コメント
2件
学人
学人
学人
学人
おれはパソコンで 動画サイトのMeTubeを見ながら
適当にMVを流していた
けどなにを聴いても 失恋の悲しみは間断なく
おれの心を蝕みつづけた
学人
学人
学人
学人
学人
学人
そう思っていたとき
あるひとつの動画に
おれの目は釘付けになった
学人
学人
「あなたの人生」 そう銘打たれた動画があった
再生時間が表示されていない
ライブ配信という訳でもないらしい
学人
学人
学人
半分の好奇心と 半分の苛立ちで
おれはそれをクリックした
学人
学人
黒い背景 液体がぐちゃぐちゃ動く音
赤黒い液体 真っ白な光
「元気な男の子ですよ!」
泣き声
涙を流して喜ぶ 父母の顔
それはもう随分前の 若々しい両親の姿だった
学人
おれは概要欄に飛んだ
そこには箇条書きで このビデオの概要が書かれていた
これはあなたの目を通して 撮影された動画です
動画の開始時点は あなたのビデオのはじまり、
動画の終了時点は あなたのビデオのおわりです
この動画は倍速再生が可能です
倍速再生の倍率に上限はありません
なおシステムの都合上 倍速を低速に変更することは できません
おれは少し寒気をかんじて 振り返る
誰かが俺のことを撮影してはいないかと 思ったのだ
しかしそこには誰もいない
おれは再びパソコンに向き直る
学人
画面に映し出されたのは これ以上なく嬉しそうにしている 父と母だ
もしかすると
俺はこのときがいちばん 幸せだったのかもな
そう考えて かえって悲しくなる
学人
学人
おれは動画の設定画面を開いて
「速度×2」をクリックした
すると
動画の中のすべてが ちゃかちゃかと早送りで進んだ
まだまだうんざりするほど
「幸せなシーン」は長い
学人
学人
幸せな自分の過去を見ても 現状の自分には受け入れられず
おれはさらに 「倍速×2」をクリックした
幼稚園の入学式
積み木で遊ぶ子どもたち
友だちの家でゲーム
学人
学人
学人
学人
学人
学人
学人
そうだ
いまの自分にとって いちばん大切な元カノの沙綾
そのシーンにたどり着けば
きっとあのシーンも見られるはずだ
学人
学人
学人
おれは 沙綾と身体を重ねた場面で
もう一度彼女と目を合わせて 「追体験」したかった
小学校に入学
10歳の誕生日
着慣れない制服
受験勉強
早送りですすむ映像は だんだんと現在に近づいていた
そしてとうとう
高校に入学したおれが 沙綾と出会うシーンまできた
学人
学人
おれは倍速を止めるべく
「標準速度」を選択した
「倍速を低速に 変更することはできません」
学人
学人
沙綾といたシーンも 一瞬で終わってしまった
暗転
自分の部屋
画面に写ったおれの顔
学人
画面に写った顔は 驚愕した表情のおれ そのものだった
学人
突如画面の中の顔が そう呟いた
学人
学人
学人
学人
学人
学人
学人
おれは予期しなかった事態に 恐ろしさを感じながらも
学人
学人
そう聞き返した
学人
学人
学人
学人
学人
学人
学人
学人
学人
わけの分からない 彼の言葉に
おれはだんだん苛立ってきた
学人
学人
学人
学人
そう言うと画面の中の学人は
左手の指で左目の瞼を おおきく開いた
学人
学人
彼の右手には ボールペンが握られており
カチン、と 芯が出た
彼はそれを画鋲でも刺すように 簡単に左の眼球に突き刺した
学人
学人
学人
串に刺さった みたらし団子のような眼球が 白い腺を引いて
血液をドポドポと垂らしながら えぐり取られた
彼はペンから眼球を引き抜くと ついで右目の目玉を潰しにかかる
学人
同じように眼球をゆっくり引き抜くと 眼孔の奥部と眼球を繋げている腺を
両手で引っ張った
学人
ぶちんと腺が切断され
両目を失った男は
ぬめぬめと輝く人差し指で
画面越しに俺を指さした
学人
学人
学人
学人
学人
学人
学人
おれはもう見ていられなくて
震える両手で画面を閉じた
学人
学人
すると左手が震えだし
おれの意思とは関係なしに動きだした
その親指と人差し指が
左目を大きく開いたのだ
学人
学人
ガクガクと震える右手は ボールペンを握り
しばしの膠着状態のあと
勢いよく目玉に向かって 飛び込んできた
Fin. 最後までお読みくださり ありがとうございました
この物語は フィクションです