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紬希は病室を扉を開け、中に入った。

栗原 理仁

紬希

理仁は病室のベッドでうつ伏せになっていた。

栗原 紬希

お兄ちゃん…!!

紬希の目から涙が流れる。

栗原 紬希

ごめんね……

栗原 紬希

ごめんなさい……っ

栗原 紬希

私が逃げなかったから……

栗原 理仁

うるさい

栗原 紬希

理仁はうつ伏せ状態のまま、紬希を睨みつける。

栗原 理仁

謝るな

栗原 紬希

で、でもっ

栗原 理仁

そんなに傷は深くなかった

栗原 理仁

俺は実際、生きてるし

栗原 紬希

……っ

栗原 理仁

…こっち来てくれるか?

栗原 理仁

背中刺されたからうつ伏せ状態から動けないんだ

栗原 紬希

…う、うん

紬希は理仁の前に椅子を持ってきて腰を下ろした。

栗原 理仁

……

理仁は優しく微笑んで涙をながす紬希の頬を撫でる。

栗原 理仁

…紬希が怪我なくてよかった

栗原 紬希

……っ

栗原 紬希

でもお兄ちゃんが__

栗原 理仁

俺はいいんだって

栗原 理仁

もし俺が紬希を助けなかったら

栗原 理仁

紬希は今、ここにいないかもしれない

栗原 理仁

俺はそんな現実、生きられない

栗原 紬希

…ぅ……うぅ

私は

助けられてばかり

与えられてばかりだ……

栗原 紬希

私っ、

栗原 紬希

お兄ちゃんに色々与えられてばかりで

栗原 紬希

何も返せてないよぉ

栗原 理仁

……はは

栗原 理仁

俺は紬希が生きてるだけでいい

栗原 紬希

なんで、なんでそこまで……

栗原 理仁

……

理仁はじっと紬希を見据えた。

栗原 理仁

紬希は俺の妹だ。

栗原 理仁

この世で1人だけなんだ

栗原 理仁

それと__

栗原 紬希

……?

栗原 理仁

……。

栗原 理仁

俺は紬希のことが__

シーン、と静まり返る。

栗原 紬希

な、なーに?

栗原 理仁

……いや、

栗原 理仁

やめておこう

栗原 紬希

えぇ!?

栗原 紬希

気になる!

栗原 理仁

……俺が気になるのは

栗原 理仁

ずっとこっちを見てる善のことだな

栗原 紬希

え?

紬希が振り返ると、

ドアの隙間からじーっとこちらを覗いている善がいた。

栗原 理仁

なんなんだアイツは

栗原 紬希

2人でお見舞いに来たんだけど、

栗原 紬希

私が始めは2人で話したいってワガママ言ったの

栗原 理仁

…そう

栗原 理仁

善。入ってこい

伊東 善

善は病室へと足を踏み入れた。

伊東 善

……

善の顔を見て理仁はため息をついた。

栗原 理仁

はぁ。

栗原 理仁

ごめんな、紬希

栗原 理仁

少し席を外してくれないか

栗原 紬希

え……う、うん!

栗原 紬希

(2人でお話したいよね)

栗原 紬希

わかった!廊下いるね

紬希は病室を出ていった。

伊東 善

……

理仁は善の顔を見て「ふっ」と笑を零した。

栗原 理仁

なんつー顔してんだ

伊東 善

…ぅ……っう…

善の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

伊東 善

だって"ぇ…

伊東 善

お前が死んだらぁっ、俺ぇ……

栗原 理仁

ばーか

栗原 理仁

俺は死なない

伊東 善

あんな血流してさ"ぁ"っ

伊東 善

焦らない方がお"がじい"ー!!

栗原 理仁

……くく

栗原 理仁

紬希の前ではスカした顔してたくせに

伊東 善

紬希ちゃんの前でこんな姿見せられないでしょ……

伊東 善

一応"お兄ちゃん"なんだから

栗原 理仁

へぇ

栗原 理仁

でも俺が死んだら善にとって喜ばしいことじゃないか?

伊東 善

は?

栗原 理仁

だって"お兄ちゃん"が1人減って

栗原 理仁

紬希を独り占めに__

伊東 善

はぁあ!?!?

伊東 善

お前それマジで言ってんならぶっ飛ばすけど

栗原 理仁

一応俺、背中に穴空いてるんだが

伊東 善

俺っ、

伊東 善

お前のこと好きだっつってんの忘れた!?

栗原 理仁

……

栗原 理仁

オボエテル

伊東 善

確かに俺とお前は"お兄ちゃん"ライバルかもしれないけと

伊東 善

俺にとって理仁は

伊東 善

すっげぇ大切な人なわけ!

栗原 理仁

……そう

伊東 善

反応うっすいな〜

栗原 理仁

…………

栗原 理仁

俺が刺された後、

栗原 理仁

紬希も刺されそうになってただろ

伊東 善

……う、うん

伊東 善

俺がなんとか防いだけど__

栗原 理仁

ありがとな

伊東 善

伊東 善

理仁がお礼を言った!?

栗原 理仁

善のこと、少し見直した

栗原 理仁

お前のこと"お兄ちゃん"として認めていないって言ったこと__

栗原 理仁

撤回する

伊東 善

栗原 理仁

善は紬希のお兄ちゃんだ

栗原 理仁

お兄ちゃんの俺が認める

善は目を丸くさせた。

伊東 善

……はは

伊東 善

それはどうも!

栗原 理仁

でも、"お兄ちゃん"の席を譲ったわけじゃない

栗原 理仁

俺のが古参だから

栗原 理仁

忘れんなよ

伊東 善

熱狂的なファンか

ー1週間後ー

小太郎は足を止め、目の前に墓を見つめた。

墓石には「伊東家」と彫ってある。

伊東 小太郎

これが__

伊東 小太郎

菜々子のお墓だ

善と紬希は墓を見つめた。

栗原 紬希

(これが…私のお母さんのお墓……)

伊東 小太郎

悪いな、紬希

伊東 小太郎

無理言って、きてもらって__

栗原 紬希

ううん!

栗原 紬希

私も一度お母さんと会ってみたかったから

栗原 紬希

……会えてよかった

伊東 善

うん

伊東 小太郎

お父さんな、

伊東 小太郎

こうやって4人でまた集まれて嬉しいよ

伊東 小太郎

俺と菜々子が離婚して……その後菜々子が他界して

伊東 小太郎

こうやって4人揃うことなんかないと思ってたから

栗原 紬希

……お父さん__

伊東 善

……俺も、そう思うよ

伊東 善

こうやって家族揃って集まれて

伊東 善

すごく幸せ

栗原 紬希

…………

その後、3人はお墓参りをした。

墓参りの後、3人はファミリーレストランへやってきた。

伊東 小太郎

なんでも食えよー!

伊東 小太郎

お父さんの奢りだからな!

小太郎は笑顔で2人にメニューを差し出した。

伊東 善

やった!父さんありがと!

栗原 紬希

ありがとう!

紬希と善はメニューを2人で見ていた。

その様子を小太郎を幸せそうに見つめていた。

伊東 小太郎

……

伊東 小太郎

紬希

栗原 紬希

…なーに?

伊東 小太郎

この間の話、考えてくれたかい?

栗原 紬希

伊東 善

紬希は小太郎から一度目を逸らしたが、

もう一度真剣に小太郎を見据えた。

栗原 紬希

うん

栗原 紬希

ちゃんと考えて、

栗原 紬希

それで、

栗原 紬希

ちゃんと決めた

伊東 善

……

伊東 小太郎

……

伊東 小太郎

聞いていいか?

栗原 紬希

……うん

紬希は膝の上で拳を作り、強く握りしめた。

自分で決断することが

こんなにも怖いことなんて知らなかった

でも私、ちゃんと覚悟できた

私が今、ここで生きているのは__

栗原 紬希

お兄ちゃんとパパとママのおかげなの

伊東 小太郎

伊東 善

……

栗原 紬希

お父さんと善くんと血の繋がりがあるのは本当

栗原 紬希

だけど……

栗原 紬希

15年間以上、私を支えてきてくれたのはパパママ、お兄ちゃんなの

伊東 小太郎

……

栗原 紬希

私……

栗原 紬希

お返ししたい

栗原 紬希

私を育ててくれてありがとうって恩を返したいの

栗原 紬希

だから……

栗原 紬希

ごめんなさい

紬希は向かいの席に座る小太郎に向かって頭を下げた。

伊東 小太郎

……顔を上げてくれ、紬希

栗原 紬希

……っ

紬希は目に涙をためながら顔を上げる。

伊東 小太郎

本当にその通りだ

伊東 小太郎

今更一緒に住もうなんて無責任なことを言ったな…

栗原 紬希

ううん……

栗原 紬希

偽物の家族とか、本当の家族とかない

栗原 紬希

二人は私にとって本当の家族だよ

伊東 善

……ありがと、紬希

栗原 紬希

お父さん…これからもよろしくね

伊東 小太郎

紬希が俺の娘でよかった

栗原 紬希

善くん…いや、

栗原 紬希

善お兄ちゃんっ

紬希の笑顔に善は目を丸くさせた。

栗原 紬希

これからも善お兄ちゃんのこと、大好きだよ!

伊東 善

……っはは

伊東 善

俺も紬希のこと、大好きだよ

栗原 紬希

えへへっ

私の大好きなお兄ちゃんたち

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コメント

5

ユーザー

何となく予想はついたけど…… ハッピーエンドなのか…⁉️ 終わり方が気になります!! 楽しみです✨️

ユーザー

次回、完結です🙏

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