深夜の病室は 息をひそめたように静かだった
蛍光灯の光が消えると 心臓の音だけがやけに大きく響く
阿部亮平
...うるさいな。今日も。
俺は小さく笑ってそう言って胸を押さえた瞬間、まぶたの裏がふっと白く光った
真っ白な部屋
風のない空気の中で 一人の"少女"が立っていた
彼女は白い服を着て、 まるで光そのものみたいに淡く揺れていた
少女
ねぇ、聴こえる?
阿部亮平
...誰?
少女
これ、あなたの音だよ。
少女
あなたの中で、まだ生きてる音。
少女は微笑んでそう言った
阿部亮平
...生きてる?
少女は静かに頷く
少女
うん。あなたが笑うと、あたたかくなる。
少女
あなたが泣くと、胸がぎゅっと締めつけられる。
少女
でもね、それが嬉しいの。
阿部亮平
嬉しい...?
少女
だって、生きてるってことだから。
すると少女は そっと手を伸ばして俺の胸に触れる
少女
この音を、大切にしてね。
少女
それはあなたのものであり...
少女
わたしの、想いの続きだから。
阿部亮平
待って、君は誰なんだ?
すると少女はまた微笑む
少女
"お姉ちゃんって呼んで"...あのときみたいに。
その瞬間 白い光が弾け景色が崩れ落ちる
俺は病室の天井が視界に入り 目を覚ました
阿部亮平
...夢?
息を整えながら胸に手を当てる
阿部亮平
(鼓動がまだ速い。)
阿部亮平
(名前もまだ知らないのに、どうしてあんなに懐かしく感じるんだろう...?)
まるでこの心臓が "彼女"を覚えているみたいだった







