大西流星
スゥー。
ライブの時と同じぐらい ドキドキしてる心臓を落ち着けるため、 僕は大きく息を吸い込んだ。
大西流星
高橋恭平
恭平は、すごく悲しそうな、苦しそうな表情をしとった。 ごめんな、恭平。 今、1番傷付いとるのは、 きっと恭平やんな。
大西流星
考えた末に、 大ちゃんとの別れを選択しこと。 他にも、色々な想いを、 恭平は全部受け止めてくれた。 自分の辛い気持ちを押し殺して、 大丈夫やって、苦しかったなって、 僕に寄り添ってくれた。
大西流星
高橋恭平
恭平も、僕も。涙が止まらへんかった。 あの日、お医者さんに告げられた 余命が、病名が、頭から離れんくて…。 皆んなに伝えることも、 相談することもできひんかった。 話したら、僕は今までと同じようには いられへんくなると思ってた。 病人扱いされて、皆と同じことが できなくなることがほんまに嫌やった。 なにわ男子が大好きだからこそ、 現状を受け入れることができなかった。
恭平を追いかけてきた俺は、 流星の衝撃的な告白を 耳にしてしまった。 流星と恭平が抱き合いながら 泣いている姿を見て、 俺は何もできひんかった。
大橋和也
今なら、2人は俺に気づいてへん。 ここで俺が出るのは間違ってる。 だから、俺はその場を立ち去った。
大橋和也
何故だろう。 俺まで、涙が止まらへん。 早く、みんなのところへ戻らへんと。 丈くんや大ちゃん、みっちーと謙杜も きっと心配しとる。
俺は何も知らないふりをして、 4人の元へ走った。
大橋和也
できるだけ、いつもの俺と同じ顔で。 声でいられていますように。 そう願いながら、皆んなに手を振った。
俺に秘密を吐き出した流星の拳は、 今も小さく震えとる。 可愛い顔も、涙でぐしゃぐしゃになって いて、いつものりゅちぇじゃないみたいやった。
高橋恭平
今にも消えてしまいそうな りゅちぇを優しく抱きしめて、 漆黒の柔らかな髪を撫でる。
大西流星
細い腕で、 俺の背に手を回したりゅちぇは、 昔より一回り小さくなったような 気がした。
高橋恭平
大西流星
高橋恭平
普段は口数の多くない恭平が、 こんなに自分の意見を口にするのは 珍しいことやった。 それだけ、僕のことを思って 言ってくれている言葉だと思うと、 なんだかくすぐったいような、 不思議な気分やった。
だからかな。 今日まで悩んでいたことが嘘みたいに、 心が決まった。
大西流星
高橋恭平
少し驚いたような表情をして、 恭平はにっこりと微笑んだ。 でも、その笑顔があまりにも綺麗で、 僕は思ってしまった。
夕陽に照らされながら 微笑むこの顔も、 恭平の優しさも。 全部、いつか忘れてしまうんや、 ってこと。
大橋和也
大橋が戻ってくるまで、大体10分。 おかしい。
2人を見失ったのなら、もっと早く ここへ帰ってくるはずや。
でも…。
藤原丈一郎
俺は気づかないフリをした。 長年大橋と一緒におる俺の勘が、 今は大橋に乗るべきやってゆうとる 気がしたから。
長尾謙杜
道枝駿佑
みっちーと謙杜は何も言わへんかった。 きっと、何かしらの 違和感があったんやと思う。 でも、2人とも言葉を飲み込んだ。 嘘が下手な大橋の 精一杯の笑顔を見て、 何か感じ取ったのかもしれへん。
今は、何も言ったらあかん、 ゆうことを。
珍しい、恭平からの長文のメッセージ。 なんだか、嫌な予感がした。 でも、恭平が。 流星が戻ってくるのなら、 その言葉を信じよう。 そう思った。
藤原丈一郎
長尾謙杜
事務所に着いて、 どのくらい時間がたっただろう。 重い空気の中、謙杜が口を開いた。
大橋和也
大橋が、謙杜の座っていた ソファに腰掛け、 優しく肩を抱いた。
西畑大吾
道枝駿佑
大吾はあれから黙ったまま、 ずっと一点を見つめている。 そんな大吾をずっと 気にしているみっちーも、 少し顔色が悪かった。
皆んな、待ってんで。 流星、恭平。 早く戻ってこい。
藤原丈一郎
俺たち全員の願いが通じたのか、 わずか数分後。
コンコン。
重い、ノックの音が響いた。
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