根本耕作
R出版に勤務する写真家兼編集者の根本は、石野編集長のデスクに向かうなり言った。
石野隆宏
根本耕作
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根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本耕作
石野隆宏
石野隆宏
石野隆宏
根本耕作
その日の夜、根本は交際中の江川久美子と一緒に夕食を摂り、
その席でも新しい写真集の話題に触れた。
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本耕作
江川久美子
江川久美子
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本耕作
江川久美子
根本と久美子は半年前まで、お互い写真家とそのファンという立場だった。
根本が発表した写真集の著者プロフィールに載った彼の写真を見た久美子が一目惚れし、
ファンレターを受け取った根本が好意で面会したのが交際に至った経緯だった。
が、本格的な交際へと発展し、そろそろ彼女の具体的な情報も知りたくなっていた。
江川久美子はしがないOLを自称しているが、
ファンとして一途な姿勢を彼女が見せるだけで根本は満足だった。
お金持ちの実家で妹と暮らしているという、
簡単な情報のみしか知らない恋人という立場とはもうおさらばだ。
根本耕作
躍起になった根本は、翌日から取材旅行に出向いた。
候補リストに載せた廃墟の場所は既に特定済みなので、
無意味にうろうろと動き回る心配はなかった。
中学生の頃から廃墟の虜になっていた根本にとって、
廃墟写真家という職業はまさに理想的な肩書だった。
人一倍の冒険心も加わって、根本は地元の廃墟を徹底的に探索した。
無論、当時は廃墟という異質な建造物を探索することで味わうスリルを堪能していただけだが、
今回は交際相手との距離がより縮まる可能性が高いため、
持ち前の冒険心がより激しくくすぐられていた。
3ヶ月後、根本の努力が結実した。
石野隆宏
石野隆宏
根本耕作
石野隆宏
石野隆宏
石野隆宏
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本耕作
石野隆宏
石野隆宏
石野隆宏
石野は片手を上げ、グイっと仰ぐ仕草をして見せた。
根本耕作
照れ臭そうに断った根本の本命も彼の成功を心から喜んだ。
3ヶ月前と同じ店で、根本と久美子はお互いのグラスで乾杯した。
久美子の艶やかな頬が店の照明に反射して輝いており、
唇は真紅に染まっているなど無遠慮におめかしの跡を残していた。
江川久美子
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
江川久美子は少し戸惑った様子だったが、少しの間があってから了承した。
恋を成就したい気持ちもあるが、根っからの廃墟愛好家の根本がどうしても成し遂げたい事柄だった。
翌日、根本が向かったのは隣県の広大な自然に構える巨大な屋敷だった。
取材当時、悪天候が理由で後回しにしたものの写真集が完成したため、
結局探索せずに終わってしまった廃墟だった。
根本は仕事とは関係なく、学生時代に沸き上がった探求心を抱きながらカメラ片手に中へ入った。
壁のあちこちに穴が開いており、人為的なものから自然的なものが原因と判断出来るほど特徴的な穴だった。
それらの穴から漏れる陽光が暗闇の一部一部を照らしている。
根本は夢中でカメラのフラッシュを焚きながら歩を進めた。
突然、ポケットに入れていた携帯電話が鳴り出した。
根本は一瞬ドキッとしたが、気を取り直して電話に出た。
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本は穏やかな口調で言ったが、内心では気分をぶち壊されてムッとしていた。
江川久美子
根本耕作
江川久美子
受話器越しに久美子が声を張り上げた。
あまりに大きな声だったので根本は静寂に包まれた暗闇にまで、久美子の叫び声が響いたような気がした。
仕方なく「聞くよ」と言い、根本は肩と頬に携帯を挟んでからカメラを持ち直した。
江川久美子
江川久美子
根本耕作
根本は適当に相槌を打ちながらシャッターを切っていた。
江川久美子
江川久美子
江川久美子
江川久美子
根本耕作
根本は無意識に他人事みたいな言い方をした。
しかし、久美子は気にすることなく続ける。
江川久美子
江川久美子
江川久美子
久美子は淡々と語るが、
カメラを握る手に力を入れた根本には聞こえなかったも同然であった。
江川久美子
江川久美子
江川久美子
江川久美子
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
江川久美子
根本耕作
江川久美子
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
根本はいつの間にかカメラから手を放し、携帯を握る手に力を入れていた。
江川久美子
根本耕作
江川久美子
江川久美子
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本は険しい目で内部を見回した。
外から風に吹かれて揺れる木の葉の音が聞こえる。
ふと、根本はある疑問に辿り着いた。
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
江川久美子
江川久美子
根本耕作
根本耕作
江川久美子
根本耕作
根本耕作
根本耕作
江川久美子
江川久美子
根本耕作
根本耕作
江川久美子
ここで、通話は一方的に切られてしまった。
根本が訝しげに携帯をポケットに納めた直後、奥の暗闇から物音がした。
根本はドキッとしたが、少し歩を進めてカメラを構えた。
まさかと思い連続でシャッターを切り、フラッシュを焚く。
誰かがいた。
ボロボロの布切れをまとい、瓦礫の床を歩く素足は破片で切ったのだろう出血し、血の足跡が残っている。
頬は汚れ、高貴な生まれを強調していた目の輝きは衰え、血の気の失せた顔色を浮かべた蒼白の女。
根本は愕然とした。
女はかつての箱入り娘、江川久美子だった。
2020.01.30 作
コメント
1件
「廃墟マニア」って、珍しい設定ですね! ラストの切なさと地の文の上手さに惹き付けられました(*´꒳`*)