りょう
りょう
りょう
りょう
何回かやり取りをしていく間に、知らなかったさとみ君を知っていく。
家族構成や、得意な科目。サッカーが好きなこと、弟を可愛がってること。
だけど、それだけじゃない。
好きな人には気を使って話題を振ってくれるところ。
相手を知ろうと色々聞いてくる真っすぐさ、そして自分の事をもっと知ってもらおうと色々教えてくれるところ。
知らなかった彼を知っていくとどんどん印象が変わってきた。
もっと自由に、思うがままに行動する人だと思っていた。
悪く言えば自分を押し付けてくる人だと。
でも違った。向き合って、話をしてくれる人だ。
ノートで話していると、自分の返事が、“僕”の言葉なのか、莉犬を装っているのかわからなくなってくる。
彼からの返事を楽しみにしていて、読むと嬉しくなって、返事を書いてる間は楽しんでる自分がいるのがわかる。
おまけに………。
さとみ
ころん
さとみ
放課後、放送委員の会議が終わって靴箱に行くと、ちょうど帰るところのさとみ君に出くわした。
珍しく1人だなあと思ったら、今日はジェル君たちは遊びに出かけてるらしく、1人で帰るらしい。
合コンで言葉を交わしてからさとみ君は僕を見つけるたびに声をかけてくる。
朝、通学路でお互いを認識するようになり、最近は毎日「おはよう」と挨拶するようになった。
校舎ですれ違えば「よ」と手を上げてくれる。
さとみ
さとみ
ころん
さとみ
一緒に?学校から駅まで一緒に?並んで学校を出るってこと?
無言で固まった僕に、さとみ君が「嫌なのかよ」と、少し拗ねたような顔をした。
ころん
慌てて否定する。もちろん嫌なわけではない。
ただ彼と歩いていると目立ってしまうので躊躇してしまう。
挨拶するようになっただけでも友達に「いつ仲良くなったの」と不思議がられている。
一緒に帰るってことは、それ以上にいろんな人に注目されるだろう。
絶対に変に誤解する人も出てくるだろう。
さとみ君はそういうの、気にしないのだろうか
莉犬が好きなのに、僕と変な噂を立てられてもかまわないのだろうか。
多分、周りの事なんて気にしないのだろう。
僕の心中は彼には全く理解できないのかもしれない。
さとみ
ころん
そうじゃない、という言葉で一緒に帰ることを了承したと思ったのか、さとみくんはスタスタと歩きだしてしまい、慌てて追いかけながら声をかけた。
ゆりちゃん
僕の呼びかけにさとみ君が振り向いたとき、彼を呼ぶ女の子の声が聞こえて、僕も振り返った。
女の子が靴箱の陰からひょこッと顔を出した。
茶色く染められた髪の毛は、あご筋で綺麗に切りそろえられ、軽く内巻きになっている。
目鼻立ちのはっきりした綺麗系の女の子だ。
ゆりちゃん
ゆりちゃん
さとみ
さとみんという親し気な呼び方から、おそらく理系コースの女の子だろう。
ゆりちゃん
少し離れているからか、女の子は僕の事なんか見えていないかのように通り過ぎた。
そして、さとみ君の横に並んだ。とても自然に。
肩を並べる2人の後ろ姿に、胸の中に黒いしみみたいなものがポツリと落ちて、ジワリと広がっていく。
なんだろう。この感じ。
さとみ
2人は一緒に帰るんだろうな。とお似合いの二人の背中を見つめながら考えていると、彼の口から僕の名前が聞こえてきた。
ゆりちゃん
ゆりちゃん
初めて聞く名前に女の子が小首を傾げると、さとみ君が振り返って、僕を指さした。
女の子が僕の方を見たけど、やっぱり誰?という顔をしていた。
ころん
手を振って、気にしなくていいと伝えるけど、彼は怪訝な顔をした。
さとみ
何でといわれても、顔見知り程度の僕と帰るより友達を帰った方が楽しいはずだ。
僕とでは会話も弾まないだろう。
ゆりちゃん
さとみ
さとみ
さとみ
ころん
『はい』って何だよwと言ってさとみ君が笑いながら歩いていく。
思わず返事をしてついていく自分の言動に、自分でちょっとびっくりした。
ゆりちゃん
クンッ
ころん
ゆりちゃん
ころん
ゆりちゃん
さとみ
ころん
さとみ
そういう意味じゃないけど、言っても分かんないだろうなと思ってそれ以上言うのをやめた。
それに、ちょっと嬉しいというか、なんというか…。
さとみ
ころん
さとみ
さとみ
無理ってそんな本人前にして言わなくても。
こうやって話すようになって、やっぱりさとみ君は正直者だと再確認した。
無理なことは無理だと、嫌なことは嫌、オブラートに包まずにズバっと直球で口にする。
失礼だけど、正直者というか、バカ正直の方が近い気がする。
フォローしているようで、出来てないところとか、悪意がないところとか。
さとみ君からすれば自分の意思がなく、曖昧にしか答えない、ふわふわと風に流されているような僕に苛立ちを覚えるのだろう。
実際面と向かって何回か言われた。
なのに、どうして僕に絡んでくるんだろう。
それが不思議で仕方がない。
無理だとか、イライラするだとか、直接言う割には僕を避けようとしない。
どうして、とさとみ君に問えば、すぐに素直な言葉で返事をくれるだろう。
だけど、聞かないまま、疑問だけ抱えてさとみ君と話をした。
本当は、なんとなく、答えがわかっていたのだ。
僕が、莉犬の友達だから…。
それだけの理由だろう。
りょう
りょう
りょう
りょう
りょう
りょう
コメント
5件
連載ブクマ失礼しますぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!!!
最高すぎます✨ いや、まじで終わりがどうなるのか.... 桃くん青くんって知ったときちゃんと受けとめてくれるかな....もう!わからない😅続き楽しみにしてます!