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栗原 紬希

…あ

伊東 善

…!

朝の下駄箱で、紬希と善はバッタリと会った。

栗原 紬希

(数日ぶり…)

伊東 善

おはよう、紬希ちゃん

栗原 紬希

う、うん…

栗原 紬希

おはよう

栗原 紬希

(お兄ちゃんの善くんとして接するべき…?)

栗原 紬希

風邪ひいてたんだよね?大丈夫?

伊東 善

もう完治だよー

伊東 善

ありがとう

伊東 善

理仁は一緒じゃないの?

栗原 紬希

…寝坊しちゃって

栗原 紬希

置いてかれちゃった

伊東 善

あははっ

栗原 紬希

(いつも通り…だよね)

伊東 善

…あのさ、紬希

呼び捨てに思わずドキッとしてしまう。

栗原 紬希

な、なーに?

伊東 善

今日の放課後、時間ある?

栗原 紬希

…、あるよ

伊東 善

俺の父さんが……

伊東 善

ちゃんと紬希と話をしたいらしくて

栗原 紬希

(私の"本当"のお父さんだよね……)

栗原 紬希

(今まで無縁だったのに…今更いいのかな)

伊東 善

…一応、紬希のママやパパに聞いてみて

伊東 善

OKが貰えたら教えて

栗原 紬希

うん。

栗原 紬希

わかった

伊東 善

ありがとね!

伊東 善

じゃあ学校頑張ろー

手を振って歩いていこうとする善の腕をパシッと掴んだ。

伊東 善

…ん?

栗原 紬希

……

栗原 紬希

お…お兄ちゃんも…

栗原 紬希

頑張ってっ

伊東 善

……ははっ

善は笑を零して紬希の頭を撫でた。

伊東 善

紬希ちゃん

伊東 善

無理に「妹」を演じようとしなくていい

栗原 紬希

…っ

伊東 善

ゆっくりでいいんだよ

伊東 善

…いや、

伊東 善

俺の事を兄と思えなかったら一生、「理仁の友達」っていう認識でいい

伊東 善

紬希ちゃんがしたいようにすればいい

栗原 紬希

う、うん…

栗原 紬希

わかった…

ー放課後ー

紬希、理仁、2人の両親はテーブルを囲んで話をしていた。

栗原 紬希

…っていうこと、なの__

…つまり、

善くんは理仁と紬希の友達で

たまたま善くんの父、小太郎(こたろう)さんが

紬希のことを知ってしまったってことね…

……

紬希と小太郎くんを会わせる気はもうないつもりだったんだけどねぇ……

栗原 理仁

……紬希はどうしたいんだ?

栗原 紬希

栗原 理仁

実の父と話がしたいのか、したくないのか…

紬希は膝の上に置かれている拳を握りしめた。

栗原 紬希

………お話、したい

栗原 理仁

栗原 紬希

ママとパパとお兄ちゃんは私の家族だよ

栗原 紬希

でも今私が生きているのは善くんのお父さんとお母さんのおかげだから

栗原 紬希

産んでくれてありがとうって

栗原 紬希

言いたい……

……そうね

行ってきなさい、紬希

栗原 紬希

栗原 紬希

う、うんっ

紬希の心は不安の気持ちとワクワクした気持ちが入り交じっていた。

ガチャ……と善は玄関のドアを開けた。

栗原 紬希

お邪魔、します……

伊東 善

どうぞー

紬希の心臓はバクバクとしていた。

栗原 紬希

(破裂しそう……!)

伊東 善

俺の父さん、リビングにいるからついてきて?

栗原 紬希

う、う、うんっ

汗まみれの紬希の様子を善は見つめていた。

伊東 善

……大丈夫

伊東 善

そんな緊張しなくてもいいよ

伊東 善

俺たちは生まれた時は一緒にいた仲なんだから

栗原 紬希

……うん

善はリビングの扉を開けた。

栗原 紬希

……!

伊東 小太郎

つむ、ぎ……

ガタリ、と小太郎は椅子からその場に立ち上がった。

栗原 紬希

……

栗原 紬希

お父、さん__

その時、ブワッと紬希の目から涙が溢れ出てきた。

栗原 紬希

お父さんっ!

伊東 小太郎

紬希!

小太郎は紬希のことをギュッと抱きしめた。

伊東 小太郎

ごめんな、紬希。ごめんな……

栗原 紬希

(お父さんの胸、暖かい……)

安心する……

伊東 小太郎

今まで紬希のこと、放っておいてごめん……

伊東 小太郎

実の娘なのに……俺は__

栗原 紬希

ううんっ

栗原 紬希

いいんだよ、お父さん

栗原 紬希

こうやってもう一度抱きしめてもらえるだけで

栗原 紬希

私は嬉しいんだよっ

伊東 小太郎

うっ……うぅ

伊東 善

……

善は涙ぐんで2人の様子を見つめていた。

伊東 小太郎

菜々子も小さい時に他界して、

伊東 小太郎

知らない家でひとり寂しかったよな……

栗原 紬希

伊東 小太郎

これからはもう父さんと善がいるからな……

伊東 小太郎

家族がいるから

栗原 紬希

お父さん、どういう意味__

伊東 小太郎

ここに住もう

伊東 小太郎

"本当"の家族で、一緒に__

栗原 紬希

伊東 善

ま、待って父さん!

善が慌てて二人の間に割り込む。

伊東 善

紬希には既に違う家族がいるんだよ

伊東 善

お兄ちゃんだって、理仁が__

伊東 小太郎

……そうだな

伊東 小太郎

それは分かっている

伊東 小太郎

これは選択肢のひとつにしてほしい……

栗原 紬希

……っ

伊東 小太郎

今、もし紬希が少しでも辛いと思っているのなら

伊東 小太郎

お父さんたちはいつでも紬希を待っているから

栗原 紬希

……え、っと__

伊東 善

…そうだね

伊東 善

どちらを選べ、じゃないけど

伊東 善

紬希がしたい選択をすればいい

栗原 紬希

……!

そんなこと、急に言われたって……!

どちらかを選ぶなんて、私には__

伊東 善

……とりあえず、もう遅いから送ってくよ

伊東 小太郎

……だな。

伊東 小太郎

紬希…、また遊びに来てくれるか?

伊東 小太郎

お父さん仕事ばかりで忙しいんだが、

伊東 小太郎

今度家族3人でどこか出かけよう

小太郎は優しく微笑んだ。

栗原 紬希

……うんっ

2人は夜道を歩いていた。

伊東 善

…ごめんな、父さんが困らせるようなこと言って

栗原 紬希

え!

栗原 紬希

……だ、大丈夫だよ

伊東 善

でもあの人、紬希のことを大切に思ってるのは本当だし

伊東 善

もう一度、家族でやり直したいと真剣に考えてる

栗原 紬希

う、うん…

伊東 善

紬希ちゃん。俺は紬希ちゃんにとって元カレだし

伊東 善

まだ整理ついていないのはわかる

伊東 善

けどね

伊東 善

この前、紬希が「私はひとりぼっち」って言ってたよね

栗原 紬希

……!

伊東 善

俺たちの家に来れば、ひとりぼっちじゃなくなる

伊東 善

血の繋がりは、確実に俺たち家族の仲を繋いでくれる

栗原 紬希

……っ

伊東 善

紬希

伊東 善

俺と家族になろう

伊東 善

俺を紬希の、本当のお兄ちゃんにして。

栗原 紬希

……ぁ、

栗原 紬希

そ、そのっ__

頭が真っ白で

言葉が出てこない

伊東 善

……整理ついてからでいいから

伊東 善

ママとパパと理仁とよく話し合って

伊東 善

決めて?

伊東 善

どんな選択でも俺は紬希の味方だから

栗原 紬希

栗原 紬希

う、うん……

私は……どうしたいんだろう

パパもママも

お父さんも

お兄ちゃんも善くんも

みんなみんな大好き

どちらかを選ばないといけないなんて

そんなの、ヤダな……

私の大好きなお兄ちゃんたち

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コメント

4

ユーザー

この物語すごくお気に入りです! これからも応援させてもらいます!✨️

ユーザー

まさかこういうお話になるとは思ってもみなかったな…、、 お兄ちゃんとの秘密の恋愛 的なお話かなーと思ってたら、まさかのこういう関係か?! ってなった‼️ 本当に面白いお話です!! 書き方も上手で、本当に最高です🔥ありがとうございます✨️

ユーザー
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