先生
授業の内容が全然入ってこない。
先程の休憩の時に兄から3歳下の弟が早退するからお迎えに行くとの連絡が来た。
最初は俺が行くと言い張ったが、兄ちゃんには前にこの日の午後の授業が楽しみだと話しており、他の授業の単位を取れている彼が弟のお迎えに行くことになったのだ。
ri.
思わずため息が出た。
とっても心配だった。
きっとまた夢を見たのだろう。
ころちゃんが過去の夢を見てしまうのは長男の兄ちゃん、次男の俺と本人のころちゃんしか知らない。
他の兄弟には心配をかけたくないそうだ。
授業が終わったらバイトがあるからバイトが終わったらすぐに帰ろう。
ようやく授業が終わり、バイトの最寄り駅を向かう電車に乗り込んだ。
耳にはイアホンを付けて好きな音楽を流している。
いつもなら気分も上がって元気なはずなのに今日は空とは対照的にどんよりとしていた。
ころちゃん大丈夫かな、苦しくないかな…
母さんとお父さんが生きていた頃のように幸せかな…
そんなことを考えながら静かに揺れる電車の中で眠りに落ちた。
ri.
どこだ、ここは?
白い。
周りには兄弟がいる。
兄ちゃんの手を握りながら泣いている俺がいた。
まだ幼稚園児くらいの寝てるるぅとくんを抱えたお父さんもいた。
みんなからは俺が見えていないようだった。
これって言わゆる第三者目線…?
そうだ、ここは病院だ!
母さんが…死ぬんだ。
これはいつだろう。
そうだ、9年前。
俺がまだ小学4年生の頃。
母さんには持病があり、急にピークが来てしまい、余命が宣告されてしまったのだ。
母さんはベッドに横たわっていた。
ri.
俺は考えるよりも先に母さんを抱きしめに行った。
でも出来なかった。
俺の体はお母さんをすり抜けてしまった。
そうか…これは俺の記憶。
もう一度母さんと話すことは出来ない。
会うことは出来ないんだ。
母さん
一人一人を見回しながらいつもの笑顔で言った。
na.
兄ちゃんは静かに涙を流しながら母さんを見ていた。
ri.
俺は泣きじゃくりながら言っていた。
母さん
母さんは優しく微笑んだ。
母さん
まだ体が小さい5男とお母さんのベッドの横で泣く4男はより一層激しく泣いた。
3男は一生懸命涙を堪えて自分の服の裾を握りしめていた。
母さん
俺はみんなの手を引いてお父さんと他の兄弟と外に出て行った。
母さん
na.
母さんは兄ちゃんに何か言っていたずらっ子のように笑った。
それを聞いて兄ちゃんは驚いたように目を見開いた。
母さんはまた何かを言って微笑み、兄ちゃんは病室を出た。
急に思い出した。
そうだ、あの時兄ちゃんはお母さんに呼び止められていた。
でも何の話をしていた?
兄ちゃんは母さんのどんな言葉を受けた?
母さん
驚いてバッと顔を上げると母さんと目が合った。
母さんは俺が見えるの?
でもさっき俺は母さんに触れられなかった。
母さん
そう言ってまた優しく微笑むと俺の頬に触れた。
ri.
俺は母さんの腕の中に飛び込んで泣いた。
母さんは優しく俺の背中をさすってくれて、
母さん
と、言ってくれた。
母さんの横にあの優しい笑顔のお父さんもいたような気がした。
ri.
そこで目が覚めた。
ちょうど最寄り駅に着いて慌てて降りた。
ri.
母さんは俺に話しかけていた。
あれは俺の想像じゃなくて本当に母さんなのだろうか?
それに、あの時兄ちゃんは母さんからなんて言われたのだろう?
母さんの「救ってあげて」と関係あるのだろうか?
でも兄ちゃんにあれ以来特に変わった様子はない。
るぅとくんも気づいてるって、まさか過去を思い出した?
でも9年前の頃の記憶があることなんて有り得るのだろうか?
いや、ない…はず。
帰ったら直接聞いてみよう。
もう十分経った。
次回に続く…
コメント
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続き待ってますたのしみです!