テラーノベル
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主。
主。
主。
主。
主。
オレが全力ダッシュでAtに指定された場所に向かうと、 At様、と書かれた病室にたどり着く
一応ノックだけしてそうっと中に入ると、 そこには今起きたばかりなのか ベッドの上でぼーっと外を見つめているAtがいた
At
Mz
オレはオレをMzだと認識していない彼を驚かせないよう その肩をぽんぽんと優しく叩く
触れた体にはちゃんと実体もぬくもりもあって、 彼がまだこの世に留まっているということに少し安堵した
At
オレに肩を叩かれたことでやっと自分以外の誰かの存在に気がついたのか、 彼はいつも海岸でオレの方を向くときのような緩慢な動作でこちらを向く
Atの話を疑っていたわけではないが、 その彼を思わせる動作が目の前の男は本当にAtなんだという 実感のようなものをオレに与える
彼はオレの姿を目に映して固まった
At
At
Mz
At
不思議そうな表情を浮かべるAtに、オレは笑う
Mz
At
そうつぶやいたとき、Atが顔をひそめて頭を押さえた
Mz
At
At
Atはオレの方をじいっと見つめると、こう言った
At
At
At
先日廊下ですれ違った時にも聞かれたものの 回答に迷ってしまったその質問の答えには、もう迷わない
Mz
Mz
At
さらに苦しそうな顔をしたAtに思わず言葉を止めたら、 「続けて、お願い」と先を促された
とはいえAtがあまりにも苦しそうなので、オレは尋ねる
Mz
オレがそう尋ねると、彼はこくりと頷いた
許可を得ることができたので、オレは彼のいるベッドの横に屈み、 震えている彼の手にそっと触れる
今度はオレの手が空を切ることはなく、ちゃんと彼に触れることができた
指先から伝わるAtのぬくもりとかすかに感じる脈に安心する
At
Mz
オレはそのぬくもりからは手を離さないで、 そうっと目を閉じて微笑みながら告げた
Mz
At
At
Mz
Mz
Mz
Mz
At
Mz
At
Mz
Mz
Mz
At
Mz
Mz
At
Mz
At
Atは苦しげに顔を歪め、オレが触れていない方の手で頭を押さえる
辛そうな彼にオレは「ここでやめとく?」と尋ねたが、 Atはふるふると首を振ってやめて欲しくないと意思表示をした
Mz
Mz
At
Mz
Mz
Mz
Mz
Mz
Mz
At
Mz
Mz
Mz
Mz
Mz
At
Mz
Mz
At
Mz
Mz
Mz
Mz
Mz
At
Mz
Mz
Mz
Mz
死なないでくれ、生きて欲しいんだとオレが言おうとした時、 オレの瞳からほろりと涙が落ちて、言葉が詰まってしまう
死なないでくれと今伝えなければ、 彼は自分の命を捨ててしまうかもしれない
生きて欲しいんだと今伝えなければ、 彼は自分の人生を諦めてしまうかもしれない
頭ではそうわかっているしちゃんと言葉にしたいのに、 あふれ出す涙が邪魔をして結局言葉にならない
泣き出してしまったオレを見てAtは目を見開き、 オレが握っていない方の手を、ひどく痛むはずの自身の頭から離して オレの髪を優しく撫でた
自分の苦しみを和らげることよりも オレを慰めることを優先してくれる彼の姿とその優しさに、 やっぱり彼は海岸にいる時と根っこのところは変わらないと悟った
Mz
苦しげな表情をいつも見慣れた大人っぽい微笑を薄めた表情に変えたAtに、 オレの心の中で“好き”の気持ちがあふれ出す
気がつけば、「死なないでくれ、生きて欲しいんだ」と 言葉を紡ぐ予定だった口は想定とは少し異なる言葉を発していた
Mz
At
Mz
Mz
Mz
Mz
Mz
Mz
こんなところで終わるなんて、嫌だっ、!
オレの言葉を聞き終えたAtが目を見開いた直後、 彼は今まで見てきた中でも一番苦しそうな顔をして、 頭を押さえてその場にうずくまる
At
Mz
流石に言いすぎただろうかとオレが心配しながら 苦しむ彼の手を強く握ることしかできないでいると、Atはこんなことを言う
At
Mz
At
彼はしばらくそこで唸っていたが、数分後に息も絶え絶えに続ける
At
Mz
At
これが最後のピースなんだと、直感でわかった
オレは満面の笑みを浮かべて、 先ほどこいつに海岸で伝えたのと同じように質問に答える
Mz
オレの答えを聞いたAtが少しだけ笑った時、 ずっと続いていた彼の手の震えがピタッとおさまった
Mz
オレが急に止まった震えに少々戸惑っていると、 もうとっくのとうに聞き慣れた彼の声がオレの鼓膜を揺らした
At
Mz
オレが彼の名前を呼ぼうとして詰まったのには、二つの理由があった
一つ目は、目の前の彼が海岸の時と同じような微笑みを浮かべていたから
そして、二つ目は、、、
At
そう謝りながら優しく微笑んだ彼が、オレの頭に口付けたから。
Mz
At
彼は嬉しそうにそう言うとベッドから立ち上がり、 オレの側でオレと目線を合わせるように屈む
At
At
At
At
At
At
Mz
オレの問いに本当だよ、と返したAtは、 溶けてしまいそうなほど甘い笑みを浮かべながらそして、と続けた
At
Mz
Mz
Atが紡ぐ言葉にオレがパニックを起こしていると彼は、 本当に可愛いな、とこぼしたあとに立ち上がり、 両手を広げながら、おいで、とオレに向かって甘さのこもった声で呼びかける
オレがドキドキしながらその言葉に従って彼にくっつくと、 Atは愛しげに目を細めながらぎゅうっと抱きしめてくれた
Mz
At
あまりにも余裕そうな表情でそういうものだから少し腹が立って、 オレはプイッとそっぽを向きながら言い訳する
Mz
At
Mz
オレが相手を睨みながらそう不満げに声を上げると、 Atは心外だな、とつぶやいてこう続ける
At
彼は少し緊張しているような声でそう言うと、 ほら、と言いながらオレの耳を自身の心臓のあたりに近づける
Mz
彼の体越しに聞こえてくるその生きる証とも言える拍動は、 どきんどきんと通常より力強く、スピードも早くなっているということを オレの耳に伝わる音が物語っていた
Mz
At
彼は少しすねた様子でそうこぼすと、ところで、と話題を変えた
At
Mz
At
Mz
At
Mz
ラノベやドラマでしか見たことのない言葉を聞いて声を裏返ったオレを見て、 Atは楽しそうに笑っていた
At
Mz
At
もしAtの恋人になれば、 彼に自分以外とあまり仲良くしすぎるなと伝えられる権利だったり、 恋人ならではの特権だったりを得られる(ラノベより)ので、 オレとしては恋人になれたらいいなとは思っている
でも、素直にそれを言うのは恥ずかしくてうつむいて黙り込んでしまった
Mz
そんなオレをAtはしばらく不思議そうに眺めていたが、 やがてふふっと笑いながらオレをぎゅっと抱きしめた状態で ぽすんとベッドに座った
Mz
At
Mz
Atはぎゅっとオレの体をさらに強く抱きしめて、オレの耳元でささやく
恋人、なろっか。
Mz
向こうからそう言ってくれたことに安心して、 オレはこの機会を逃すまいと大袈裟なくらいにうんうんと何度もうなずく
そんなオレを見てAtは世界一愛らしいものを見ているかのように 表情を緩めると、ねえMz、と呼びかける
Mz
At
ちょっと恥ずかしそうにそう尋ねるAtの少し赤くなった頬を見て、 オレは満足して笑いながら答えた
Mz
At
Atの綺麗な顔がゆっくり近づいてきて、その唇がオレのものと重なる
それが幸せで幸せで、心の中が甘くて熱いもので満たされた
Mz
生まれて初めての口付けを終えたオレがAtにすりすりと頭を擦り付けると、 頭上から「俺も幸せだよ」と言うAtの声が聞こえてきた
Mz
Mz
At
At
Mz
At
オレたちはこつんとお互いの額を合わせながらそう宣言し、 2人でくすくすと笑い合う
こうしてオレは、数週間前では想像もできないような完璧な幸せを手に入れた
Atと恋人になってから数ヶ月が経ち、 彼は精神の病気の改善が見られたので退院して元の生活に戻った
Akも最近リハビリが好調らしく、ケガをする前とまでは行かずとも 車椅子なしでそれなりに自由に移動できるようになったようだ
そして、オレは現在PrとAtと3人でAkのお見舞いに来ていた
Pr
At
Mz
Akはオレ達3人の声を聞いて目を輝かせると、 先日Atが勧めたらしいラノベを閉じてこちらに目線を向けた
Ak
Ak
At
At
Ak
Atの言葉を聞いてAkは嬉しそうに叫んで彼にぎゅうぎゅうとくっつくが、 オレとしてはちょっと近いので離れて欲しいところだ
オレはすかさずAkからAtを引き剥がし、 自分の方にぐいっと引っ張ってぎゅっとその体にくっつく
At
Mz
Mz
Pr
Ak
At
Atと距離が近すぎるAkにオレとPrがキレ散らかし、 Atはそれを見ながら楽しそうに笑い転げている
先ほどAkが言った通り、Atは合格すれば高校を卒業しなくても 高校の卒業資格を得られる高等学校卒業程度認定試験という国家試験に向けて 勉強を頑張っているのだ
数ヶ月前まで自分の命を諦めてずっと後ろを向いていた彼が 未来に向かってちゃんと生きてやろうと足掻いているのが嬉しくて、 オレは1人で笑ってしまう
Pr
Ak
At
Mz
オレの言葉を聞くと3人はしばらく動きを止めたが、 そのあとそれぞれ彼ららしい言葉を返してきた
At
At
Pr
Pr
Ak
Ak
Mz
At
部屋にオレたち4人の笑い声が響き渡り、ああ幸せだな、と 改めて感じていると、Akが何かを思い出した様子を見せてこう続ける
Ak
Mz
Ak
At
Ak
Pr
At
Mz
Ak
Pr
Ak
At
Mz
At
At
Mz
Ak
At
Mz
Pr
Mz
At
Ak
At
At
Ak
Pr
Mz
Mz
Ak
At
4人でそんなくだらない話をしていると、 病室の扉が開いてKtyさんとTg先生がひょこっと現れた
Kty
Tg
Ak
実はAtとオレが恋人になった数日後、 Akが「MzちとPrーのすけだけKtyちの恋人と知り合いなのずるいっ!!」と 駄々をこねたことでTg先生もお見舞いに来ることになり、 今では本のことを話せる友人のような感覚で仲良くしているようだ
6人でわちゃわちゃしていれば時間というのはあっという間に過ぎるもので、 いつの間にか太陽が沈む時間になっていた
Pr
Mz
At
Ak
Kty
Ak
Pr
Mz
Tg
Tg
Mz
我が子に帰宅時間を尋ねる母親のようにそうオレに尋ねるTg先生に、 オレはぎゅっとAtの手を握りながら答える
Mz
Tg
Tg
Mz
Tg
ニコニコ笑いながら了承の返事をくれたTg先生からAtに目線をうつし、 オレは上機嫌で彼の腕にぎゅっとしがみつく
Mz
At
Mz
At
Pr
Ak
Kty
こちらをじとーんと見ているAkPrを尻目に、 オレはAtと一緒に海岸に向かって歩き出す
オレの隣で笑いながら歩いている最愛の彼と言葉を交わすのに もう時間なんて関係ないことが、どうしようもなく嬉しくて幸せだった
これは、心に深い傷を負ったことがある者たちの物語。
Ak
人々の嫉妬をその身に受けて体の自由を失ってしまった少年が、
Pr
その身が放つ輝きゆえに最愛の人を傷つけてしまった少年が、
At
人生に絶望して命を断とうとしたのに死に損なってしまった少年が、
Mz
この世の全てに希望なんて見出せなかった不幸な少年が、
完璧な幸せを手に入れるまでの、物語。
ついに手に入れた自分たちの幸福を奪おうとする者たちが、 二度と現れないことを願って。
今日も彼らは、笑いながら生きていく。
主。
主。
主。
主。
主。
主。
主。
主。
主。
この先ストーリー関連の豆知識集とストーリーの都合上 無視したところの補足なのでスルーしていただいても大丈夫です↓↓ (要約すると、「難しいことは考えないでね」ということですw)
主。
主。
主。
主。
主。
主。
主。
主。
それでは皆さん、タップお疲れ様でしたっ!!
コメント
6件
完結おめでとうございます😭 akくんが言った、夏目漱石さんの言葉や、atくんの辛い過去など全てに感動したり、ニヤニヤしちゃったりして本当に今までで1番最高の作品です!!次回作も過去作もニヤニヤしたりしながら見させて頂きます💕
完結おめでとうございます!!!😭😭🎉 相変わらずストーリーが最高すぎて...!!! 最終回は長ければ長いほど感動あるので全然ウェルカムです!!!! 文才凄すぎて言葉が出ません...😿💖 次の作品も楽しみにしてますっ!!!!
おはようございますっ! 語彙力が皆無なのでこの感動が伝えられない…………っ! 本当に感動しましたし幸せになりましたっ! ストーリーの持っていき方や言葉の使い方、全て神級で大好きですっ! 本当に素敵な作品ありがとうございます!!