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恋愛もの習作まとめ

3 - マイノリティと呼ばないで

♥

1,207

2019年12月20日

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昨日、私の好きな人が 友だちにバレた。

今日学校に行ったら、 学校中に広まっていた。

 

私の好きな人は

同性の親友だった。

うちの学校は少しだけ先進的で

例えば身体障がい者や発達障がい者の受け入れも早かった。

だから生徒もみんな、いろいろと理解がある。

そう。

自称、理解のある人間ばかりだった。

 

女子

ねぇねぇ、アンタの好きな子、あの子だったんだって!?

女子

知んなかったよー、言ってよ水くさいー!

女子

私たちマイノリティに理解あるんだから!

女子

で、どうだった!?

女子

アンタたちめっちゃ仲良いもんね!

女子

もちろん付き合うんでしょ!?

好奇心で騒ぎ立てられる声がうるさかった。

ううん、これは異性との恋愛でも一緒なのかもしれない。

だけど、当人にしてみれば雑音でしかないんだ。

特に、私にとっては。

廊下を歩くと、誰かが言う。

男子

あの子だろ、マイノリティの子

男子

え、けっこう可愛いのに

女子

マイノリティに顔の可愛さとか関係ないでしょ

女子

優しくしてあげようよ

女子

マイノリティってだけで生きづらいんだから

生きづらい?

誰が?私が?

私は普通にしてる。

普通に生きてる。

なのに、これはみんなにとって生きづらいの?

 

体育の時間、女子更衣室に入ると

みんな私から体を隠すようになった。

トイレに入っても

みんな逃げるように出ていくようになった。

確かに、生きづらいのかもしれない。

あの日だってそうだ。

私が彼女を恋愛対象にしていると気付かれたとたん

はっきりと彼女の顔がこわばって

目が泳いで

言い訳を口にしたまま

私一人、取り残されたんだから。

きっとみんなの行動も、これと同じ。

だけど私を生きづらくしてるのは

私じゃない。

やがて、私が彼女に逃げられたことがバレたあと。

もっとヒドいことが起こった。

女子

逃げるとかホントひどくない?

男子

なー、マイノリティには優しくしろっての

女子

あの子、優しい子だと思ってたのにさー

男子

ホントだよ、マジがっかり

今度は誰もが、彼女の悪口を言い始めた。

女子

しかもあの子、別に好きな人もいないんでしょ?

女子

せっかくなんだし付き合えばいいのに

男子

だよなー!

男子

あ、じゃあお前が付き合ってやれよー

女子

ちょ、なんでよ!

女子

私関係ないじゃん!

この子達は、これがどんなに不快か分からないんだろうか。

 

同性が好きだからって、相手は誰でもいいと思われてることとか。

 

そのくせ自分は蚊帳の外にいて

私をネタに噂遊びをされていることとか。

 

私が好きになった子の悪口を

当事者そっちのけで話し続けられることとか。

 

耐えられず、席を立つ。

ほら、私がいなくても悪口は続いてる。

だけどそれがとても、とても嫌だった。

私を拒絶しただけの彼女が、

私を恋愛対象として見られないだけの彼女が、

ひたすら悪者にされていく。

 

きっと彼女は、今私を憎んでるだろう。

私に好かれなければ、彼女が悪者扱いされることもなかった。

あの子達の軽率さが

あの子達の思慮のなさが

彼女の中の私を、きっとどんどん「悪」にしてる。

オネエ

それで、不登校になって

オネエ

このオープンチャットに行き着いた、ってことね

そうです

全部、嫌になっちゃって

オネエ

アタシらみたいなのにはあるあるよねー

オネエ

声高に理解者を名乗る人間ほど

オネエ

信用できない奴らもいないわ

オネエ

本当の理解者であってくれるなら

オネエ

そっとしておいてほしいもの

ここは、同性愛者の人が多いんですか?

オネエ

いろいろよ

オネエ

GもLもBも

オネエ

XジェンダーもTジェンダーも

オネエ

女装家や男装家もいるわ

オネエ

アナタは、L?

オネエ

性自認も女性かしら

はい

オネエ

そう

オネエ

私と同じね

オネエ

ふふ、やっぱりみんなと同じ反応

オネエ

ハンドルネームがオネエだからね

オネエ

みんなアタシをGだと思うの

あ、あの

失礼なこと言ってごめんなさい

オネエ

謝ることないわ

オネエ

他人の性別なんて、名前じゃ分からないものよ

オネエ

ネットじゃなおさらね

オネエ

実際に会ったって見た目じゃ分からないわ

オネエ

性志向も同じ

性、志向

オネエ

男を好きになる

オネエ

女を好きになる

オネエ

どちらも好きになれる

オネエ

体と心の性別が違う人や、性別がない人でも好きになれる

オネエ

人を好きになれるけど、エッチはしたくない

オネエ

そういう話

オネエ

その5つが、2種類の肉体に混在してる

ははっ

……確かに、見ただけじゃわかんないですよね

オネエ

それに心の性別もね

体と心の性別が一緒

体と心の性別が違う

あとは

心の性別が、ない人

オネエ

そゆことー

オネエ

ちなみに私はというと

オネエ

体の性別は男

オネエ

心の性別は女

オネエ

性志向はL

あっ

それで、私と一緒

オネエ

そう

オネエ

違うのは、体の性別だけ

オネエ

マイノリティの中でも、特に理解を得がたいタイプね

……マイノリティ

オネエ

うん?

私、マイノリティって言葉、嫌いです

私がLだと分かったとたん

みんなが私を「マイノリティ」って呼ぶんです

私には私の名前があるのに

オネエ

――そうね

オネエ

昔は、それが別の名称だった

別の名称ですか

オネエ

変態、よ

……最悪

自分とは違うってだけで差別するなんて

なにも悪いことなんてしてないのに

オネエ

今はほんの少し世間の理解が進んで

オネエ

本当に理解してくれる人と

オネエ

理解したフリをしてる人が混ざってるの

オネエ

だから理解したフリをしてる人には

オネエ

教えてあげて

オネエ

あなたは異性を見ると

オネエ

誰にでもキスしたくなるの?

オネエ

ってね

……少し怖いです

そんなこと言ったら、嫌われそうで

オネエ

みんなから好かれたい時期だものね

オネエ

怖いなら今は逃げててもいいと思うわ

オネエ

だけど

――誰に何を言われても

胸の中だけで反発はし続けるつもりです

私は私

「マイノリティ」じゃない

オネエ

それさえ思い続けられれば大丈夫

オネエ

……またいつでもいらっしゃい

オネエ

運が良ければ、もっといろんな仲間が待ってるわ

翌日私は、久しぶりに登校した。

心配したと駆け寄ってくれた人たちに

もう彼女の悪口を聞きたくないと言うと

驚いた顔をしていたけれど

その中の半分は、すぐに謝ってくれた。

今では貴重な友だちだ。

彼女とはあれ以来話せないままだけど

それも仕方ないのかもしれない。

私は人より少しだけ、好きな人と恋人になりづらいだけ。

辛いけど、受け入れられなくはない。

それでもたまに、まだ言われるとモヤモヤすることがある。

男子

あいつ、マイノリティだろ?

女子

マイノリティって、なんかカッコいいよね

「マイノリティ」は、まだ私の代名詞だ。

今はまだ苦笑いでその場を離れるだけしかできないけれど

心の中では、今もずっと叫んでる。

 

 

マイノリティと 呼ばないで。

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コメント

17

ユーザー

誰を好きになろうと、その人の自由だし、好きって言われたからネタにするんじゃなくて、」自分には誰かが恋心を抱くような魅力があるんだ」っていう受け取り方を、私はしますね。 私、友達(女子)に告白されたことありますよ。 絶対周りに知られないようにしたし、その子とは今も仲良しです、

ユーザー

世の中は最近マイノリティを受け入れつつありますけど、やはりいつの時代になっても『普通の人とちょっと違う何か』が我々の心に残ってしまうんですよね…。 素敵な作品ですね´`*

ユーザー

私はBLとか全然読めるので、そういう方を攻める人が居るのはやっぱり残念です(´・ω・`) 主人公の心情がよく分かる書き方で、凄いですね。いい作品でした。

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