等生風な連想がある。

黄という王子の場合は、光を操るという能力を持っていた。

他には、ある場所に花を咲かせるという能力を持つ者もいた。

そんな多彩な能力を持つ人々は、毎日平和に暮らしていた。

けれど

この世界にも、「永遠」は無かった。

みんな!!

早く城の中へ!!!!!!!

早く逃げるんだ!!!!!!!!!!

国民

王子!! 分かりました!!

ある日、1つの王国が、未知の生物に襲われた。

その王国は、紫王子が従える国であり、6つの国の中で一番大きい国だった。

紫ーくん!!!

桃くん!?

なんで…

なんでって…

この国があぶねぇだろうが!!!!

それを言うんだったら…

桃くんの国だって同じことじゃないか!!

ッッ…

…あいつらは、皆を狙っているんだ

だから…

今すぐ逃げないと、また犠牲者が増えるんだ

…桃くんは、自分の国に戻って

橙くん達にも、国民を避難させるように伝えておくんだ

…わかった

…気をつけろよ

そっちもね

桃王子は、城へと走る人々の流れに逆らいながら、自分の国に戻った。

数時間後

子供

お母さん…怖いよぉ…

国民

ごめんね…

国民

きっとそのうちに出られるわよ

城の中には、何万人という、数え切れないほどの国民が集まっていた。

彼らから逃げるためには、こうして集まり、息を潜めて過ごすしか無かった。

明かりを消し、城の窓という窓を閉めていた。

そのため、城内は異様な程に暗かった。

国民は不安でいっぱいだった。

幼い子供もいた。

子供

ポロポロ

子供

うっ…

子供

はやくでたいよぉ…ポロポロ

中には、不安で泣き出す子供もいた。

カツ… カツ…

どこかから、足音が聞こえてきた。

国民

ッッ…

国民

ごめんね、ちょっとだけ我慢してね

子供

…コクッ

国民たちは、身の危険を感じて、息を潜めた。

???

我が国の者たちよ

暗闇から、声が聞こえてきた。

その声の主は_______

皆、ここにいるか?

赤王子であった。

片手に炎が弱々しく揺らめくランプを持ち、国民に呼びかけた。

国民

赤王子!

国民

ご無事で良かった…

子供

おうじさま、て、けがしてる…

ああ、これは___

…大丈夫だ、なんでもない

赤が、少し言葉を濁したことで、国民たちは皆、押し黙った。

___俺たちは、『奴』と戦うことになった

生きて帰れるかは分からない

国民

そんな…!

心配することでもない

…きっと、帰ってくるさ

国民

…どうか、ご無事で…

その瞬間。

兵士

王子!!

兵士

魔物が攻めてきました!!!!!!

ッッ!!!!!!!

みんな、早く城の奥へ!!!!!!

人々は、慌てて駆け出した。

それから、ワンテンポ遅れて、城の入口が突き破られた。

吹き飛ばされた兵士が、床に横たわる。

赤は、咄嗟に炎を纏った剣を抜き出した。

???

ヴァ…

『それ』は、目の前に現れた生き物を見つめ、そして_____

???

グワァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!

この世のものとは思えない叫び声をあげて、赤に襲いかかってきた。

!!!!!!!!!!!

『それ』は、全身を黒で囲い、おどろおどろしい雰囲気を纏っていた。

赤は、一瞬体が固まった気がした。

(怖い)

(でも…)

(俺は、この国の王子なんだ)

(この国を守るのは…)

王子である俺の役目だッッ!!!!!!!!!

かかってこい!!!!!!!!!!

???

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!!!

魔物の襲撃から、5日が経った。

取り残された国民がいないか、見回っていた橙王子は、ふと空を見上げた。

数日前までは、青空を隠す雲でさえも美しかったのに、今日の雲は黒かった。

(みんな…無事でいてな…)

別の国の王子と話したのは、5日前が最後だった。

桃王子が、突然今すぐ国民たちを避難させろと橙に言った。

理由は聞かせてもらえなかった。

けれど、彼のなにかに怯えるような表情を橙は見た。

危険を察した橙は、国民たちを自分の城に避難させた。

国民を避難させる際に桃を探したのだが、見つけることができなかった。

隣国へと続く道も、他の国に被害がいかないよう、封鎖されてしまっていた。

それからは、兵士以外の誰とも言葉を交わしていない。

…いつの間にか、紫王子の国の近くに来ていたらしい。

少し遠くに、紫色の旗が見える。

彼の国のことが心配になり、少し国の中を覗いた時。

…!

な…

彼の国の建物の所々に、何者かに壊された跡があった。

かぎづめで引っ掻いたような、痛々しい跡。

明らかに、『得体の知れない生物』が壊した跡だった。

一体何が…

青王子は、水面を見つめていた。

…いや、正確に言うと

水面を睨んでいた。

ぶくぶくと水面が泡立ち、周りの木がざわめく。

凍りつくような風が、青王子を取り巻く。

冷気を纏った剣を構え、水面から決して目を離そうとしなかった。

やがて、水面から現れたのは

魚と人間が混ざったような生き物だった。

こちらに背中を向けて向こう岸に上がり、やがてどこかへ消えた。

…!!

待て!!!!!

見たことも無い生き物を野放しにしてはいけない。

そう考えた青は、その生き物を追いかけた。

人々が近寄らない場所には、青も決して近付かなかった。

そのため、今青がいる場所は、人々は今まで近付かなかったことを悟らせた。

水色のような、目立つ色だとしても、ここを走っていると見失いそうになる。

自分の体力の限界など、全く気にせずに走り続けた。

何度も鋭い葉に肌を切られ、徐々にスピードは落ちていった。

はぁッ…

はぁッ…

急に止まったせいか、少し視界が揺らいだ。

あの生き物の姿は、とっくに見失ってしまっていた。

どっと疲れが押し寄せ、青はそこに座り込んだ。

ニュル… ニュル…

聞き慣れない音が聞こえた。

ッ!

青は危険を感じて立ち上がった。

剣を構え、四方八方を見渡す。

音は、どこから聞こえてくるのか、見当がつかなかった。

くそッ…

そんな言葉を漏らした時。

ポト…

自分の頭に、何かが落ちた。

顔まで垂れた雫を拭い、感触を確かめる。

それは、まるで、

______なにかの唾液のようだった。

ッッ!!!!!!!!!

はっと上を見上げると

…そこに、奴がいた。

???

ふふッ…

???

あははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

それは、狂ったように笑い出すと、タコのような足を青に巻き付けた。

くッ…

ギリギリと体を締め付けられ、息をすることもままならなかった。

体から力が抜けていき、剣は地面に落ちた。

ぁ…

木々のざわめきが遠く聞こえた。

???

ギャァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!

突然、奴の叫び声が、こだました。

青を締め付けていた足が、どさりと地面に落ちた。

ぅ…

青は地面に座り込んだ。

青!!青!!!

青ちゃん!!!!!!

桃王子と、黄王子が青をゆさぶる。

…桃、く、ん…

黄…くん…?

良かった…

間一髪だったみたいだな…

あれ…あいつは…

…あいつは!?

2人で1本ずつ足を切ったんだけど…

…どうやら、再生するらしいな

奴は、瞬時に黄と桃を睨みつけた。

…青

立てるか?

…うん

もう大丈夫

…それじゃあ、行きますよ

3人は剣を構えた。

そして____

一斉に、奴へと飛びかかった。

あれから、1ヶ月以上の時が過ぎた。

痛ッ…

兵士

王子…

…大丈夫

兵士

…無理はなさらないでくださいね

ありがとう

あいつと戦った時の傷が、まだ痛んでいた。

青王子、桃王子と会えたが、紫王子、橙王子、赤王子とはまだ会えていない。

3人の安否も分からないまま、2ヶ月が経とうとしている。

せっかく会えた桃と青も、自分の国に帰ってしまった。

しばらくの間留守にしていた城は、所々壁が崩壊していた。

これもまた、なにかにやられたらしかった。

…大丈夫かな

国民も、みんなも

兵士

…どうしてこうなってしまったのでしょうか

なぜ、奴らは現れたのか。

黄たちは、何もわからなかった。

そして

黄たちは、何も知らなかった。

この世界で、遠い昔に起きたことを_____

ま…

まぶつ…?

(なんて読むんだ…?)

シスター

王子?

シスター?

どうした?

シスター

いえ…

シスター

なにか、悩んでるように見えたので…

これ

なんて読むんだ?

魔物

シスター

…!

シスター

この本…

シスター

まだ残っていたのですね…意外です

…?

シスター

王子

シスター

今から、私が話すことを、聞いていただけませんか?

…わかった

シスター

…それでは

シスターは、この世界のことについて話し始めた。

シスター

これは『まもの』と読みます

まもの…?

シスター

魔物は、人を狂わせ、害をするような性質をもつ化け物の事です

シスター

…ここから先は、色々な話があって、真相が曖昧なのですが

シスター

遠い昔、この世界は魔物によって支配されていたと言われています

シスター

人々は奴隷として扱われ、息苦しい日々を送っていました

シスター

息苦しい日々に耐えきれず、自ら命を絶った者もいるとか

シスター

そんな中、世界がある日一変したと言われています

世界が…?

シスター

世界を司る神々が、魔物たちへ罰を下したのです

シスター

魔物でも、神々には勝てず、
ほとんどの魔物は消滅したと言い伝えられています

それじゃあ、生き残った魔物は…?

シスター

…誰も見つけることができない、亜空間に潜んでいたと言い伝えられています

シスター

おそらく、数え切れないほどの年月を経て、今復活したのだと思います

シスター

今復活した全ての魔物を倒さないと、
国民らも穏やかに暮らすことは二度とできないかと…

みんなを探してくる

シスター

え?

みんなと協力して魔物って奴を潰すしかない

シスター

兵士たちにも伝えておいてくれ

他の国の王子を探すとな

シスター

シスター

分かりました

シスター

王子に神のご加護があらんことを

…行ってくる

橙!

どこだ!?

橙ー!

城の中は、異様な程に静まり返っていた。

誰かが足音を立てると、城全体に響き渡り、国民たちが慌てる程だった。

だから皆、全く動かずに過ごしていた。

兵士

…!?

兵士

…様、どうしてここに…?

兵士

…え?

兵士

王子を連れて…?

兵士

…分かりました

兵士

少々待っていただけませんか?

兵士

…はい、ありがとうございます

兵士

今呼んできますね

兵士

…王子!

兵士

桃王子がお見えです

!?

…本当?

兵士

はい

兵士

王子に用があるとのことです

わかった

橙!

桃ちゃん!

無事でよかった…

あぁ…

…お前、今まで何してた?

…とにかく、国民をここに避難させて、隠れながら生活してた…って感じかな

食料は倉庫に貯めてあったもので繋いでたし

…そっちは、どうだった?

…まぁ、こっちもそんな感じかな

…一度だけ、魔物みてぇなやつと戦ったけどな

まも…?

あ゙ー…

簡単に言えば、化け物って感じ

…?

俺の国のシスターに聞いた話だけどな

なんか今、そいつらのせいで色々とまずいことになってるから

そいつらを潰さないとダメだってな…

…それで、俺を?

あぁ

他の奴らも呼ぶことにする

…なるほどな

何となく、桃ちゃんがやろうとしてることは分かったわ

…ていうか、桃ちゃんの方の国民は、大丈夫なのか?

一応、兵士に守らせてるけどな

とっととやらねぇと、こっちもいつ殺されるか分かんねぇし

…まぁ、それもそうだな

んじゃ、兵士さん

橙のこと、借りてくぞ〜

兵士

え?

え?

ほら、橙、行くぞ

え、いや

俺やるなんて一言も言ってないんだけど…!?

いいから来い

兵士

王子ぃぃぃぃぃ!?

ちょ、

兵士たち!!

国民のことを任せた…!!!

兵士

は、はい!

兵士

分かりました!!!!!!

おい、黄

え? 桃くん?

それに橙くんも…!

今時間あるか?

え?

時間あるなら、早く来い

あいつらをぶっ潰しに行くから

????

ほら、前に戦ったやつのことだよ

…え?

あの化け物、何匹もいるんですか!?

いや、知らない

とにかく着いてこい

え?

…桃王子は、半ば強引に王子たちを連れて行った。

赤!!

桃ちゃん!?

僕もいるよ!!!!!

それに橙くんと黄くんも!?

赤、その手どうしたん?

あ…

ちょっと、化け物と戦った時に、骨を折っちゃってさ…

今はもう大丈夫なんだけど、念の為にってことで、ね…

魔物と戦った赤も、指の骨を折ってしまったが、今はすっかり回復していた。

よかったあ…

ドタドタドタ

みんなぁ!?

いるぅ!?

青ちゃん!!!!!!!

…そして、紫以外の王子は皆再会できたのであった。

けれど…

はぁ…

紫ーくん…、どこ行ったんだよ…

まさか、お城に行っても居ないなんてね…

まさか、マモノ?っていう奴に襲われてるんじゃ…

こんな時に縁起でもないこと言わないでよ…

森の方は?

全員

え?

俺らの国の境目が全て交わる場所に、子供たちが遊べる森があったから

これだけ探しても、どこにもいないってことは、そこにいると俺は思う

…そっか!

そういえば、探してなかったのはそこだけだったね

橙、やるじゃんニカッ

お、おう…

んじゃ、とにかくそこを探すぞ!

全員

おー!!!

…うわぁ…

ずーっと手入れされてないせいで、荒れ放題になってるじゃん

2ヶ月近く手入れされてないだけで、こんなになっちゃうんだね…

…紫ーくん!

紫ーくん!

聞こえてたら、返事して…!

紫ーくーん!!!!

紫ーくん!!!!!!!!!

返事の代わりに聞こえてきたのは、風が森の中を吹き抜ける音だけだった。

遠くで、誰かが俺を呼んでいる気がした。

でも、誰の声なのか、見当がつかなかった。

???

聞こえてたら、返事して…!

その言葉が、はっきりと聞こえた。

ッ…

痛みが強く、声を発する力がでなかった。

俺は、まだ痛む体を動かして、そばに落ちていた剣を石に叩きつけた。

カランカラン…

乾いた音が、辺りに響いた。

これ…なんの音?

…とにかく、音がした場所に行ってみよう

…うん

少しずつ、足音が近付いてくる。

再び意識を失いそうになりながら、足音の音に耳を澄ます。

そして____

紫ーくん!

橙くんの声が聞こえた。

今にも泣きそうな、震えている、けれど暖かい声だった。

橙…くん…

それに…みんな…も…

紫ーくん…!

紫ーくん、一体誰に…

それに、酷い怪我…

俺の体は、半分近くが血の色で染まっていた。

『あいつ』と戦った時に、多くの傷をつけられたのだ。

…て

え?

気を、つけ、て…

あいつに…気をつけて…

あいつ、って?

ッッ…

それ、は…

???

まだ生きていたのか

???

哀れな人間よ

ッッ!!!!!!

誰だ!?

???

それには答えられないな

???

…人間という種族は、愚か者の集まり…

???

憐れな生き物だなぁ!!!!!!!

5人の王子たちは、いっせいに剣を構えた。

???

そんなに敵意むき出しの目で見られてもなぁ…

???

ここは平和に、話し合いで解決といこうじゃないか

…例えば?

???

そうだな…

???

君たちの国を、俺にくれないか?

???

昔みたいに、俺のために働く愚か者を見たくてねぇ…

ザシュッ

言い終わる前に、黄が魔物に斬りかかった。

だが、いとも簡単に避けられてしまった。

???

…どうやら、力を見せつけるしかないみたいだねぇ…

???

喰らえ…!

???

カタストロフィ!

途端に、視界が真っ赤に燃えた。

あちこちで木が倒れ、気を抜けば下敷きになってしまいそうな勢いだった。

だが____

…なんだ、この程度か

これくらいの炎だったら、簡単に消せちゃうじゃん

赤は、そう言い放つと、剣を一度、くるりと回して見せた。

途端に、周りの火が一斉に消えた。

念の為、ちょっとだけ寒くしておくね〜

魔物の周りは、冷たい空気に覆われた。

???

なッ…!?

???

ッ…まだまだ!!

???

ナイトメアシンドローム!!!!!!

今度は、周りが闇に包まれた。

あー…

…黄ちゃん

ん、了解っ!!

と、急に小さな太陽が現れた。

黄は、小さな太陽の光を操り、周囲を明るく照らした。

黄は周囲を照らしながら魔物に突っ込み、

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!!!!

青が纏わせた冷気すらも負かす程、強い熱風を喰らわせた。

???

あッ!?

魔物の太い腕は、業火に焼かれ始めた。

???

ッッッッ…

???

(あいつらの相手をするのは面倒だな…)

???

(ならば…)

魔物が視線を向けた先には、傷ついた紫を手当する桃の姿があった。

あとは、少し休んでいればすぐ治るから!!

…うん、ありがとう

???

喰らえ!!

???

フェイトパニッシュメント!!!!!

彗星のように、赤い弾は桃目掛けてまっすぐ飛んでいった。

危ない!!

!!

咄嗟に顔の前に手をかざした桃の目が、一瞬青く光った。

___赤い弾は、小さな弾へと変化して、桃の手の平をかすめただけだった。

桃が目を再び開いた瞬間、更に大きな、桃色の弾が魔物を直撃した。

???

はッ…

…え?

幼なじみである青でさえも、わけがわからなかった。

???

…もうこうなったら、この国全体を巻き込んでやる…ッ!

???

ユニヴァースパルス!!!

空が、黒で覆われた。

???

…みんな、殺してや…

ドカッ…

???

…ぁがッ

魔物の後頭部に、巨大な石が直撃した。

魔物は、その場に倒れ込み、二度と動かなかった。

…はぁ

前は1人だったから、キツかったけど

やっぱり、みんなでやると、すぐにできちゃうね!

紫ーくん…!

さっきの巨大な石の正体は、隕石であった。

…もちろん、こんなことができるのは、紫だけだった。

紫ーくーん!!!!!!!!!

赤が咄嗟に駆け寄り、紫に力強く抱きついた。

…わわッ

よかった…よかったよぉ…

そう叫ぶ赤の目には、涙が溜まっていた。

…チラッ

紫が、視線を感じて、みんなの方を見ると…

…いいなぁ…

…赤は、一番子供扱いされてるし…

…僕もしたい

赤を羨ましそうに見つめる4人の姿があった。

おいで?

紫が声を掛けると、4人の顔はぱっと輝いた。

全員

ギュウッ

全員がお互いを抱きしめ合った。

その後、人々は再び、平和で幸せな日々に戻れたと言われています。

すとぷり 不思議な世界の王子様 〔完〕

この作品はいかがでしたか?

314

コメント

11

ユーザー

うわ....めっちゃ尊いうわ....神...

ユーザー

うわぁぁぁぁぁ(´;ω;`) 好きだッッ…(急な告白 普通にいい話やん……… ルナちゃん天才…??

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