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相羽吾蓮(あいば あれん)
どうも、相羽吾蓮です。
あれから分ほど後。俺は公園で頭を抱えていた。足元に木崎を携えて。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
木崎は幸せそうに眠っていた。
暴れたせいで、アルコールが回り切ったようだ。
相羽吾蓮(あいば あれん)
しかし木崎は反応しない。
俺の足にしがみ付いて、離れない。
相羽吾蓮(あいば あれん)
どうしたもんかね。
船の出航時間まで、あと一時間ちょっとだ。ターミナルまで連れていくのに問題はないが、酒が抜けるとは思えない。
こんな状況で船に乗せたら、
相羽吾蓮(あいば あれん)
ヒロインがやってはいけないことをやらかしてしまいそうだ。
しかし、そうなると一泊することになる。
誰と?
木崎と。
相羽吾蓮(あいば あれん)
無理無理無理!
そんな度胸ねえって!
泥酔したクラスメイトと一泊とか、無理ですから!
ヘタレと笑いたいなら笑うがいい。その汚名、甘んじて受けて見せよう。
だから!
相羽吾蓮(あいば あれん)
うぅ……。何でこんな目に……
しかしどんなに現状を嘆こうと、状況は好転しない。
俺は現実を見ることにした。
財布を開くと、中身は一万円弱(流石にタダでは貰えないので、バッシュ代はきちんと払ってきた。というか、こっそり置いてきた)。
帰りの船代も考えると、普通のホテルに二人泊まれる値段では、ないな。
となると……、
相羽吾蓮(あいば あれん)
俺は無言で、公園の裏の建物に目を向けた。
看板には、でかでかと「ご休憩」の文字。
いわゆる、ラブホテル。である。
相羽吾蓮(あいば あれん)
普通に泊まるだけでも難易度が高いと言うのに、ラブホテル?
ふざけてんのか!?
つーか何で公園の裏に建ってんだよ!? 子供の教育に悪いだろ!
ちなみに、木崎の財布には五百円しか入っていなかった。小学生のお小遣いか!
相羽吾蓮(あいば あれん)
ぐるぐると混迷する頭を振り、決断する。
そもそも選択肢は一つだ。迷っていても仕方ない。
相羽吾蓮(あいば あれん)
自棄になって叫び、未だ眠りから覚める気配のない木崎を背負う。
すると、
むにっ。
背中に、二発の爆弾が投下された。
相羽吾蓮(あいば あれん)
……危ねえっ!?
意識を刈り取られるとこだった!
くそ、木崎姫歌。寝ていても自己主張の激しい女だ。
ブツクサと文句を言いながら、背中から意識を遠ざける。
普通に無理だが、気概の問題だ。
相羽吾蓮(あいば あれん)
何故か羊を数えてしまった。別に眠りたいわけではない。それくらいテンパっているということだ。
相羽吾蓮(あいば あれん)
むにっ。
相羽吾蓮(あいば あれん)
むにむにっ。
相羽吾蓮(あいば あれん)
むにむにむにっ。
相羽吾蓮(あいば あれん)
俺は今何を!?
相羽吾蓮(あいば あれん)
深く考えない方がいい気がして、俺はホテルに急いだ。
それからどうやって部屋に入ったのかは覚えていない。
死ぬ気になると人は信じられない力を発揮すると言うが、ラブホテルの入室で発揮したくはなかった。
木崎をベッドに寝かしつけ、俺は風呂場に向かった。
別に準備を整えるわけではない。
このあと「き~さきちゃ~ん❤」とか言いながらルパンダイブする気もない。
ただ純粋にシャワーを浴びたかった。今日見た悪夢を、洗い流せそうな気がしたから……。
キュキュッ。
蛇口を回し、水を流す。
冷たい水が出たが、冷静になるには丁度よかった。
ラブホテルに入ってしまった。
それは変えようのない事実だ。だから、これからどうすればいいかを考えることに集中しよう。
考えろ。
冷静になれ。
相羽吾蓮(あいば あれん)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
相羽吾蓮(あいば あれん)
風呂場に、木崎が突入してきた。
え? 何これ? 普通逆じゃない!?
木崎姫歌(きさき ひめうた)
そう言って、木崎はこちらに向かってきた。
「吾蓮」と俺を呼んだところを見ると、多少なり酒は抜けているようだ。
相羽吾蓮(あいば あれん)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
木崎はまるで子供みたいに、俺に抱き付いてこようとした。
相羽吾蓮(あいば あれん)
それは色々とマズい!
俺の下半身とか理性とかが!
俺は風呂場の外に逃げ出した。
狭い空間は逃げ場がないと考えたからだ。が、意味は無かった。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
がしっ。
抵抗虚しく、俺は木崎に捕まった。
相羽吾蓮(あいば あれん)
その上、場所も悪かった。
俺のすぐ後ろにはベッド。
終わった……
何がかはわからないが、とにかく色々終わった。
ごめん、尊。違うんだ、兄ちゃんは悪くない。何もしてないんだ。
でも、もうダメだ……。
ガンッ!
相羽吾蓮(あいば あれん)
不意に、後頭部に鈍い痛みが走った。どうやら、壁に頭をぶつけてしまったらしい。
俺の意識は、そこで途切れた……。