雪正
雪正
毎年雪を見るたびに
僕はあの時のことを思い出す。
それは10年前の中学2年の冬。
父親の仕事の関係で北海道に行くことになったのだが
転校してから僕はあまりクラスに馴染めずにいた。
雪が降り積もったある朝
いつものように1人で学校に向かっていると
???
自分の名前を呼ばれ
肩をトントンとされた。
振り返ってみると
自分とは違う制服を着た男の子が立っていた。
これが彼との出会いだった。
雪正
自分の知り合いかと思い
目の前の人が誰なのかを考えていると
???
その男の子は
見覚えのあるハンカチを僕にくれた。
雪正
???
???
やっぱり初めましてだ。
雪正
???
そう言って彼は
僕のハンカチに刺繍された”Yukimasa”の文字を指差した。
雪正
雪太
雪太
雪太
雪正
雪正
雪太
雪太
その日以来
僕たちは「雪友」として一緒に学校に行くようになった。
しかし
彼には不思議なところが3つあることに気づいた。
1つ目は
冷え性なのか、手が雪のように冷たいこと。
これはハンカチを返してもらうときに気づいた。
2つ目は
お互い違う学校なはずなのに
彼が僕の学校まで一緒についてくること。
明らかに遠回りだが
彼はいつも僕を送ってくれた。
そして3つ目は
雪太
雪太
雪正
雪正
雪正
雪太
雪太
雪正
雪太
雪太
雪正
いつもは長く感じる通学の時間も
彼と一緒だと短く感じ
あっという間に学校に着いた。
雪正
雪正
雪太
雪太
雪太
雪正
雪正
僕の学校で彼と別れるとき
彼がじゃあねと言いながら走っていくのを見て僕は気づいた。
彼の不思議なところ3つ目は
彼が通ったところに足跡がつかないこと。
歩いた道を見ると
自分の足跡は確かに雪の上に残っている。
というより自分の足跡しかない。
でもそんなこと僕にはどうでもよかった。
彼が北海道で初めてできた友達であることには変わりないからだ。
僕は頬をつねってこれが夢じゃないことを確認した。
誰がなんと言おうと
彼と僕は雪友だ。
結局、春にはまた父親の仕事の関係で引っ越すことになり
彼と一緒に学校に行けたのは数ヶ月間だった。
それから10年経った今
僕は東京の会社で働いている。
彼が今もあの通学路にいるのかはわからないが
雪正
雪正
僕は歩きながら
”Yukimasa”の刺繍の入ったハンカチを
何気なく雪の上に落としてみた。