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伍代

……どうしたんだよ?

伍代

殺すならさっさと殺せよ。

七星が勝利を収め、元の世界へと戻ってくる。

しかし、残念なことにそこに六冥の姿はなかった。

七星

もちろん、望み通りに屠(ほふ)ってはやる。

七星

ただ、その前にいくつか聞きたいことがある。

伍代

……俺がそれに答えるとでも思うか?

七星

なにか勘違いしているようだが、ここは現実世界だ。

七星

やろうと思えば、貴様に拷問のひとつでもかけてやれるんだ。

七星

正直な話、六冥のことを殺した貴様は、今すぐにでも死んで詫びるべきだと思う。

七星

お望み通り犬死させてやってもいいが、どうする?

七星

態度によっては、命も助かるかもしれない。

伍代

……話してみろよ。

四ツ谷

ってか、負けた割になんでそんなに上から目線なんだよ。

一宮

四ツ谷、余計な口は挟まないほうがいい。

四ツ谷の呟きに近い一言に、七星の鋭い視線が向けられたのを、一宮は見逃さなかった。

四ツ谷

そ……そうみたいだな。姐さんって、静かにキレるタイプなのか。

現実に戻ってきた途端、六冥を亡くしてしまったという事実が目の前に突きつけられる。

それでも、まだ平静を一宮達が保っていられるのは、その代わりとばかりに七星が静かな怒りを露わにしているからなのかもしれない。

七星

貴様の目的はなんだ?

七星

単独でこんなことをやっているのか?

伍代

そんなわけねぇだろ。

一宮

仲間がいるってことか?

伍代

……仲間?

伍代

あれを仲間って呼ぶのかねぇ?

伍代

少なくとも、あんたらみたいな仲良しごっこじゃねぇよ。

七星

組織立って動いているということか?

伍代

まぁ、そうなるな。

伍代

俺達は【ストーリーテラー】によってひとつにまとめられた組織みたいなもんだ。

伍代

イメージとしては――そうだな、今流行りの闇バイトみたいなものを想像してもらえばいい。

一宮

闇バイト――その【ストーリーテラー】が指示役みたいな役割をしてるってことか?

伍代

その通り。

伍代

絵本の所有者はそれぞれ引き合わせられる――なんてことになっているらしいが、それを待っていたら日が暮れる。

伍代

だから【ストーリーテラー】が指示を出し、指示を受けた俺達が絵本の所有者を襲撃して絵本を奪うんだよ。

七星

やはり絵本が目的か?

一宮

でも、絵本は自ら次の持ち主を選ぶはず。

一宮

事実、伍代だって六冥の絵本の持ち主になって、なんだっけ……マルチとかになったじゃないか?

一宮

そもそも、所有者が決まっている絵本を売り捌いたりできるものなのか?

一宮

本人と同化してしまうわけだし。

伍代

――難しいことは分からねぇけどよ、この絵本はいわば女みたいなもんなんだよ。

伍代

ただ、ひたすらに1人の女と交際する男がいる一方で、何人もの女に手を出すやつもいる。

伍代

同化っていうか、絵本に選ばれたって状態は、言わば、その女に惚れられているようなもの。

伍代

でも、相手がいくら自分に惚れていても、結婚しなきゃいけないわけじゃないだろ?

伍代

こっちから一方的に振ることだってでるきわけだ。

伍代

例えば、俺がガキの絵本――【浦島太郎】を振って、他の男を紹介してやることも可能なんだよ。

七星がいきなり伍代の頬を引っ叩く。

七星

少々口が悪いな。言葉遣いに気をつけたほうがいい。

六冥のことをガキ呼ばりしたのが気に入らないのだろう。

七星

……続けろ。

七星に引っ叩かれた伍代は、頬をさすりながら続ける。

伍代

話を戻すけど、絵本は一方的に振ることもできるし、他の男を紹介してやることもできるわけだ。

伍代

次の男を紹介してやらないと、次の持ち主を求めて、本屋に戻るだけだかな。

七星

ほう、それはつまり貴様の【オオカミ少年】を、私に紹介してもらうこともできるわけだ。

伍代

……そうだよ。単純に譲渡を願えばいい。まぁ、その時点で俺は所有者じゃなくなるから、自然と捕縛権は破棄されるがな。

一宮

七星、ここまでの話を聞いた限り……いや、やっぱり判断は任せよう。

七星

一宮、私だって最善の判断をしたいと思っている。ただ、その前にもう少しだけ、こいつと話をしておきたい。

七星

もう少し待ってくれ。

七星はそう言うと、改めて伍代のほうへと視線をやる。

七星

その【ストーリーテラー】とは何者だ?

伍代

さぁな、どんなやつなのかは知らない。

伍代

ただ、俺は他の所有者に話を持ちかけられただけだよ。

伍代

絵本を奪うだけで、とんでもない額の金が転がり込んでくる――そんな話をされたら、誰だって食いつくだろ?

七星

その【ストーリーテラー】とは連絡がつくのか?

伍代

まぁ、連絡先は知ってるけど。

七星

その、他の所有者というのは?

伍代

あぁ、二ツ木(ふたつぎ)ってやつと九条(くじょう)ってやつがいる。

七星

その2人にも会わせろ。

七星

場合によっては、私達とやり合うことになるかもしれないが、その【ストーリーテラー】とやらの手足となって動いているのであれば、遅かれ早かれ衝突することはまぬがれまい。

七星はそこで言葉を切ると、小さくため息を漏らした。

七星

一宮、四ツ谷、どうやらこいつはまだ生かしておいたほうが良さそうだ。

七星

こいつから私が絵本を譲渡される形にしたい。

一宮

待ってくれ、もうひとつだけ聞いておきたいことがある。

七星は聞きたいことを全て聞いたようだったが、一宮にはまだ引っかかっていたことがあった。

一宮

伍代、俺達の回りで、物理的に所有者を殺して回ってるやつがいるんだが、なにか心当たりないか?

伍代

……絵本で殺せば、証拠もなしに所有者を殺せるのに、なんでわざわざ殺して回る必要があるんだよ?

伍代

そんな非効率的なことをするやつの話は聞いたことがない。

一宮

そうか……。

一宮

(まだ一概には決めつけられないけど、とりあえず【ストーリーテラー】と、三富や八橋を殺したやつは別で考えたほうが良さそうだ)

七星

さて伍代。

七星

本当ならば、貴様を八つ裂きにでもして、池の鯉の餌にでもしてやりたいんだが、どうやらそれは得策ではないらしい。

七星

それに、絵本を奪ってやったほうが、貴様としてはキツいんじゃないかと思ってな。

伍代

それをするくらいなら、殺して奪えばいいだろ?

七星

それをしたら、貴様が罪を償う時間も失うことになる。

七星

【ストーリーテラー】の指示に従って、金目的で絵本を奪おうとするようなやつだ。

七星

それができなくなれば、生活も困窮することだろう。

七星

地道に働いて、少しでも世の中に貢献するんだな。

七星

貴様のようなタイプは、そのほうが死ぬよりよほど苦痛だろ?

伍代

……くっそ。金持ちのお嬢様には分からねぇよ。

七星

貴様がどんな想いなのかなど、聞きたくもない。

七星

そうだ、ひとつだけやっておきたいことがある。

七星

伍代、今すぐその場で四つん這いになれ。

伍代

……は?

伍代

土下座でもしろってか?

伍代

あー、オーケー。

伍代

言っとくけど、俺の土下座は安いからな。

伍代

それでお前達が満足するなら、いくらでもやってやるよ。

そう言って膝をつき、地面に両手をついた伍代。

すかさず、伍代の頭を、その長い脚で踏みつける七星。

四ツ谷

あ、姐さん……。ちょっと目が怖いんだが。

四ツ谷の言葉など聞こえていないかのごとく、七星は続けた。

七星

いいか?

七星

貴様のような愚民が、この私に楯突いてタダで済むとは思うなよ?

七星

あくまでも利用価値があるから貴様を生かしてやるだけで、この先もずっと、私は六冥の件は許さない。

七星

一生、貴様のことを恨み続けてやる!

七星

いいな!

そう言いながら、伍代の頭を何度も踏みつける七星。

四ツ谷

これ、業界によってはご褒美なんじゃ……。

一宮

四ツ谷、ちょっとだけそっとしておいてやろう。

一宮は分かっていた。

それは彼女なりの誤魔化しかた。

伍代の頭を踏みつける彼女の頬から、一筋の涙が伝ったのは……あえて見なかった振りをした。

呪いの絵本 残り5冊

見知らぬ本屋と12冊の呪われた絵本

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