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コメント
8件
右大臣迷惑すぎないか??? そして白と赤優先する人よ、、、わかるけど自分たちの傷見なさいよ((((
まぁってましたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!✨✨✨✨ 今回もめっっっっちゃ最高でした!!!!!✨✨ ほんとに大好きすぎる作品なので最終回もとんでもなく楽しみです!!!
腹貫かれて生きてる桃も生かす水もすごすぎて……!!成長したねえ…!(誰目線) 左大臣が相変わらず、人間が犬猫に対してるような「こういう反応はこういう感情」と科学的に分析した感情(?)を人間に持っててどこか気持ち悪いなと思いました(作文)
いつもの倍あります!!! 冷静に考えて中編と後編に分けるべきだった(気づいた時にはもう遅い)
2ヶ月くらい投稿してない気がする... 量が多いので許してください😭
【前回までのあらすじ】 ついに魔王城に乗り込んだ魔王討伐軍。 強敵たちを倒し、魔王までの道のりは左大臣と右大臣、逃げた三大貴族の1人のみとなった。 負傷者が増加する中、毒使いが復活し勇者と合流。黒魔と武道家も合流し、それぞれの敵へ向かう。 狩人は助かるのか。黒魔が立て直した作戦は上手くいくのか。それぞれの思いが入り交じる中、人間側の奮闘は続く__
2025/08/22投稿
第70話
「人間vs魔族(後編)」
青
カチッ
青
冒険者たち
黄
青
まろが足を踏み出した先には何かトラップがあったらしい。 半径10mくらいの床が抜けた。
ただ強制的に戦いが始まるだけであって、なんら問題は無い。
黄
体が真っ逆さまに落ちていく中、目を閉じる。
誰も死なせない覚悟を決めた。
赤
紫
赤
初兎ちゃんの質問に笑って返す。 きっとりうらたちは迷子じゃない。というかそうであってくれ。
地図と再度にらめっこしてみるが、あきらかに想像してる場所と眼前の景色が違うのはどういうことだろうか。 何度確認しても変わらない現実である。
現在この勇者チームは22人。 人間側のほぼ半数を率いている状態で迷子はさすがに笑えない。
赤
通信用の魔法石を握りかけてやめる。 きっと今はないくんの治療に集中したいだろう。
紫
紫
赤
赤
紫
赤
紫
正気ですか勇者さん。
赤
赤
紫
こちらをガン見して提案される。 それはつまり、「りうらが魔法をぶっぱなせ」という意味だろう。
申し訳ないが、そういうのはりうらではなくまろとかの領分だ。 正直、Sランクになれたのは魔力ではなく技量だと思っている。つまりそんなに存在感のある魔法を出せる力は無い。
赤
紫
やはりこちらから探し出すしか方法は無い気がする。魔力に気づいたとしても、実際こちらに来るかは賭けになるし...
赤
赤
紫
赤
紫
紫
赤
紫
できたらとっくにしてた。なんで忘れてたんだろう。 広すぎるんだよこの城。
赤
精密に感知できるのはここまでだ。 その先もなんとなくはできるが、精度は落ちる。向こうが魔力を隠していれば、なかなか見つけられないだろう。
りうらの分身がいれば便利なのに...
赤
赤
紫
赤
そういえば....夏にみんなで旅してた時、街が火事になったっけ。 そのときにまろが消火してたよね。
たしか、街に広がった火すべてに自分の魔力を流して制限してた。
「絶対無理だ」って思ったけど、まろはやってた。しかもまだそのときはSランクじゃなかったはず。
赤
世界を救わなきゃいけないんだから、こんなところで立ち止まってはいられない。恩人との約束を果たさなければ、いつかその時がきても顔向けはできない。
赤
紫
赤
魔力は自分の一部だ。 完全に放出しなければ他人の魔力とは混じり合わない。 つまり、魔力同士が強く反発する部分を見つければいい。
赤
紫
量は無いから、薄く、広く、水のようなイメージで....
赤
帯びていた熱がスーッと引いていく感じがする。高ぶっていた魔力が体全体から出ていく。
何事も、少量を調節するのは難しい。 大きなポットからコップ一杯の水を注ぐのは簡単だが、1滴だけを注げと言われれば誰でも慎重になるし緊張する。
あまり放出しすぎると、それはもちろん魔力不足になってしまう。 今この瞬間も、体内の魔力はかなり減っている。
もうそろそろ城全体に行き渡ってくれないと、体が持たない。
赤
魔力が反発し合っているところを探す。
近くの冒険者の魔力。 これじゃない。
ゴブリンか何かの小さい魔力。 これでもない。
魔道具を動かすための魔法石の魔力。 これも違う。
どこかのチームの戦闘で飛び交う魔力。 今は気にする必要は無い。
人間のものらしき魔力。 ほとけっちか...?でも今は違う。
赤
城内が魔力で溢れすぎていて、片っ端から探すとキリがない。 もっと...もっと大きい魔力のはず。
赤
キツイ。もうそろそろ魔力を体内に戻さないと倒れる。 でも、これをもう一度できる確証は...
赤
...これか?
後ずさりしてしまいそうなほど大きくて、厳格で、荘厳な魔力。
魔王か...?いや、右大臣か。 ないくんの傷にかすかに残っていた魔力と異なるということは左大臣ではないし、魔王はきっとこの場所には居ない。
まるで尖った氷河みたいだ。 触れたら一瞬で凍りつきそうな。
赤
紫
あれ、見失った。
赤
紫
赤
でもよかった。 これでやっと魔力を体内に...
赤
違う。見失ったんじゃない。
すごいスピードでこっちに向かってきてる...!!!
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
抑揚の無い声に背筋が凍る。 目と鼻の先に、相手の顔があった。
悪魔のような爪と怪獣のように大きい手がこちらの首根っこを狙う。
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
初兎ちゃんの剣が鼻の先のスレスレを通る。その瞬間、血の匂いがかすった。
りうらを庇うように片膝を着く体制で間に入ってくれた。 あの不意打ちで瞬時に体が動いて、その上あの精度の太刀筋なのが本当にすごい。
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
再度、同じ質問をされる。 その声に抑揚は無い。
喉の奥が張り付いている。 さっきもし初兎ちゃんが咄嗟に動いてくれなければ、あの短剣のような爪が喉に刺さっていたのだ。 もしくは、喉を握り潰されていたかもしれない。
本当に喉を締められているような感覚がまだある。 苦しい。声が出ない。
足が震えて何も出来ない。 座り込んでしまいそうな恐怖。
赤
赤
声をうわずらせながら答える 目の前の膨大な魔力が怖い。右大臣でこれなら、魔王はどれだけなのだろうか。
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣がなんの感情も無さそうな視線を初兎ちゃんに送る。
初兎ちゃんの顔は強ばっていた。 当たり前だ。目の前の敵が今までの比じゃないことくらい誰でもわかる。 今までのどの敵よりも強者だ。
紫
紫
剣を突きつけながらそう言い放つ姿は、さすが勇者だと思う。 投げ出すことは絶対にしない男だ。 自分の使命に常に紳士で誠実。そんな人なのだ。
右大臣:ペルフェクトゥス
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
紫
向こうは挑発するつもりも無いのだろうが、勇者に対してこの仕打ちはひどい。 りうら的に、魔王側にとって1番厄介なのは勝てない相手も根性でどうにかしてしまう勇者の子だと思うけど。
紫
紫
紫
初兎ちゃんの声のトーンが下がる。 自分に話しかけられているわけでは無いのに、背筋がゾクッとした。
さっきもそうだった。 りうらが三大貴族にトドメを指したとき、初兎ちゃんは酷く軽蔑しているような目をして床に伏せているアイツを見ていた。
普段暖かい眼差しを向けてくれる初兎ちゃんばかり見ているから、冷たい目をした初兎ちゃんを見ると不安になる。 優しい人は怒ると怖い。
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
でも、こっちの視線のほうが怖いかも。 ほんとになんの感情も見えない。 まるでロボットみたいだ。
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
紫
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
ドォォォォ"ンッッッッ
冒険者たち
地震が起きたかのように足元がぐらつき、地響きのような音が鳴る。
地面の悪い乗合馬車みたいに、部屋の中で人間全員が転がされる。 シャンデリアも揺れ放題だ。
紫
部屋もなんだかミシミシと軋み始めていて、今にも壁と屋根が吹き飛びそう。 そんな壁に打ち付けられながら部屋の中を転げ回っていたが、10秒もすれば体はなんとなく慣れてきた。
赤
紫
赤
紫
ミシッ.....バコッッ__
紫
赤
屋根が全て吹き飛び、壁もひび割れて飛んでいった。 落ちないように全員床にしがみつく。
頭上に見えたのは、空だった。
あいつ、風を操って城の部屋ごと吹き飛ばしているのだ。
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
冷酷な目で俺と初兎ちゃんを見る。 さっきまでの感情の無い視線とは違った。明らかにこちらを軽蔑している。
宣戦布告だ。 さっきまでは無かった殺意を剥き出しにしている。そう肌で感じる。
赤
魔王側のブレインはあいつなのだろう。 資料にもそう記されていた。 役職名のように魔王の右腕のような奴だとないくんも言っていた。
紫
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
紫
右大臣の言葉を完全スルーして、初兎ちゃんが閃いたかのようにぽんっと手を打つ。
紫
紫
赤
赤
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
紫
初兎ちゃんがペルフェクトゥスに剣先を突きつける。勇者というのはカッコつけたがるタチなのだろうか。
紫
でもそれが最高にかっこいいのは、彼が本当にそれをやってのけるからだった。
水
作れた。魔法陣。 僕ってこんなすごいことできたんだ。
でも、ないちゃんが復活してくれるかどうかはわかんない。 実際に発動してみると何か問題があるかもしれないし、なにより、これは人類初めての魔法でないちゃんはその被験者第1号だから。
最悪、死んでしまったらどうしよう。 そうならないように保険の魔法はかけているけど、死ぬまでいかないとしても、重い後遺症が残る可能性は高い。
そうなったらないちゃんに申し訳が立たない。必死で連れてきてくれたいふくんにも、代わりに戦ってくれているみんなにも。
水
あぁ、手が震える。 鉛のように重い責任が、僕の肩にのしかかっている。
誰か、一言でいいから僕を後押しして欲しい。
「ほとけならできる」 「絶対大丈夫」 「俺らがついてるから」
そんな声が聞きたい。 そしたら僕は大丈夫だから。 安心して挑戦できるから。
水
水
手の震えが収まらないことには、魔法も発動できない。 震える両手で血の飛び散っているないちゃんの手を包み込む。
桃
水
「大丈夫だよ」
水
「ほとけっちなら、大丈夫」
「俺は信じてるから」
ないちゃんの声だった。
体温がぶわっと上昇したのがわかった。 たとえこの声が僕の創り出した幻聴でも構わない。 きっとないちゃんは、同じことを思ってくれているはずだから。
水
水
✧︎*。.*・゚ パァッ .゚・*. 。*✧︎
目を突き刺すような光が辺りに満ちる。 体から魔力がとめどなく溢れていく。
魔力消費が思っていたよりも激しくて焦ったが、絶対に失敗はできない。 この際、自分が気絶してもいい。死の淵をさまよっても構わない。 ないちゃんは絶対に助けなければ。
水
もう少しだ。 魔法陣が全部発動するまでもう少し。
他の白魔術士
水
もう魔力が切れそうだ。 この魔法陣、コスパ悪かったな。 でもないちゃん救うにはこれしかなかったんだよな。
あぁ....ないちゃんが起きたら僕のことを運んでもらおう。怪我人にそんなことさせたらダメかな? ないちゃんならきっと許してくれるんだろうな。
魔法陣をなんとか最後まで発動させるんだ。たとえ自分が血を吐こうが気を失おうが、それだけはやりきらなければ。
水
水
✩.·。*.·゚✧ シュゥ...... ·゚✩ *.·゚
眩い光が消えて、白飛びしていた視界がぼんやりと戻ってきた。 魔法陣がちゃんと発動したのだ。
水
桃
桃
あ.....っ
桃
水
水
バタッ
桃
水
ないちゃんの胸の上で涙をこらえる。 ほとんどの魔力を失って力が抜けたのもあれば、張り詰めていた不安が一気に解放されたのも原因だろう。
怪我人の上に倒れ込むなんて、医療を専門とする人間としてありえない。 ありえないけど、こうしていたかった。
桃
桃
カッスカスの声で、血まみれの顔に笑みを浮かべながら僕の頭を撫でてくる。 さっきまで生死の境をさまよっていたくせに、泣いている僕を見ただけで僕の求めていることがわかるのだ。
水
水
水
桃
桃
水
桃
桃
いふくんの立てた作戦に頷くないちゃん。よかった。彼が頷いてくれれば、僕の中の安心ゲージは急上昇する。
桃
水
水
桃
桃
桃
水
言いにくい。本当は本人に許可を取った方がいいような魔法だったから。 それは一生消えない、呪いのような魔法かもしれない。
そのことでないちゃんに失望などされたら、僕はもう立ち直れないだろう。
桃
水
桃
水
水
水
桃
桃
桃
さっきまで上がっていた口の端がどんどん下がっていく。声のトーンがガチすぎて、犠牲になんてしてないのに本当にそうした気分になった。
水
水
水
桃
水
桃
コクコクとすごい勢いで頷いておく。 説教コースじゃなくて安心した。
水
水
桃
桃
桃
りうちゃんが魔法石を通して伝えてくれた。ボロボロの状態の三大貴族を1人、逃してしまったと言っていた。
実際、僕らもさっきまでそれにビクビクしていたところだ。 強い兵士さんが1人居るけど、三大貴族に1対1で勝てるとは思わない。
桃
桃
水
桃
桃
そう言って僕の頭にぽんっと手を置く。ないちゃんってこんなに優しかったっけ?僕この人に頭撫でられたことなんてあったっけ?
なんか、前がよく見えない。
水
水
水
桃
桃
他の白魔術士
桃
水
桃
桃
青
黄
黄
左大臣:レディスト
まずい。まろがあまりにも冷静さに欠けている。
そもそもまろは遠距離攻撃やろ。 盾は俺に任せて後方支援に回ってほしいのに。魔法職が前線に突っ込んだら危険なんは承知しとるやろうに....
左大臣:レディスト
青
黄
左大臣が大きく槍を振りかぶる。 あの距離感、まろでは避けれない。まろは頭の回転が早いし動体視力もいいが、運動神経がそれに追いつくわけではない。
彼を死なせれば、ないこに、初兎に、あいつらに、どんな顔をしながら合流すればいいというのだ。 ないこは自分を責めるだろうし、初兎は絶望する。ほとけとりうらが完全に戦意を削がれることくらい目に見えている。
俺は誓った。死なせない。 死なせられない。
黄
間に合え間に合え間に合え
重力で落ちるだけでは間に合わない。 空気抵抗を減らして、0.0001秒でも早く向こうに。
黄
黄
左大臣:レディスト
黄
青
黄
黄
青
黄
黄
青
左大臣:レディスト
左大臣:レディスト
黄
左大臣:レディスト
左大臣:レディスト
まろの顔が引きつっている。
左大臣:レディスト
青
黄
左大臣が俺の事を舐めまわすように見る。 なんとなくわかった。俺を先に殺してまろに見せつけたいということか。
黄
つまり、左大臣はこれから俺ばかりを狙ってくるのだろう。 でも裏を返せば、それはまろたちに危険が及ぶ可能性が減るということ。
黄
青
黄
黄
さすがに強がりすぎやろか? 正直、左大臣に勝てるイメージはまだ持てていない。
でも、誰も死なせないともう覚悟は決めてしまった。後戻りはできない。
なにより、ないこの仇討ちだ。 死んでないと信じてはいるが、大怪我させた罪は重い。
左大臣:レディスト
左大臣:レディスト
青
青
黄
『許すわけないやろ』
赤
なぜこいつの名が「ペルフェクトゥス」なのかわかってしまった。
先刻、初兎ちゃんが左足に怪我をした。 今も血がダバダバと流れ出ているのだが、彼はそんな足を引きずりながらどうにか"守り"を続けている。
俺も初兎ちゃんも、あくまで「守る」ことしかできない。 向こうに攻めることが難しい。
だってこいつは、この世に存在する "全てのスキル"を履修しているから。
赤
紫
赤
紫
耳元に初兎ちゃんの声が響く。 隣を駆け抜けながらバレないように小声でそう伝えてきた。
なんでそのズタズタの足で走れるのかがわからない。もしかしたら出血死もありえそうなほどの深い傷だ。 どれだけ痛いのを我慢してるの?
赤
一体どんなスキを作るんだろう? 多少の攻撃じゃ背後の警戒が解けると思わない。
まさか、捨て身__
いや、初兎ちゃんに限ってそれは無い。 「無血の魔王討伐」を語ったのは彼なのだから。
でも、あのまま突っ込んだら本当に捨て身になりそうだ。
赤
赤
赤
紫
怯えてられない。 死んでほしくない。 死にたくない。
士気を上げるんだ。 仲間を上手く使わなきゃ。勇者じゃないけど、ただの毒使いだしまだ子供だけど、そんなの関係なくやらなきゃいけないことがある。
シェイラのときみたいに裏切る人は、ここにはいない。 怖いのは多分みんな同じで...だから誰かが勇気を出して、それに続く必要がある。
初兎ちゃんが勇気を出してくれている。 最前を走ってくれるなら、仲間の俺はそれに続く使命がある。
冒険者たち
冒険者たち
冒険者たち
紫
感動してる場合ではない。 なんとか背後をとらないと。
とったところで倒せるかはわかんないけど...やるしかない。 少しでも傷を与えて弱らせよう。
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
冒険者たち
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
炎が天に向かってのびていく。 火×風の力はすさまじい。熱風が邪魔をして距離を詰めれない。
けど、そんなに高さを作っても意味は無いことを俺は知っている。
紫
この勇者は、すでに仲間との模擬戦でこの魔法の打開方法を学んでいるからだ。
紫
冒険者たち
初兎ちゃんが盾だけ構えて敵に突っ込んでいく。熱風をもろともせず、ついに炎の中に飛び込んだ。
信じられないけど、彼はあれでどんな場所にでも飛び込めてしまうのだ、 ほんとに信じられない。世の中の規定をすべて無視してるスキルだ。
赤
完全に気配を経てるよう集中する。 きっとそろそろ....
シュゥッ......(炎が消える)
赤
赤
ちょうど初兎ちゃんが右大臣の右手に剣を突き刺していた。不意打ちは成功したらしい。
りうらもこのまま、右大臣に毒を__
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
ガシィッッ
気がつくと、首根っこを掴まれて宙吊りにされていた。
紫
初兎ちゃんが助けようとしてくれたけど、右大臣が剣から手を離さないみたいで、こちらへ手を伸ばしたまま青ざめた顔でこちらを見ている。
赤
なんだこの握力。 力を抜くと首の骨は全部粉々だろうし、必死に抵抗している今でも永久的に首がねじ曲がってしまいそうな気分だ。
初兎ちゃんは剣を掴まれて動けないし、他の冒険者も俺が人質状態だから安易に近づけない。
赤
あぁ、スキル名が唱えられない。 頭に血が溜まって爆発しそう。息が全くできなくて意識が朦朧としてきた。
死ねない。 死にたくない。 まだ生きていたい。
あの人との約束を果たすまで、初兎ちゃんの夢を守るまで、みんなと平和な世界を見るまで、もう少しなんだ。
紫
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
初兎ちゃんが剣を構え直した瞬間、 右大臣の右手がこちらへ飛んできた。
右大臣:ペルフェクトゥス
ドガァッッッ
赤
腹を思いきり殴られる。
ドシャッ(地面に叩きつけられる)
赤
防御も何もできなかった。 内臓がどこか潰れたんじゃないか? 少なくともあばらは折れている。
赤
息を吸い込む度に殴られたところがきしんで激痛が走る。 でも、息を吸わないほうが死んでしまいそうだった。
受身が取れなかったせいで全身強打した。背中まで折れた気がする。 頭が無事だったことを喜ぶべきか?
赤
赤
胃液がぼたぼた地面に落ちた後、衝撃的なものがまだ白飛びしている視界に映りこんだ。
赤
紫
遠くから初兎ちゃんの声が聞こえる。
赤
いや、違う。潰れては無い。 ただ傷がついてそこから出血して、気管を上ってきただけだ。
そう思い込もう。
赤
赤
思いっきり息を吸うことも思いっきり叫ぶことも激痛だ。 でも、心配はかけれない。
赤
口の中が気持ち悪い。 肺のあたりも痛む。腹が1番痛いけど。
足でまといになる訳にはいかない。 大丈夫、大丈夫、大丈夫....
赤
赤
冒険者
1人の剣士が心配してくれた。
赤
赤
冒険者
冒険者
咳をすると喉の奥がゴロゴロいって気持ち悪い。 そんなことより、早速バレてしまった。
赤
冒険者
赤
赤
冒険者
自分のものは走ってる途中に城のどこかで落としてしまったようだ。 ありがたく水を受け取って、口をゆすぐ。
できればうがいもしたいけど、気管に入ってしまいそうなのでやめておいた。
赤
赤
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
冒険者
赤
こいつッ....!!!
冒険者
赤
剣だけでは攻撃を止めれそうになかったので、魔法で加勢する。 といってもその力は微力だ。
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
剣士を抱えて『シフト』(瞬間移動)を発動する。 なんとか10mの距離をとった。
また剣を握って受け止めていたので、剣士の剣が取られてしまった。
赤
冒険者
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
そうだ。こいつはどんなスキルも使えるのを忘れていた。 さすがに厄介すぎるだろ。
剣士を抱えたまま再度逃げたら、また目の前まで瞬間移動してきた。
赤
というかなんで初兎ちゃんたちの攻撃を避けてりうらのところへ来れたんだ? まだ本気でもなんでもないの?
剣士を抱えてスキルを発動し続けるのもさすがにキツイ。
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
冒険者
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
目の前の剣を模倣して、両手でしっかり握る。見た目だけで重さは劣るだろうけど、魔法で対応できる気がしなかった。
ここまで0.2秒。 なんとか振りかざして__
ガキーーーーンッッ
赤
力が強すぎる....!!!
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
力がより強くなった。さっきよりもずっと押し返されそうだ。 プライドは持っているらしい。
赤
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣はさっき、5回ほどスキルを発動した。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目のほうが精度が高かった。 多分、俺の動きを真似したんだ。
何事も、極めている人と極めていない人ではたとえ基礎能力が違っても結果的にそれなりの差が出るんだと思う。
俺は6歳の時からこの『シフト』を習得するため、そして極めるために今まで何度も繰り返してきた。 身に染み付いてるし、精度は誰にも負けないと自負している。
こいつはなんでも知ってるけど、それを極めようとはしなかったんだ。
この剣の攻撃だって、初兎ちゃんのほうがもっと重くて鋭い。 拳のパワーが異様に強かったのは、魔族としての基礎能力が高いのだろう。
赤
赤
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
キーーーーンッ
剣がはじかれて吹っ飛んでいった。 ちょっと煽りすぎたかもしれない。 今度切りかかられたら死んでしまう。
赤
こっちはひとりじゃないんだよなぁ。
紫
高く舞い上がった初兎ちゃんが、剣先を右大臣に定めてこちらへ飛び込んでくる。
この構図、シェイラを思い出すなぁ。 りうらが初めてのクエストで死にかけたとき、同じ技で助けてくれた。 先生の背中がどれだけ大きく見えたか。
そういえば、初兎ちゃん達が拾ってくれたときもこの技だった気がする。
大切な人が、いつも助けてくれる。
右大臣:ペルフェクトゥス
ザシュッ(かする)
紫
紫
紫
赤
紫
赤
紫
出血の量が尋常じゃなかったから、早く処置しないとほとけっちと合流しても完治は難しかったと思う。 それに、怪我剥き出しで走るより幾分かマシだろう。
赤
紫
初兎ちゃんの耳元に顔を近づける。 意図をくみ取ってくれたのか、少しだけ屈んでくれた。
初兎ちゃんだけに聞こえるよう、そっと耳打ちする。
赤
紫
左大臣:レディスト
青
ザシュッ(かする)
青
三大貴族のポピーと同じ技だ。 でも、その完成度は天と地の差。槍を避けたのに、いきなりカーブしたりするから全然予想できない。
アニキが居て本当によかった。 俺だけだったら距離を詰められて一瞬でやられているだろう。
あいつはアニキを厄介に思っていると思う。そういう表情だ。
アニキはすごい。 敵の槍をかいくぐって間合いまで一気に近づいてしまう。攻撃が当たらなくとも、槍の攻撃可能範囲をぐんと狭める。
そこまで近づいても引き際が絶妙で傷さえなかなかつかないのだから、本当にすごい。
左大臣:レディスト
青
瞬間移動!?
青
ガッッッ
相手の槍と己の杖が衝突する。 反射で防御をしていなければ、あの槍が俺を串刺しにしていただろう。
左大臣:レディスト
左大臣:レディスト
青
青
青
杖がミシミシいってる。 もっと強いものを用意するべきだったか?そもそもこんな使い方、作る人も想像していないだろうな。
もしこれが折れたら、頭から真っ二つに割れてしまう。
でも、それでもここから逃げないくらいこいつの態度が物凄く頭にくる。 初めて会ったときからずっと。
青
ゴォッッッ
黄
自分もろとも火の輪で囲み込む。 この杖が折れるまでに、左大臣ごと燃やせたらどれだけ簡単か。
自分は別にどうなろうと気にしない。 全身火傷して皮膚がドロドロになっても、腕のいい白魔がいるのだから。
左大臣:レディスト
左大臣:レディスト
青
左大臣:レディスト
青
魔法を解除すると、アニキがすごい勢いでこちらへ来て、
黄
頬をひっぱたかれた。
青
黄
青
アニキが首で左大臣のほうを見るように促す。
青
兵士たちが連携して戦えている。 それに、元々アニキが引き連れていたグループも、負傷者が多いのに必死に戦ってくれている。
あれはまだもつ。 みんなの士気も悪くは無い。
黄
黄
青
黄
その通りだ。
黄
黄
黄
青
本当にその通り。
黄
黄
青
黄
青
頬を叩いて気合いを入れ直す。 さっきアニキに叩かれたばかりだけど。
青
黄
あいつの戦い方は三大貴族のポピーと似ている。パワーと技術は段違いだけど、どうも姿が重なる。
なにかそこからヒントは無いか? 初兎はどうやってあいつを倒した?
不意打ちと、初兎のスピード。 それと、あの時のポピーは俺に攻撃が命中して少し油断していたように見える。
青
青
青
黄
青
青
青
黄
黄
青
黄
これはアニキでも難しいだろう。 隙ができるのはほんの一瞬だ。俺の魔法陣が目に写っても、それほど気にとめない可能性もある。
やはり、少しリスクが高すぎるか__
黄
黄
青
黄
青
青
ないこが生きていると信じて。
紫
初兎ちゃんが狐につままれたような顔をする。戦闘中は俺も必死だったし初兎ちゃんも必死だったけど、よく見ると彼の顔は疲労が滲み出ていた。
赤
赤
毒だけじゃない。 怪盗のスキルでも戦える。
見るだけでいい。視界に捉えることさえできれば、その技はもう俺のものだ。 精度はもちろん高くないが、それは向こうも同じこと。
紫
紫
そりゃそうだ。 手足の筋肉の大きさと密度、心臓の強さ、衝撃に耐える強度。 魔族と人間は天と地の差を持つ。
赤
赤
紫
紫
紫
少し返事を躊躇したのは、俺が特攻のようなことをしないかどうか見極めていたのだろう。
死にそうなことをしたら絶対に怒る初兎ちゃんに「俺を死なせたくなかったら守って」なんて我ながら意地悪だと思う。
でも、だからこそ、初兎ちゃんは絶対に守ってくれるはずだ。
赤
赤
赤
他の冒険者たちも援護に回ってくれる。 初兎ちゃんとまろが率いていたAグループ、ないくんが率いていたBグループ。 総勢23人が、守ってくれるのだ。
特にBグループは作戦係の2人が「精鋭部隊」と呼ぶほど手練が集まっている。
赤
付け焼き刃の奴に負けるなんてプライドが許さない。 俺の14年間で、こいつの怠惰な何千年を超えてやる。
それで魔王を倒して、おじいちゃんになるまでこの世を仲間と楽しんでから、あの人に会いに行くんだ。
右大臣:ペルフェクトゥス
まだ突っ込むのは止めない。 もっと近く、至近距離で叩き込まなきゃこいつには意味が無い。
紫
すごい...本当に攻撃がひとつもこない。 攻撃が変な曲がり方をして後ろからも飛んできているのに、全部仲間が受け止めてくれてる。
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
走りながら相手を観察する。 なかなか隙がなくて近づけないけど、体内の魔力の流れは見えた。
展開している魔法陣。 魔法は同じだけどまろのと少し違うな。あの模様が変に攻撃が曲がる原因か。それは何時の時代の魔法だ?
コピーは可能の複雑さ。そんなにややこしくはない。
赤
赤
紫
見た目は全く同じだ。 しかし性能はわからない。
右大臣:ペルフェクトゥス
ザシュッ
赤
渡り合えるのか?この技で。 付け焼き刃の付け焼き刃。それで右大臣が倒せるのかどうか__
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
完全にコピーしたつもりだったのに。 俺たちが喰らえば致命傷でも、魔族にはかすり傷でさえない。
りうらが.....りうらが倒さないといけないのに.....
紫
紫
赤
紫
なんで初兎ちゃんはずっとポジティブなんだろうって、昔考えたことがある。
彼は、ポジティブでないといけない人間なんだ。 率いる立場にいるから、ずっと明るい言葉と笑顔を俺らにくれる。
赤
魔力の密度が足りなかったか? 魔法陣は完璧だから、魔力に原因があるに違いない。
半端な威力ではあいつには勝てない。 もっと、ありったけを突っ込まないと。
赤
冒険者たち
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
空から雷が振りまくっている。目の前は見えにくいし音もすごい。
同じ威力で相殺することしかできていない。相手に当てないとこの戦いは終わらないのに、相手以上の魔法を出すことがどうしてもできない。
俺とあいつの1対1じゃないのに。人間側とあいつの戦いなのに。 魔族と人間は生き物としての性能がまるで違いすぎる。
赤
紫
そろそろ倒さないとマズイ。 戦い始めて何時間かもわからないけど、全員がもう限界だ。
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
あぁ....本当に
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
本当に頭にくる。
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
それは誇ることじゃない。
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
その上から目線がムカつくんだよ。
赤
赤
赤
赤
紫
赤
赤
赤
赤
痛い。なんで大声出しちゃったんだろ。 また血が気管を上って咳と混じる。 息が苦しくて嫌になる。
半刻たてば内臓が機能しなくなるというのは、多分正しい。
赤
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
何も返さない....怒ったのだろう。 安い挑発に乗るなんて、未熟なのはこいつのほうだ。
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
その技は1度盗んだからもう使える。 相手の言葉に被せるように、スキル名を唱えた。
ガキーーーンッッッ
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
みんな右大臣の背後に迫っているのが見なくてもわかる。 俺はひとりなんかじゃない。
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
まさか魔法を出すつもりか?
赤
冒険者たち
右大臣:ペルフェクトゥス
ゴォッッ
部屋を吹き飛ばした時と同じ魔法...!!
冒険者たち
冒険者たち
冒険者たち
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
ガキーーンッ(剣が弾かれる)
赤
これ地上何メートルだ? 落ちたら普通に死ぬ高さじゃん。
冒険者たち
冒険者たち
嬉しいけど、もっと自分のこと気にしてよ。後ろに敵居るんだから。 そんな怖い顔しないでほしい。
「大丈夫」って叫びたいけど、殴られた部分が痛んで声が出ない。
床部分も、魔法でどんどん吹き飛ばされて面積が減っている。 ここから地面まで落ちたらどんな無惨な姿になってしまうのだろう。
嫌だ。そんな死に方したくない。
痛いの嫌だよ。 ほんとは兵士との戦いでついた傷もまだ痛すぎて泣きたいくらいなんだよ。
身体が降下していく。 床に落ちても、床に落ちず地面まで落ちても、どっちにしろ死ぬ。
赤
赤
ガシッッ
赤
紫
ギリギリのところで初兎ちゃんが俺の右腕を掴んだようだった。
彼も腕の力なんてほとんど残ってないはずなのに、俺を片手で掴んで耐えてくれている。
紫
あぁ....そうだった。
死んだら初兎ちゃんのせいになるんだ。 こんなに頑張ってくれてるのにそれは 可哀想だ。
赤
冒険者
冒険者
紫
右大臣が初兎ちゃんの後ろに見える。 高く舞いながらこちらへ突っ込んでくる。
紫
赤
紫
ガキーーンッッッッ
初兎ちゃんの剣と右大臣の爪が金属音を響かせながらぶつかり合う。 俺はというと、いつのまにか初兎ちゃんの脇に抱えられていた。
なんでその攻撃に片腕で耐えられるんだろう。もう限界に近いはずなのに。
紫
紫
多分、俺ら6人の中で1番戦い続けているのは初兎ちゃんだ。 強敵との連戦でまいっているのだろう。 こちらの都合なんて汲んでくれるはずないのに、相手への文句を叫んでいる。
赤
右大臣、初兎ちゃんに左手を剣で抑え込まれているから、左半身がガラ空きだ。
紫
初兎ちゃん、だから俺を右側に抱えたままなの? もしかして気づいてる?
いや、あの顔は気づいてない。 ただ必死に攻撃を受け止めているだけだ。なのに、相手には隙ができている。
相手もかなり疲弊している? 魔力も大量に消費したのでは。
赤
勝機はあった。 "今"だ。
りうらがやるしかない...!!!
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
ドゴッッッ
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
紫
腕を掴んだ勢いのまま、右大臣にしがみつく。足をからめて逃げれないように、腕を抑えて攻撃できないように。
俺の力では完全に抑え込むことはおろか、5秒ももたないだろう。
赤
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
こんな切りにくい状態でごめん。 困るよね。腹を切ったら俺まで切れちゃうし、心臓を突き刺したら俺もろとも串刺しになっちゃうもん。
でも、初兎ちゃんならなんとかしてくれると信じている。
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
いつのまにか右手を掴まれていて、手首がミシミシときしんでいる。
赤
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
赤
紫
ザシュッッ
紫
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
初兎ちゃんが俺を避けて右大臣の首を狙う。勢いがどんどんついて、首に剣が通っていく。
紫
紫
ゴトンッ
頭が鈍い音を立てて地面に落ちる。
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
右大臣:ペルフェクトゥス
赤
赤
赤
紫
思わず座り込んでしまった。 立てている初兎ちゃんは本当にすごい。
赤
ヒュゥゥゥゥッ
紫
赤
なんの前触れも無く、突然床が急降下し始める。かなりのスピード...というか、重力そのものか?
赤
紫
汗だくだった背中が急激に冷え始める。 落下して感じる風なのか、ありえないくらいの焦りなのか、どちらかはわからないが。
周りの冒険者も半分パニックだ。
赤
早急に脱出しないと全員死んでしまう。
紫
赤
赤
紫
赤
失敗は許されない。 普段使わないから心配だけど、そんな悠長なことは言ってられない。
赤
赤
.*・゚ シュゥッ... .゚・*.
赤
紫
紫
冒険者たち
冒険者たち
冒険者たち
みんな生きている喜びを噛み締めているのだろう。 泣いてる人もいる。
冒険者たちが抱き合って喜ぶ姿を見て、心底ほっとした。 生きてるんだ。息をしている。 俺らは勝てた。
赤
赤
紫
赤
赤
紫
初兎ちゃんが魔法石を探し始める。 ほんとなんでそんなに動けるんだろう。
赤
紫
紫
赤
紫
俺も思わず自分のものでやってみた。 けど、魔法石はびくともしない。
赤
赤
紫
紫
赤
紫
赤
紫
紫
冒険者たち
紫
赤
さっきから咳が止まらない。 傷は止血したけど、吐血がおさまらなくて心の中では焦っている。
体のあちこちが、ズキズキなんて痛みじゃなくて、もう死んじゃうんじゃないかってくらい痛かった。 息も吸いにくくなってきて、殴られた場所はもう感覚が無い。
初兎ちゃんが肩を貸してくれているけど、彼は彼で足にひどい怪我を負っているし、三大貴族との戦いの傷もまだ治療できていない。
お互いボロボロだけど、なんとか支え会えている。 他の冒険者も同じような様子だ。
紫
赤
俺が最後にほとけっちと居た場所まで戻ってきたけど、姿は無い。 あるのは戦闘不能にした兵隊ロボットの残骸だけだ。
紫
紫
赤
紫
赤
紫
赤
足音が聞こえる。 柱の向こうから、こっちに近づいてきている。
ひとりの兵士
赤
赤
紫
紫
紫
初兎ちゃんの頬に汗が伝う。 俺の前では冷静に振舞ってくれていたのだろう。当たり前に、俺と同じくらい心配なはずだ。
ひとりの兵士
ひとりの兵士
赤
ひとりの兵士
ひとりの兵士
ひとりの兵士
赤
紫
赤
赤
思わず初兎ちゃんに抱きつく。 彼も辛いはずなのに、支えてくれた。
赤
赤
紫
紫
初兎ちゃんも泣いていた。
痛みも忘れて、しばらく泣いた。 本当の意味で安心できた気がする。
ひとりの兵士
ひとりの兵士
紫
赤
紫
赤
赤
冒険者
赤
紫
冒険者
※これは善意です
赤
紫
水
赤
赤
水
ほとけっちが後方に向かって叫ぶ。 変わらない、嬉しそうなキラッキラの 笑顔にまた安心する。
桃
赤
桃
桃
赤
初兎ちゃんと組んでいた肩をスルッと抜けて、もうほぼ感覚の無い足でないくんに駆け寄る。
立ってる。息してる。 ないくんがほんとに生きてる。
赤
桃
紫
足がもつれて顔面から転けてしまった。 その場にいた全員がどよめく。
ないくんが駆け寄ってきて、体を起こしてくれた。
桃
ギュッ
桃
赤
赤
赤
桃
桃
ないくんの温もりを感じる。 心音も聞こえる。
もう安堵しすぎて気絶しそうだった。
赤
桃
赤
赤
桃
水
水
赤
水
水
紫
桃
紫
水
水
水
他の白魔術士
紫
紫
桃
桃
紫
紫
紫
桃
桃
紫
紫
赤
水
足の傷口まだ塞いでないのに。 応急処置の包帯がもう真っ赤だよ。
ないくんに行ってほしいわけじゃない。 彼だって、どうやって治療したのかはわからないけれど生死の境をさ迷ったばかりだろう。
でも、初兎ちゃんがあれ以上戦えば、 もう壊れてしまう気がしてならない。
紫
桃
水
紫
水
水
水
紫
紫
ほとけっちの剣幕に押されて初兎ちゃんが折れた。 こういうときのほとけっちが1番怖い。
水
水
桃
水
桃
赤
水
赤
口は閉じとこう。 ほとけっちの顔が怖い。
桃
水
水
桃
ひとりの兵士
桃
桃
テキパキ指示を出していくないくん。 本当に体調に問題は無いらしい。ほとけっちはいったいどんな治療をしたのだろう。
桃
紫
紫
桃
桃
水
走っていくないくんを全員で見送る。 またあんな状態で帰ってきたらどうしよう。いや、そもそも帰ってこなかったりしたら.....?
まろだって酷い怪我をしていたと聞いた。それに、アニキは一度も救護隊と合流していないらしい。
左大臣はあのないくんが致命傷を負わされる強さだ。 向こうはちゃんと無事なの?
水
俺の表情から不安を感じとったのか、治療のために服を脱がせながらそう諭される。
水
水
赤
「そうだよね」と言いたかったけど、まぶたが重すぎてもう言葉を発する力も無かった。
深い夢の中へ、また落ちてしまった。
続く