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伊東 善

ケホッ……

伊東 善

…くっそ、しんど……

ピピピピピ…

体温計を脇から離し、表示画面を見る。

39.1と表示されている。

伊東 善

やば……

善はベッドの上で仰向けになって天井を見つめていた。

しんどすぎて動けない

薬飲まなきゃ

いや、その前に病院か?

伊東 善

(頭痛い…)

こんな時、

恋人とか家族とか友達とかいたらな…

唯一の友達も、恋人もいなくなっちゃったし__

伊東 善

俺こそひとりぼっちじゃん…

ズキンッ…ズキンッ…

伊東 善

(あー頭痛い)

朦朧とする意識の中で

善は紬希と理仁の顔を思い浮かべていた。

パチッと善の瞳が開く。

伊東 善

……ん

伊東 善

(寝てたのか、俺__)

頭の痛さや倦怠感は嘘のようになくなっていた。

善は上半身だけ起き上がった。

栗原 理仁

……善

その時、ベッドの隣に座っている理仁と目が合った。

伊東 善

伊東 善

は、はぁっ!?

伊東 善

なんで!?

栗原 理仁

…これ

理仁は数枚のプリントが挟まったファイルを差し出した。

栗原 理仁

今日のプリント類届けに来た

栗原 理仁

…って言ったよな?

伊東 善

は、ぁ?

伊東 善

初めて聞いたし

伊東 善

どうやって家の中に入ったの?

栗原 理仁

…覚えてないのか

伊東 善

…?

遡ること、数時間前__

帰りのHRが終了した。

栗原 理仁

(よし、帰るか)

理仁はチラ、と空いている善の席を見た。

栗原 理仁

(なんでアイツ今日欠席なんだ…)

栗原 理仁

(昨日俺が大嫌いって勢いで言ってしまったからか?)

栗原 理仁

(いやいや、そんなすぐ凹むやつじゃないだろ)

栗原 理仁

……

栗原 理仁

(グダグダ考えて、女子か俺は!)

教師

栗原〜

するとファイル片手に担任が理仁の元へ寄ってきた。

栗原 理仁

…なんですか?

教師

お前、伊東と仲良かったよな?

栗原 理仁

…はあ

教師

俺今日、会議で忙しくてさー

教師

今日のプリント類、伊東の家まで届けてくれよな

栗原 理仁

栗原 理仁

きょ、教師としてそれはどうなんで__

教師

頼むぜ会長…!

栗原 理仁

(俺だって課題とか諸々あるのに…)

栗原 理仁

(なにより善と会うのが気まずい)

栗原 理仁

……

栗原 理仁

(成績に響くかもだから一応承諾しとくか)

栗原 理仁

はあ。わかりましたよ

教師

ありがとな!!!

ピーンポーン、とインターホンを押す。

……

栗原 理仁

(出ない…)

ピンポーンピンポーンピンポーン

栗原 理仁

(また女連れ込んでるんじゃないだろうな)

栗原 理仁

(アイツこそ、本当に紬希と血が繋がってるのか)

栗原 理仁

(女遊びばかりしやがって…ムカつく)

その時、ガチャと玄関のドアが開いた。

栗原 理仁

伊東 善

……

マスクを着け、真っ赤な顔で今にも倒れそうな善がいた。

栗原 理仁

これ

栗原 理仁

今日のプリント類

伊東 善

……

ファイルを差し出しても善はぼーっとしたまま動かない。

栗原 理仁

(高熱だな…)

栗原 理仁

受け取れ、早く

伊東 善

善はぼーっとしながらファイルを受け取った。

栗原 理仁

(大丈夫か、こいつ)

栗原 理仁

(片親…って言ってたよな)

栗原 理仁

(看病してくれる人はいないのか…)

栗原 理仁

(…っていやいや)

栗原 理仁

(俺はそんなことする義理はない)

栗原 理仁

帰るからな

ドアを閉めようとすると、

空いた隙間から善の腕が伸びてきて、理仁の服の裾をグイッと引っ張った。

栗原 理仁

…!?

伊東 善

行かないでよ、理仁

伊東 善

俺ひとりぼっちなんだよ

栗原 理仁

ドクンッと心臓が跳ねた。

「やだよ」

「ひとりぼっちはやだよ…っ」

理仁の頭の中にはそう言い泣き続ける紬希の姿を思い出していた。

伊東 善

…やだ__

栗原 理仁

ああ。

すごく似てる

やっぱ血の繋がりって、すごいな

栗原 理仁

…わかった

栗原 理仁

家、入っていいか?

伊東 善

…うん

栗原 理仁

……と、いうことだ

伊東 善

……

伊東 善

うわぁあああああ!!

伊東 善

恥ずかしいいいいッ

善は真っ赤な顔でじたばたとベッドの上で暴れていた。

伊東 善

(「行かないで」「ひとりぼっちはやだ」…!?)

伊東 善

(死にてぇ…)

栗原 理仁

お前は弱ると紬希になるんだな

栗原 理仁

流石血縁関係があるだけある

栗原 理仁

お前が"お兄ちゃん"だと認めた訳では無いけど

伊東 善

……

栗原 理仁

記憶はないだろうが、薬とか諸々飲ませたから

伊東 善

……ありがとう

栗原 理仁

伊東 善

(なんでこいつは__)

伊東 善

なんで来てくれたの?

栗原 理仁

…は?

伊東 善

昨日、

伊東 善

俺のこと嫌いって言ってたじゃん

伊東 善

大嫌いだって__

伊東 善

俺の顔も見たくはないくせに

栗原 理仁

……本当に会いたくなかったら

栗原 理仁

会いにこない

伊東 善

…!

栗原 理仁

お前のことは嫌いだ

栗原 理仁

だけど__

栗原 理仁

高一から今まで、善と過ごしてきた期間

栗原 理仁

楽しかったのも事実だ

ジーン…と胸が熱くなる。

伊東 善

(やべ、泣きそう…)

善は泣きそうな顔を隠すように布団に顔を埋めて言葉を続ける。

伊東 善

理仁は…優しすぎる

栗原 理仁

…優しい?

栗原 理仁

はは。そんなわけないだろ

伊東 善

優しく…するくせに

俺を決して"理仁と紬希の世界"には入れてくれない

少しでも足を踏み入れようとすれば

すぐ拒絶してくるんだ……__

伊東 善

理仁の世界に

伊東 善

入りたい

栗原 理仁

…は、?

親友とか

同性だとか

同じ妹を持つこととか、関係ない

お前が好きだ

伊東 善

…ちょっとでもいいから

伊東 善

理仁の世界に入らせてよ

俺を好きになれなんて言わない

だけど少しだけ

今だけでいい

俺の方を見て

栗原 理仁

……

栗原 理仁

なるほど。そういうことか

理仁はブツブツと何かを呟くと、

善の額にパチンッとデコピンをした。

伊東 善

いたっ

栗原 理仁

善。

栗原 理仁

俺にとってお前は友達だ

栗原 理仁

それ以上でもない

伊東 善

…!

栗原 理仁

それ以下でもない__

栗原 理仁

…だから、ごめんな?

善はポカンと口を開けていたが、ぶっと吹き出した。

伊東 善

あっはは!

伊東 善

普通に振られたー!w

栗原 理仁

え?

栗原 理仁

じゃあどうやって振ればよかったんだ

普通に振られただけなのに

嬉しいのは

理仁が俺のために言葉を選んで

気持ちを伝えてくれたから__

栗原 理仁

…あと

栗原 理仁

気持ち悪いって言ったの訂正する

伊東 善

え!

栗原 理仁

気持ち悪くなんてない

栗原 理仁

俺が紬希に対する気持ちと同じだろ、善の気持ちは

伊東 善

……っ

善はもう一度ボスッと布団の中に顔を埋めた。

伊東 善

(また泣きそう…)

栗原 理仁

あ、でも1つ謝れ

伊東 善

…?

善が顔を上げると、間近に理仁の顔があった。

善はボッと顔を赤くさせて理仁から距離をとる。

伊東 善

な、なんだよ!

栗原 理仁

……キス

栗原 理仁

俺のファーストキス奪いやがって!!!

伊東 善

…へ?

伊東 善

あーそんなこともあったような__

栗原 理仁

いつの日か紬希とできるように残しておいたのに…

栗原 理仁

謝れ

伊東 善

……っくく

伊東 善

あっはは!

善はべーっと理仁に向かって舌を出した。

伊東 善

絶対、ヤダ♡

栗原 理仁

…あ?

伊東 善

ファーストキスが"俺"だって

伊東 善

これから他の人とキスする度思い出せー!

栗原 理仁

…最悪だ

伊東 善

っははは!

最高だ

最高の失恋だ、こりゃ

私の大好きなお兄ちゃんたち

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コメント

1

ユーザー

最高ですねぇ〜〜✨️ やっぱ善くん、すぐ立ち直るねw 流石!! 血の繋がりを、今初めて感じた‼️ 本当に面白いっ!!! さくらさんは これからも神作を生み出していくんだろうな〜っ! 楽しみにしてます💫

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