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俺と彼女は、共通の友人の紹介で知り合った。

容姿は可愛く、話しやすい、とてもいい子だった。

特に印象に残ったのが、ほのかな、香水の匂い。

俺は彼女と、いい友達になれると思っていた。

香澄

…樹くん?久しぶりだね!

高校へ行く途中、一人の女性に声をかけられた。

え?誰だよ…って、浅野か。

久しぶりだな。なんかあった?

香澄

え?いや、別に?

香澄

見かけたから声かけただけだよ?

お、おぉ、そうか…

(やばい!浅野から声かけてくれた!ちょ、
待ってやばいって嬉しすぎて死ぬ)

香澄

あれ、待って樹くん、顔赤いよ?熱あるんじゃないの?

そう言って俺の顔に、顔を近づける。

だ、大丈夫だよ!

香澄

そう?

彼女の無防備な姿に、思わず飛びつきたくなるが我慢する。

ここで失敗してしまったら、今までの関係も崩れてしまう。

(あっぶな〜)

(危うく犯罪者になるとこだったよ、俺…)

香澄

そういえばさ、智!あいつ、また私のプリン食べたんだよ…

香澄

酷くない!?

た、確かに。あいつも懲りないよなぁ。

(また、あいつの話)

俺の親友であり、浅野の幼馴染である智則

浅野とは家が隣であることから、 浅野からしょっちゅう文句を聞かされる。

香澄

そうなんだよ、お前のだからいいんだ、なんて言っちゃってさ〜

へぇ…

俺は見慣れた通学路を二人歩きながら、モヤモヤとした感情を胸に閉じこめた。

香澄

あ、樹くん?

香澄

入っちゃっていいよ〜

2日後。日曜日、俺は浅野の自宅に来ていた。

ことはあの後、教室での休み時間に遡る。

智則

うぉい樹

智則

お前朝から何見せつけちゃってくれてんだ

は?何が

HRが終わったあとの、1校時前の休み時間。

智則

何がって、香澄だよ!

智則

お前朝一緒に、登校してたじゃないか!

見てたのかよ…

智則

あぁああ、いいよなぁぁあ、恋人ってぇぇ!

うるせぇ

智則

ラブラブ見せつけてきてよぉ!死ね!リア充!

いてぇょ、やめろ陽キャが

それに俺ら、付き合ってねぇし

朝もお前の話ばっか

プリン食うのだけはやめてやれよいい加減

智則

俺という存在がお前らリア充の雰囲気を壊していたのか?

智則

俺、生まれてよかった…

何に生きがい感じてんだよ

智則

ていうかお前ら、ほんとに付き合ってねーのか?

智則

お前、香澄好きだろ

は?!

な、な、何にににに言ってて、んだよよ。

智則

その様子じゃ図星か。

智則

香澄、可愛いか?

か、かわ、いいよ。

超かわいいよ!

智則

何声荒げてんだ

智則

まあそうとなりゃ俺も応援するよ。

智則

そもそも俺が紹介したわけだし

は、はぁ?

余計なことすんなよ

智則

まあいいわ、ちょうど俺も用事あったし

そう言ってスマホを取り出す

智則

智則

通話終了

通話
00:00

智則

おーい、香澄か?

智則

俺だよ、俺

香澄

残念ながら俺なんて人は知らないなぁ

智則

んだよ、わかってんだろ?

智則

まあいいや、お前さ、明後日暇?

香澄

え?暇だけど

香澄

それがどうかした?

智則

そうか。いや、樹がな?お前の家みたいって言うから

ちょ、おい、何言ってんだよ智則!

香澄

別にいいけど…どうして?

智則

それは樹が…

智則

い、樹、口塞ぐなって

うるせぇお前が変なこと言うからだ

香澄

樹くんいるの?

智則

ん?おぉ。

香澄

樹くん。私、歩道橋のとこで待ってるから。

香澄

朝の9時ね!

え、あ、っう、ん

智則

あ、あとさぁ、

智則

香澄、樹にプリン持ってかせるから

香澄

香澄

コンビニのじゃ駄目だよ、
安達堂のやつね

智則

へいへい

智則

んじゃ、また

智則

だとよ

お前、お、おまっ好き勝手言いやがって

智則

まあいいじゃないか、心の友よ

うるせぇ黙れ非リアが

智則

ひでぇ!

それより

金どうすんの?

智則

え?

智則

なんのこと?

智則

僕、持ってないよ?

お前なぁ

智則

優しい優しい樹くんが

智則

香澄のためにお金出してくれるでしょ?

はぁ…

なんやかんやで浅野の家に行く機会を与えてくれた智則には、 感謝すべきなのだろう。

香澄

あれ?何してるの、樹くん

香澄

早く入りなよ

あ、う、うん

少しつっかえながら返事する。

あ、そうだこれ、プリン

香澄

え?あ、、そうだったね!

香澄

わざわざありがとう!

別に…

浅野はプリンを冷蔵庫に入れ、こちらに戻ってきた。

香澄

おし、じゃあ上行こっか

香澄

階段こっちだから、ついてきて。

(…そういえば、初めて女子の家に入ったわ)

…いい匂いがする…

香澄

あ?そう?

香澄

オンシジュームだよ。

香澄

花も可愛いんだ。

しまった。聞こえてたみたいだ。

そうなのか。…この香り、なんか落ち着くよ。

なんて答えながら、浅野についていった。

香澄

で、樹くん。

香澄

一体何で私の部屋が見たかったの?

…実は

俺、実は、ずっと…!

いや、やっばりなんでも…

香澄

樹くん?

な、ななんでもないよ!気にしない、で…

香澄

馬鹿っ!

浅野が叫ぶ。

香澄

樹くんって、いつもそう!

香澄

大事なところで優柔不断なんだよ!

香澄

はっきり言ってよ!

な、何だよ…

だからなんでもないって言ってんじゃん!

香澄

何なの、その言い方?

香澄

もう、いいよ。

香澄

期待した私が馬鹿だった。

香澄

ちゃんと、樹くんの口で言ってほしかったのに。

え、ちょっと浅野…

香澄

バイバイ

香澄

これが最後のチャンスだったのに

そう言って俺を玄関に突き落とす。

いって…

香澄

じゃあね

そう言ってドアを勢いよく閉めた。

智則

おーい

智則

樹?

んだよ

智則

どうだ、上手くいったか?

全然

上手く行くどころかキレて追い出されちまった

智則

うへぇ

智則

あの香澄を怒らすとか、お前何したんだよ

別に

ただ…

智則

智則

お前、やましいことがあるなら謝りにいけよ?

智則

これが最後なんだから

それ、浅野も言ってたけど

最後ってなんだよ

智則

はぁ?

智則

お前聞いてねぇの?

智則

嫌われてるねぇ〜w

智則

ざまあみろwwww

いいからはよ

智則

香澄、引っ越すんだよ

は?

智則

北海道に

智則

お前、もう二度と会えねーかもしれねーんだぞ?

マジかよ

何も聞いてねぇ

智則

おおそうか、やっぱ嫌われてんなwww

智則

まあとにかく、早めに言っといたほうがいいんじゃねぇの?

どうせ無理だよ…

浅野と喧嘩別れして6ヶ月。

浅野は、北海道へと旅立った。

俺は結局、思いを伝えれないまま。

そしてまた春が来て、俺は高校を卒業した…

モブ子

ねぇねぇ高本くん、

モブ子

今度の日曜さ、遊園地行かない?

ん、別にいいけど…

大学2年生の冬。

明日はクリスマス、なんて言うときに、 俺は好きでもない女子に誘われていた。

そう、クリスマスの夜を。

そして二つ返事で答える。

モブ子

やったぁ!じゃあ、クリスマスの夜、〇〇遊園地の前で!

んー…

クリスマスの夜っつっても、明日なんだけどな。

記念すべきクリスマス当日。

うへぁ、さみぃ!

ちっ、あいつ、人誘っといてまだかよ…!

俺はモブ子の到着を待っていた。

まだイルミネーションもついてねーし…

それにしてもあいつ、遅くねぇか?

スマホが鳴る。

応答なし

応答なし

応答なし

応答なし

おい、お前まだかよ

さみぃんだけど

世界一かわいい♡モブ子♡高本くん好きぴ♡

ごみーん高本くん!

世界一かわいい♡モブ子♡高本くん好きぴ♡

今日ちょっと行けそうになーい!

世界一かわいい♡モブ子♡高本くん好きぴ♡

髪型決まんなくって…

はあ?!

そういう大事なことは先に言えよ!

世界一かわいい♡モブ子♡高本くん好きぴ♡

だからごめんってば〜

世界一かわいい♡モブ子♡高本くん好きぴ♡

ね?今度なんかおごるから!

知らねぇよ!しばらく話しかけてくんな!

くっそ…

どうする、このまま変えるのもなんか悔しいしな。

適当にぶらつくか

ま、とりあえず、飲み物でも買って…

俺が温かい飲料を買おうとしたときだった。

香澄

樹くん…?

懐かしい声が響く。

あ、さの…!

香澄

久しぶりだね。

香澄

元気?

お、おう

そっちは?

香澄

うん、もうバリバリ元気。

明るく言ってみせる浅野に、申し訳ない気持ちが募っていく。

浅野…俺、あのときは…

俺の謝罪を遮って、浅野が言葉を発した。

香澄

いいんだよ、樹くん。私が悪かったんだから。

香澄

気にしないで。

浅野が笑った瞬間、イルミネーションが付いた。

香澄

うわぁ、きれい…

この遊園地でイルミネーションを見た二人は、必ず結ばれる。

今なら、言える気がした。

浅野!俺、ずっと浅野が好きだった!

もしよかったら、付き合ってください!

香澄

香澄

樹くん…

香澄

私、知ってると思うけど、我儘だよ?

それも含めて好きなんだ。

香澄

すぐに怒るし

怒った顔もかわいい

香澄

まだ私、北海道に住んでるんだよ…?

それでも構わない!

恥ずかしさで顔が赤くなる。

でも不思議と、言葉はスラスラ出てきた。

遠距離で構わない!浅野を、必ず幸せにすると約束する!

だから…

…返事がない。

あ、振られるんだな、と思ったが。

俺は彼女を紹介してくれたあいつに、感謝すべきだろう。

そうそう、約束すっぽかしたあいつにも。

香澄

…っ

香澄

…や、やっと…言ってくれた…

香澄

ずっと、待ってたんだから…!

ってことは…!

俺は期待の気持ちを込めて顔を上げる。

香澄

こんな私で良ければ!

…浅野だからいいんだ!

感極まって浅野を抱きしめる。

周りから拍手と歓声が起こった。

香澄

い、樹くん、苦しいよ…

あ、ご、ごめん

ぱっと離れる。

香澄

香澄

また明日の便で、帰ることになってるの

う、うん

香澄

それまで

離れた俺の手を、浅野が握りしめる。

香澄

…一緒に居てくれるよね?

…っ!

も、ももももちろん!

香澄

あはっ、樹くん、噛み過ぎ!

あぁ、神様。

世の中捨てたもんじゃ無いですね。

もし俺に不幸せなことが起こったとしても

きっと彼女は可愛い。

ほら、浅野が俺を見てる。

浅野からは、あの日と同じ、ほのかな香水の香りがした。

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