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月夜に照らされた濡れた髪…

指先…

そして、唇。

僕を惑わす全てが、泡となり、海へと消えた。

きっと君は人魚だったんだ。

願わくば、もう一度君に会いたい。

2つ、伝えたいことがあるんだ。

だから僕は待つよ、また君と会える日を…

ずっと、ずっと…。

3か月前 地方の某中学

学生A

おい、死ねよ田島

うっ…

放課後の校舎に響く、ドスッという鈍い音。

僕は腹部を抑え、その場にうずくまった。

目の前には、今僕を殴った同級生。

学生A

今日は3万円持ってくる約束だったよな〜?

無理だよ…この前だって2万渡したのに

学生A

ふざけんな!

そう言ってまた同級生は僕を殴った。

痛くて涙が出そうになるのをグッと堪える。

学生A

ったくよ〜

学生A

役に立たねぇな

そして彼は僕の髪をつかみ

学生A

もう死ねよ

と吐き捨て、その場を後にした。

………っ

悔しい、痛い、怖い…

でも僕は泣かない。

あんな奴の為に、泣くもんか……

っはぁ

そうしてフラフラと立ち上がり、家への帰路についた。

ただいま…

玄関を開け、声をかけても返ってくることのない返事。

しかし、女性用のヒールはある。

母は居るのに、僕に「おかえり」と言ってくれたことは1度もない。

……

リビングのドアを開くと、いそいそと化粧をする母が居た。

派手なドレスに身を包み、部屋中に充満させるほどの香水の香りを体に纏っている。

あんた、帰ってたの

今帰ったんだよ

母は一瞬僕を見た後すぐに鏡へと視線を戻し、自分の顔へ濃いシャドーを落とした。

今日も仕事?

そうよ。

最近ずっとだね

体壊さないでね

僕が母の背中へと声をかけた。

その時、一瞬その場の空気が止まり

ガシャン!!!

と大きな音が部屋へ響いた。

目の前では、母がテーブルの上にあった化粧品を全て床へと投げ捨てている。

誰のせいで、こんな働いてると思ってんのよ!!!!

…………

「やばい」と心の中で呟いた。

あんたが出来たせいで、私は彼に捨てられた!!

堕ろせもしない程時間も過ぎてた!

産むしか無かったのよ!!!!

………ごめん

ヒステリックになった母は止まらない。

どんな言葉が引き金になるかも分からない。

ああ、僕は母と何気ない会話をしたかっただけなのに…。

あんたなんか、望んでなかったのに!

そう言って、母はカバンを持って家を出た。

1人になった部屋で、母が撒き散らした化粧品をただ呆然と見つめていた。

泣くもんか…

自分に言い聞かせるように呟く。

僕は、学校でも家でも望まれてない。

僕の居場所はどこにあるの?

僕の存在意義はどこ?

僕は必要?

要らない人間…ですか?

色んな感情が、一気に押し寄せ頭がパンクしそうになる。

気がついたら僕は何も持たずに、家を飛び出していた。

走って、走って、何も考えたくなくて…ただひたすら走った。

気が付くと、外は真っ暗で、波の音だけが響いていた。

そして、僕は崖の上まで来ていた。

…………無意識に、

死のうとしてる?

まあ、いいかも

こんな世界、居てなにが楽しい?

幸せな時間なんか、きっとおとぎ話の中だけなんだ。

そして、崖っぷちまで少しずつ歩き、ギリギリで立ち止まった。

さようなら

そう言い、目を瞑ったその時

その場所、取らないでくれる?

!?

背後から聞こえた、女の子の声。

後ろを振り返ると、そこには1人の同い年くらいの女の子が居た。

黒髪が美しい程月明かりに照らされて、白い肌がより一層輝いて見える。

君は?

女の子

ねえ、そこ退いてくれる?

なに?説得してるの?

無駄だよ。僕は死にたいんだ!

女の子

あんた人の話聞かないって言われない?

そう言って女の子は僕の胸ぐらを掴み、

女の子

ここは私が死ぬ場所なんだから汚すなって言ってんのよ。

と言って、僕を睨みつけた。

死ぬ場所?

言葉の意味が分からず、僕は問いかけた。

女の子

そうよ。

女の子

私は3ヶ月後にここで死ぬの。

女の子は僕の胸ぐらを話、その場に座って月を見上げた。

意味分かんない

そう言って僕はその場を去ろうとした。

変な女の子に見守られながらの自殺なんて嫌だと思ったからだ。

女の子

ねえ

その時、女の子が僕に声をかけた。

少し低めの、消えてしまいそうな小さい声。

女の子

君は本当に死にたいの?

女の子

本当に君の見ている世界は死にたくなる世界?

真っ直ぐに僕の目を見て問いかける彼女に思わずドキッとした。

君になにが分かるんだ。

そう言い残し、僕はその場を後にした。

世界?

本当に死にたいかって?

僕のなにが分かるんだ。

勝手なこと言いやがって。

モヤモヤとした感情が胸に広がる。

しかしそれよりも、彼女の綺麗で、なのに消えてしまいそうな儚い雰囲気に思考は支配されていた。

この日僕は、人生で最愛の人と出会った。

そして、彼女を失うカウントダウンが始まったんだ。

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