テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

君と夏

一覧ページ

「君と夏」のメインビジュアル

君と夏

9 - 3話 ゼラニウムと花言葉

♥

4

2024年08月18日

シェアするシェアする
報告する

私の名前によく似た花がある

(幼い頃、図鑑を見ていた時に知った花)

その花の花言葉は私とは全く関係無いものだ

私はあの子を、藤花ちゃんを傷つけることしかできないのだろうか

(何も考えたくない)

遂にその日がやってきた

7月を迎えた今日は清々しい夏の青空だ

(聖人なんて存在しないと証明する日にきっとなるはずだ)

(なるはずなんだ)

胸が重苦しくて痛い。醜い感情は深くなるのに、あの子の眩しさは変わらない

早く。早く。終わらそう。こんな思い

マネージャーの仕事で二人きりな今、やることはたった一つだけ

たった一つなんだ

(後は楽になるはずだから)

なのに口から言葉が出ない。何一つとして

(どうして私は躊躇っているの?どうして…)

横目にあの子を見てみる

やっぱり藤花ちゃんは眩しかった。その眩しさに失明してしまいそうだった

藤花

どうしたの葵ちゃん?

えっ?

藤花

ずっと、見てるからどうしたのかなって

なっ、何でもないよ!

危ない。気づいてたのか…。流石に見過ぎたかな

藤花

葵ちゃん。一回休もう

うん

そう言われるがままに私は休み始めた

藤花

…葵ちゃんってさ、もしかして疲れてる?

藤花ちゃんが聞いてきた。突然言うので私は呆気にとられてしまった

そんな事ないよ!私めっちゃ元気!

藤花

本当に?

……(本当だ。私は本当に元気だ)

心配するなんて余計なお世話なんだ

藤花

…私が勝手に思った事なんだけどね

うん

藤花

二人きりだから話すね

私を置いて藤花ちゃんは話をどんどん進めていく

…うん(…これ以上はやめてよ)

藤花

葵ちゃんって、いつも無理してるように私には見えてるんだ

藤花

辛そうに見えるんだ

…うん(ねぇ、やめてよ)

藤花

こんな私で良いならさ

藤花

いつでも話聞いたり、一緒に考えたりするから

もうやめてよ!

藤花

私のこと頼って?

本当に…やめてよ…

心が崩されていく。崩壊は止まらずにボロボロと砕け落ちてバラバラに散っていく

(私、今どんな顔してる?)

…大丈夫だよ

それに、友達とかじゃないでしょ?だから相談はやめとく

必死に言い訳する

藤花

なら、今から友達になろう!

藤花

そしたら遠慮せずに話せるよ!

私の嘘が傷ついていく

起きた事はただ一つ。私がいないと証明しようとした聖人に今、手を差し伸べられている

その手を散々嫌ったはずなのに、向けられるとその手を否定できない

(私は…私は…私は!)

言葉の暖かさか、罪悪感か。私の目は涙で溢れた。全く止まらなくて恥ずかしくなる

こんな姿は誰にも見せたこと無かった。見せない為にたくさん堪えてきたのだ

(もう私、嘘だらけのガラクタじゃん)

藤花

葵ちゃん…

悲しそうな声で、あの子は呟くように言う

そして藤花ちゃんは私を抱きしめた。とても優しく。暖かく。じんわりと

(ごめん)

(ごめん。ごめん)

(ごめんなさい)

私の頭には同じ言葉が浮かんでいっぱいになる

ごめん…

藤花

大丈夫だよ、葵ちゃん

そう言うと藤花ちゃんは自分のリュックを漁り始めた

何探してるの…?

藤花

秘密。ちょっと待ってて

目的の物を見つけたらしい藤花ちゃんは、私に何か差し出した

これ、ゼラニウム…?

藤花

うん、そうだよ。友達になった証

藤花

造花だけどね

…ありがとう

顔を見上げると、藤花ちゃんは静かに微笑んでいた

部活が終わり、私は逃げるように帰路を急いでいた

(考えるのはやめよう。家に早く帰ろう)

手には藤花ちゃんから貰ったゼラニウムの造花を握っている

(ゼラニウムの和名は天竺葵といったはずだ)

私の名前と物凄く似ていた

花言葉は何だったっけ…?

昔見た図鑑の記憶を探って考えるみる。確かゼラニウムの花言葉は…

真の友情、だったはずだ

この作品はいかがでしたか?

4

コメント

2

ユーザー

作者のゆゆです。「君と夏」を読んでくださりありがとうございます。今回は裏設定です。この物語はモブに当たる人物以外の名前は花の和名をもとに名付けています。花は花言葉から選んでおり、その人物の本質を表しています。ちなみにモブに当たる人物の名前には共通点があります。わかりやすいとは思いますが、是非見つけてみてください。

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚