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第1話 - 短編集「黒百合の集い」

2022年08月11日

#ファンタジー

#ダーク

#コメディ

#猟奇的

雨晒しの原稿用紙ー雨原零

#0 KAITOU SIZEN

警官

来たな！

警官

怪盗私善！

KAITOU SIZEN

怪盗私善じゃないわ。

KAITOU SIZEN

自然解凍よ！

警官

ネーミング、ダジャレ？

警官

弱そうな怪盗だな。

KAITOU SIZEN

さあ、この美術館の
噂の壁画はいただくわ。

KAITOU SIZEN

それじゃあまたねー。

警官

逃すな！

警官

待て！

警官

なんだあれ。

警官

人技じゃねえ……

警官

力を反射させながら
壁を登るなんて。

警官

だが。

警官

向こうの作戦は
分かっていた。
対策済みだ。

警官

一同、この部屋に
鍵をかけろ！

KAITOU SIZEN

ちっ……

KAITOU SIZEN

でもこんな木造小屋
燃えるわよ！

KAITOU SIZEN

ファイアストーム！

警官

も、燃えただと。

KAITOU SIZEN

ほらほら、
命は惜しくないの？

KAITOU SIZEN

早くここから出ません？
ほらほら！

KAITOU SIZEN

鍵開けないとみーんな
一酸化炭素中毒で
巻き添えよ？

警官

うっ……

警官

自然解凍！どこにいる。

KAITOU SIZEN

ふぅ、死んだかと思った。

KAITOU SIZEN

やっぱ怪盗なんて
命が危険ね。

KAITOU SIZEN

もう怪盗なんてやめるわ。
仮面も取るわ。

KAITOU SIZEN

全部捨てる。

リリア

そして私は
地に足つけて暮らすの。

#1 出会いは無慈悲なり

ミラージュ

ああ、今日も暇だ。

ミラージュ

気だるいねぇ。

ミラージュ

人間の肉でも
干そうかな。

ミラージュ

干物日和だねぇ

リリア

弱ったわ……

リリア

まさか逃げている途中に
森に迷い込むだなんて。

男

待てぇぇえ！

リリア

うわぁああ！

男

スイカ泥棒ぅ！

リリア

すみませぇん。

リリア

すみませぇええん！

男

待てぇええ！

男

スイカ泥棒！
警察に行くぞ。

リリア

離して！

男

お前が泥棒するからだろ！

リリア

だって！だって！

リリア

人から物を
盗まないと暮らして
いけないんだもの……

男

関係ないだろ。

男

罪は償え！

リリア

う……

リリア

わかってるわ。

リリア

（あたしも
　落ちぶれたものね）

リリア

（仕方ない、罪は
　潔く認めよう）

リリア

署までついていく。

リリア

ねえ、まだ歩くの？

男

お前がすばしっこく
こんな奥まで
逃げるからだろ。

リリア

お願い、
やっぱり許して。

男

ダメだ、
スイカ泥棒。

リリア

その呼び名、
どうにかならない？

男

スイカ泥棒以外に
お前をどう呼ぶんだよ。

男

ほらいくぞ。

リリア

私にはリリアっていう
名前が……

男

スイカ泥棒、
交番までもう少しだ。

リリア

広い通りに出たわね。

男

署もすぐそこだ。

リリア

ふぅ……

リリア

ありがと、
おかげで森から出れたわ。

男

牢獄からは
出れなくなるがな。

リリア

それはどうかしら。

リリア

忍法・透明の術！

男

うわ、逃げやがったな！

男

待て！

男

ん？どこだ。

男

普通に考えて森の逆方向に
行ったはずだ！

リリア

（馬鹿ね、そう思うことは
　読んでいる。）

男

透明になっただけで
実際には
そこらへんにいるんだろ、
待て！

リリア

はいはい巻きましたっと。

リリア

さすがは自然解凍様。

リリア

う……

リリア

また迷ったよぉ。

リリア

やっぱ私馬鹿ね……

リリア

あ。でも向こうに
家が見えるわ。
ラッキー。

リリア

あそこに忍び込んで
何か盗もうかしら。

ミラージュ

ふんふふーん。

ミラージュ

楽しいご飯♪

ミラージュ

楽しいご飯っと。

ミラージュ

今日のメニューは
狩人の煮物♪

バリリリリ！

ミラージュ

ま、窓ガラスが割れた……

リリア

しまった！

ミラージュ

うわああぁ！
その窓ガラスは
一枚12万するんだぞ！

ミラージュ

待て泥棒！

リリア

うわぁぁ！

リリア

ごめんなさーい！

リリア

許してください！

ミラージュ

そういうことだったのか。

リリア

はい……

リリア

泥棒しようとしたこと
誤ります。

リリア

でもお金がなくて、
暮らしていけなくて……

ミラージュ

向こうにね、
森に迷った人たちの
シェアハウスがあるんだ。

ミラージュ

そこで暮らしたらどうかね。

リリア

家賃は一人いくら？

ミラージュ

タダだよ。

ミラージュ

タダ、
生活は楽じゃないね
なんちゃって。

リリア

魔女さんは
そこには行かないの？

ミラージュ

誰が魔女だ。

ミラージュ

私はマッド
サイエンティストにして
高逸なる
カニバリズム主義者……

リリア

かたかなばっかで
分かんない。

リリア

ありがとね
魔女さん。

ミラージュ

魔女じゃない！

リリア

じゃあ貴方の名前は？

ミラージュ

ミラージュだ。

リリア

じゃあね、
悪魔女さん。

ミラージュ

だーかーら！

リリア

ここがシェアハウス……

ビシア

おう。

ビシア

ミラージュから
話は聞いてるぜ。

リリア

あなたはだあれ？

ビシア

俺はビシア。

ビシア

お前は？

リリア

リリア。

リリア

貴方も道に迷って
ここに
住むことになったの？

ビシア

迷ってないぜ

ビシア

ま、ま、迷うわけないだろ
俺がこんなとこで。

リリア

迷ったのね。

ビシア

迷うわけねえだろ！

キララ

ビシアってば
来訪者とすぐ
喧嘩するんだから
呆れちゃう。

ビシア

おい、喧嘩なんか
してねえよ。

キララ

ねえ、新入りの子、
名前教えて？

リリア

私はリリア。

キララ

リリアさんですか、
可愛い名前ですね！

キララ

キララっていいます。
よろしくね！

ビシア

俺はビシア。
これよろ。

キララ

あ、
これよろってのは、

リリア

これからよろしくね、
でしょ？

リリア

分かるわよ。

キララ

へー！リリアさん
分かるんだ！

キララ

キララはビシアの言葉
全くわからないんだー。

ビシア

こいつは間抜けな
アホだからな。

キララ

そこまで言わなくたって
いいじゃんか。

ビシア

ま、ミミアちゃん、
案内してやっから
ついてこいや。

リリア

リリアです。

リリア

（あんたも間抜けな
　アホじゃないのっ！）

キララ

ここが君の部屋！

キララ

女の子らしくて
素敵でしょ！

リリア

まあ！可愛いわね。

キララ

キララが用意したんだよ！

リリア

ありがとう。キララさん。

キララ

キララでいいよ。

リリア

ええ、キララ。

ビシア

リンリンやらギラギラやら、
名前がよう分からんな。

リリア

ギラギラって、
なんかの曲じゃないの

キララ

パンダの名前かよ！

キララ

リリアとキララです！

キララ

なんかパリピみたいな
あだ名つけないで！

ビシア

じゃ、今日から
キララのことはパリピって
呼ぶから。

キララ

やめてくださいよ。
誤解招くから。

ミラージュ

あぁ、今日も優雅な
僕のディナーのお時間が
終わってしまったよ。

ミラージュ

狩人よ、
来世に幸せの
あらんことを……

ミラージュ

あーあ。
お腹すいたな。

ミラージュ

まだまだ食べたいなぁ。

ミラージュ

どうせゴミ術師は
生ゴミと下水の方が
お似合いなんだよあぁ！

ミラージュ

どうせ僕はヴァロ君とは
違うんだよなぁ……

ミラージュ

あぁ……虚しい

ミラージュ

キララ

今日のご飯は何かな♪

ビシア

なんだろな♪

リリア

あれ？

リリア

キララさんと
ビシアさんが
お作りになるんじゃ
ないのですか？

ビシア

え？

ビシア

新入り、
お前が作るんだろ？

リリア

いやいやいや。

リリア

聞いてませんよ。

ビシア

ってのは冗談で

ビシア

悪魔女ミラージュが
いつも持ってきて
くれるんだぜ！

ミラージュ

誰が悪魔女だい？

ビシア

うわぁ！

ビシア

すんません、すんません
すんません！

ミラージュ

ビシア君、
鍋で煮込んであげようか？

ビシア

ははははは

ビシア

冗談っすよ。

ビシア

いやぁ、ミラージュ様、
今日もお美しいな……

ビシア

ははははは……

ミラージュ

はぁ……
ビシア君は本当に。

キララ

ミラージュ様！
今日のご飯は？

ミラージュ

牛肉のワライダケ和え。

キララ

絶対危ないじゃん！

ビシア

俺は食わんからな絶対に！

ミラージュ

リリア君は…………？

リリア

いえいえいえ、
絶対食べませんよ！

リリア

そんな期待に満ちた
目で見られても！

ミラージュ

そっかぁ……

ミラージュ

笑い死ねるなんて
幸せだと思うけどな……

キララ

笑うのは楽しいけど
それで死にたくはない。

ビシア

キララ！よく言った！

リリア

その通りですね。

リリア

人に自分の幸せを
押し付けないでください。

ビシア

そうだそうだ！

キララ

うんうん！

ミラージュ

……あ、あのさ、
誤解してるらしいけど……

リリア

はい？

キララ

ごかい？

ミラージュ

ブラックジョークだからね
普通に。

ビシア

あ、ああ。

キララ

いつものやつか。

ミラージュ

う……なんか
悲しくなってきた……

ミラージュ

どうせゴミ術師は
ウケも狙えないんだよ。

リリア

大丈夫ですよ！

リリア

センスが悪いだけです！

ビシア

リリア、それ
言ったらダメなやつ。

キララ

キララもそう思う……

ミラージュ

そうか、そうだよな。

ミラージュ

何やっても
失敗ばかり……

ミラージュ

だったら息絶えればいい。

リリア

み、ミラージュさん？

ビシア

ネガティブ野郎め。

キララ

こうなると
めんどくさいよねー。

ミラージュ

まあいいや。

ミラージュ

どうせゴミ術師は
消えることも
できないからね。

リリア

まあお可哀想

ビシア

……ぼそ
煽んなよリリア

キララ

火に油を注いでるよ！

#2 女の勘を信じろ！

ビシア

はぁ。リリアのせいで
ご飯食うだけでも
疲れちまった。

ビシア

あの後の夕飯中に
リリアが煽るせいで
ミラージュは
首吊りの話始めちまうし

ビシア

雰囲気激悪

ビシア

な、キララ。

キララ

いや、キララは
リリアさんの言う通りだと
思います。

キララ

確かにあの悪魔女に
頼っていても
キララたちは成長できない。

ビシア

でも夕食中に
言わなくてもいいだろ。

キララ

そうですかね。

キララ

あの悪魔女は
悪い奴ってのは本当だし。

キララ

あとビシアさん。

ビシア

なんだ？

キララ

……夜中こっそり、
出掛けてますよね？

ビシア

あ？

キララ

まさかあの悪魔女に
何か手を貸してるんじゃ。

ビシア

そんなことねえよ！

ビシア

トイレだよ！トイレ！

キララ

ビシアさんも歳ですかね
おトイレが近いなんて

ビシア

トイレは遠いよ！
いっつも結構歩くだろ！

キララ

その近いじゃないです。

キララ

キララついていきますよ？

ビシア

キララ、女子トイレは
立ち入り禁止だぞ。

ビシア

お前はあれか、
変態か。

キララ

虫のことですか？

ビシア

それ完全変態。
ちょうちょうとかが
さなぎにはいって
変身するやつな。

キララ

へー！ビシアさん
物知りぃー。

ビシア

だがキララ。

ビシア

リリアには気をつけろ。
あいつからは、
嫌なにおいがする。

キララ

そんなことないですよ！

#3 秘密のディナーショー

ビシア

やるなミラージュ。
ここに呼び出すとは。

ビシア

なんかよからぬことを
目論んでいるのではないか？

ミラージュ

誤解を招く言い方を
しないでくれよ。

ミラージュ

キララを振り切るための
作戦を考えて、
結果的にここしか
集まれなかったんじゃ
ないか。

ビシア

そうだな。

ミラージュ

あ、ビシア。

ミラージュ

水素水とスムージー
どっちがいい？

ビシア

お前は美意識高いな。

ミラージュ

そうかい？

ミラージュ

ビシアこそもう少し
美意識を持っても
いいんじゃないか？

ビシア

俺は、今の俺が好きだ。

ビシア

ネガティブ野郎とは
違うんだぜ。

ビシア

まあ早く、今日の
おディナーを見せてくれ。

ビシア

腹減った

ミラージュ

ビシア、
大食いを隠しても
いいことはないぞ。

ビシア

だってー
ビシア女の子だからぁ

ミラージュ

……ぼそっ
ちょっと気持ち悪いヤメロ

ビシア

うっ……なんだ。これ。

ミラージュ

狩人の残骸。

ビシア

昨日は美味いウイスキーと
つまみだったろ……

ミラージュ

ふふ、怖いのかな？

ビシア

こ、怖くなんて！

ミラージュ

ああ、ビシアも
こんな表情見せるんだね。

ミラージュ

君なら信用できると
信じていたんだが

ミラージュ

まあ、帰るなら帰れば？

ミラージュ

悪夢を見そうで怖いなら
リリアちゃんの部屋に
行けばいいんじゃない？

ビシア

べ、別怖くねえし

ビシア

あんな小娘
信用できるかって！

ミラージュ

信用できないの？

ビシア

無理無理！

ビシア

あいつ怖い！

ミラージュ

（ふふ、本音を吐いたな
　管理人はうまいこと
　利害調整を
　しなければならない）

ミラージュ

（ビシアが今
　何を思っているか
　彼女の心の叫びに
　耳を傾けるんだ）

ミラージュ

じゃあシェアハウス出て
真っ当な暮らしすれば？

ビシア

無理無理。

ビシア

なあミラージュ。
ここで
居候させてくれよー。

ミラージュ

はぁ？やだよ。

ミラージュ

だれが小娘の
世話なんかするか。

ミラージュ

（第一この部屋に
　居座られては
　色々と誤解が……）

ビシア

そこまで言うなよー。

ビシア

そんなんだから
弟のヴァロに
敵わないんだぜ。

ミラージュ

うっ……

ミラージュ

……なんだって？

ビシア

いや、何も……

ミラージュ

まあ、何かあれば
逃げてきなよ。

ミラージュ

その時は君にも
リリアさんにも……

ミラージュ

げんこつでもしようかな。

ビシア

（こいつ今、
　なんと言いかけた？）

ビシア

子供じゃねえんだからよ

ビシア

ていうか
俺にもするのかよ。

#4　所詮子供の遊びよ

リリア

今日はお散歩日和だな♪

ビシア

どうだリリア。
外の景色は。

リリア

最高です！

キララ

楽しいねー。

キララ

リリアさん、
向こうに
秘密基地あるんだよ！

リリア

え！本当？

ビシア

リリア、少しキララの遊びに
付き合ってやれ。

キララ

えー。

キララ

ビシアも行こうよ！

ビシア

しゃあねえな。

キララ

ほら二人とも、
早く早く！

キララ

ほらここ！

キララ

はやくはやく！

ビシア

お化けが出そうだなぁ。

キララ

うう、そんなこと
いわないで。

ビシア

わ！

キララ

うわぁぁ！

キララ

脅かさないでよ
ビシア！

リリア

ビシアさん、
趣味悪いですよ。

ビシア

そうか？

ビシア

俺は結構普通だぜ、
ドリアン。

リリア

リリアです。

キララ

ドリアン……臭そう。

リリア

リリアです！

ビシア

よしリリア、
お前のあだ名を
フランと名付けよう。

ビシア

カレーでもいいが。

リリア

カレーってなによ。

リリア

可愛いからフランで。

ビシア

おいフラン衆！

リリア

あの……フランとは
呼んでいいと言いましたが
腐卵臭とは呼んだら
許しませんよ……

ビシア

誰も腐卵臭なんて
言ってねえ！

ビシア

フラン衆だよ！

キララ

読み方一緒なんだよなぁ。

キララ

あれ？カレーって
言ってたら……
カレー臭……

ビシア

二人とも。

ビシア

もっと奥に
行ってみようぜ！

#5 おくりもの

ビシア

すげえ！

キララ

滝につながってるなんて！

リリア

清流ね。

ビシア

二人とも、飛び込もうぜ！

キララ

うん！

ビシア

リリア、
行かねえのか？

ビシア

キララ、
行っちまったぜ？

リリア

いいんです。

ビシア

あ、そっか……

ビシア

じゃ、先行くぜ！

ビシア

こりゃたまげたな。

ビシア

都会生まれ都会育ちの
俺からしたら、
こんなキラキラした水
初めて見たぜ！

キララ

キラキラじゃなくて
キララだよ。

ビシア

お前のこと言ってねえよ。

ビシア

キララ！
あっちに綺麗な花が
咲いてるぜ！

キララ

うわぁ、本当だ！

ビシア

おいキララ、
どこ行くんだ。

キララ

あの花とって、
リリアさんにあげるんだ！

キララ

なんか喜びそうだし。

ビシア

そうか？

ビシア

あいつは金が欲しそうな
がめつそうな
顔してるがな。

ビシア

花なんて欲しがらねえ
きったねえ醜い心が
丸見えだぜ！

キララ

そうかな。

キララ

リリアさん、
喜びそうじゃん！

キララ

絶対……

ビシア

絶対彼女はナイーブだよ！

ビシア

だろ？

キララ

うっ……

キララ

何で分かった。

ビシア

リリアちゃんが
そんなに気に入ったか。

キララ

そんなんじゃ
ないけど……

ビシア

そんなんなんだな。
OK、キララ。

キララ

違います。

ビシア

ま、そうなら
この俺様が一肌脱いで
とってきてやるよ。

ビシア

そしてお前は
こう言うんだ。

ビシア

キララがリリアしゃんの
ためにとってきて
あげたんだよぉ〜

ビシア

ってな。

キララ

馬鹿にしないで。
そんな赤ちゃん言葉じゃ
ないもん。

キララ

それにもっと
丁寧に言うよ！

ビシア

おビシア君から
おフラン衆殿へ
おプレゼントで
ございます。
おどうぞご納めください。

ビシア

これでどうだ。

キララ

フラン衆とか言ったら
嫌われるよ。

キララ

「お」もつけまくれば
いいわけじゃないし、

キララ

それじゃビシアから
リリアさん宛に
なっちゃうじゃんか。

ビシア

そうか？

ビシア

いいと思うけどな。

ビシア

ま！取ってこいよ。

ビシア

少し奥の方にあるが、
お前一人で行ってこい！

キララ

結構入り組んでるな……

キララ

うわ！木の上に蛇だ。

キララ

しゃがんで隠れないと。

キララ

なんとかやり過ごした……

キララ

でもなんか痛いや……

キララ

うわ、葉っぱで手を
切っちゃってる。

キララ

枝もちくちく刺さって
すごく痛いし……

キララ

でももう少し。
頑張ろ。

キララ

あ！あの花だ！

キララ

手が、届かない。

キララ

やっぱり木を登るしか
ないのかな……

キララ

よいしょっと。

キララ

よし、手に入れた！

キララ

うわぁぁあ！

ドシン

キララ

落ちちゃった……いてて。

#6 少女と屑

ミラージュ

やあリリア。

リリア

あ、悪魔女さん？

ミラージュ

ミラージュだよ。

ミラージュ

私は魔女じゃない。
あえて言うなれば
魔男……

ミラージュ

せめてウィザードと
呼んでくれよ。

リリア

はい！
ハザードさん！

ミラージュ

ビシアの悪い癖が
うつったんじゃない？

リリア

すみませーん。

リリア

で、何の話ですか。

ミラージュ

最近の暮らしはどうだい？

リリア

まあ、ビシアさん以外は
素敵ですよ。

リリア

キララさんも
とっても優しくてですね。

ミラージュ

それならよかった。

ミラージュ

管理人としては
すごく嬉しいよ。

ミラージュ

まあ、ダメダメな
管理人だけどね。

リリア

ハザードさんの
そのネガティヴと
いいますか、卑劣な
考え方といいますか

リリア

どうにかなりませんか？

リリア

いつから
そうなったのです？

リリア

どうすればそんな
"ゴミ屑"のように
なれるのです？

ミラージュ

さあ。

リリア

何か悪いことでも
あったのです？

ミラージュ

そうだねえ。

ミラージュ

牢に僕をぶち込んだ
無慈悲な男のことなら
覚えているけどね。

ミラージュ

そいつはヴァロと言ってね
弟なんだよ。

ミラージュ

僕らは皇子なんだけどさ
彼の方が優秀で。

ミラージュ

炎魔法使っても、
彼は山火事
起こすレベルなのに

ミラージュ

僕はマッチに
火をつけるのが限界さ。

ミラージュ

即位するのは第一皇子の
僕だけどさ、
でもヴァロを他の人は
即位させたいだろ？

ミラージュ

そのために
幽閉されたのさ。

リリア

そうなんですか。

リリア

どうっでもいいですね。

リリア

同情してもらえるとでも
思われてましたか？

ミラージュ

リリア、君はあれだね。
冷酷だね。

リリア

もっとビシアさんとか
キララとか。

リリア

話す人選んだらどうです？

ミラージュ

……

ミラージュ

ファイアストーム。

リリア

弱いですね。

リリア

本当にマッチに火も
つけれるのかしら？

リリア

ストーム！

途端木々がみしみしと音を立て始める

ミラージュ

強い……

リリア

いいえ、
あなたが弱いのよ？

リリア

正解です。

リリア

あなたはゴミ術師よ。

ミラージュ

だろ？

ミラージュ

正解だろ？

リリア

ええ、"ゴミ術師"。

ミラージュ

ただ……

ミラージュ

一度話して、
みたかっただけなのさ……

リリア

同情して、
もらいたいのですか？

ミラージュ

同情なんぞ、
求めていない

ミラージュ

でも。

ミラージュ

人に死をもたらせるような
強い術師になりたい。

リリア

はは、無理ですよ。

リリア

あなたは"ゴミ術師"です。

リリア

諦めるのですね。

ミラージュ

……分かってるさ

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