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神だっっ!!!青組お互いのためなのすっごい素敵です!!
新バージョンデビュー! こんにちは!soraです!!
慣れてないから扱い難しいね...
「ロボットパートナー」シリーズ完結!! ということで、残るは青組さんですね!
パートナーロボットⅠとⅡを見てなくても流れは分かるんだけど、順番に見た方がなるほどぉ!と思って見れるかと思います!
Ⅱとⅲは番外編みたいな感じだからね! ↑(番外編の方が明らかに長い人)
Let's go!!
2023/12/11投稿
「ロボットパートナーⅲ」
青
水
水
水
青
玄関口で延々と俺の身だしなみを整えてくるこいつはほとけ。
俺のパートナーロボットだ。
青
水
水
ほとけの言う「カイケン」とはないこ(と付き添いの俺)の研究発表会のことだ。
なんやかんやあって今までの研究成果を発表することになった。
水
「りうちゃんとの勝負」というのは俺とないこの身だしなみをどちらがより整えられるのか的な事だろう。
青
青
水
青
水
「当たり前でしょう?」と言わんばかりにニヨニヨしてるが、ほとけが会見を聞いたとて何も分からない気がする。
嫌な訳では無いが。
水
青
青
荷物を肩にかけて玄関を開ける。
水
青
ドンッ
ガチャっという音と共に前の方にドンッという何かにぶつかった衝撃が走る。
青
青
紫
この常にハイテンションな紫色の瞳の奴は初兎。ないことりうらの兄だ。
新聞記者で俺の家とは結構離れたところで過ごしている。
青
黄
青
こちらもないことりうらの兄だ。ちなみに初兎がアニキのパートナーロボット。
桃
赤
青
ハイテンションな奴とめちゃめちゃ俺の事見てくる奴と通常運転の奴×2と....
青
紫
水
水
水
桃
連絡しろよせめてさ。
桃
青
今日の研究発表会の主役はないこだ。やはりカッチリきめてきている。前髪が七三分けになっていて気合いを感じる。
赤
水
赤
水
赤
水
ほとけより背の高い俺の肩に体重をかけてかがむよう促され、興奮気味に俺の頭を指さす。
服が乱れるのだがいいのだろうか。
桃
青
青
黄
紫
似合っている...というよりかは溶け込んでいる。仕事でたくさん着てきたのだろう。
仕事ということは研究発表会の取材か。
桃
紫
黄
紫
青
赤
水
これが意外とバチバチでも無いのだ。
とぼけた声を出しているが、ちゃんとほとけも覚えている。
青
5歳の誕生日に、その姿を初めて目にした。
「パートナーロボット5」歳になった子供に渡すという義務があるらしい。
正直そんなに興味は無かった。ひと足先に5歳になった友達は舞い上がっていたけど、あまり共感できなかったし。
水色から紫色へのグラデーションの髪と、最高の笑みが浮かべられた幸せそうな瞳は、俺にとって少し不気味だと思った。
水
青
水
青
いたって普通に自己紹介をしただけなのに、なぜか指をさされ...
水
バカにされた。
ずいぶん難しい言葉だが要するに無愛想だと言いたいのだろう。爆笑しながらさしてくる指をパシッと落とす。
青
青
水
青
水
ちょっと煽るとすぐ焦りはじめた。眉間に皺を寄せて俺の胸にとんっと人差し指を突きつけてくる。
水
水
青
水
青
勉強に自信が無いわけではなかったので、ぜひ受けて立つことにした。拒否して煽られるのも嫌だし。
にやっと笑ってみせると向こうは背伸びしたような笑みを浮かべる。
水
水
これがこいつとの出会い。
水
青
水
中学1年生の秋。
いつもより賑やかな廊下を2人並んで歩く。今日の朝、第1学年の中間テスト順位表が張り出されるのだ。
赤組はと言えば、「順位で今日の晩ご飯が外食かどうか決まる」とか興奮気味に伝えて来た。アニキ達と一緒に順位を見るそうだ。
青
水
青
水
青
「さすがパートナー」とは照れくさくて言わないが、たまにこういうシンクロがある。別に悪い気はしないが謎現象だ。
今もそうだけど、大体そういうときは2人でけらけら笑ってる。
水
青
廊下を歩いているうちに張り出されている紙が見える。見えると言っても人が群がってるので端っこだけだが。
水
1位に近い方を指さして言うほとけ。
当たり前のように進んでいくのが少し面白い。
水
青
指を指しながら人の名前を目で追っていく。ほとけが俺の名前を探し始めたので、こちらは「いむ」という字を探す。なかなか居ない。これは結構上位なのでは。
水
青
水
青
ほかの名前より隙間が小さく、並んで書かれている「いむ」と「いふ」の名前。同率2位だった。
青
水
青
1位との点差もそんなに無い。それに同率は同率だ。
青
水
青
青
水
ちなみに「順位が分かるまでのお楽しみ」とか言って、テスト返却は終わっているが互いの点数は1ミリも知らない状態だ。
ホームルーム後
水
青
クラスが各々帰りの準備を始めている。自分の結果はもう知っているので、お互いの紙を同時に開く戦法でいこうと話し合った。
自分の反応が素っ気ないのは癖のようなものだが、本当は心臓がバクバク鳴ってる。
水
バッ!!
青
水
結果⤵︎ ︎ 国語、英語→青Win 理科、社会→水Win 数学→同率
水
青
「うっそぉ」と騒ぎ倒しているほとけ。たしかにすごいミラクルだとは思うが、もう少し声を落としてほしい。
青
水
水
青
人の結果表を見ながら言うことじゃ無いと思う。
青
青
水
友達
青
グラウンドまで出て校門に向かって歩いていると、後ろから猛ダッシュしてきたであろう友達に激突された。
友達
水
いつもなにかと話しかけてくるペアだ。パートナー同士の仲が良いのが有名で、いっつもくっついている。
水
ほとけが弾けた笑顔で言う。誰にでもああ言うような奴だからいつもは別に気にしないが、正直苦手な2人組みなので少しうっとなる。
が、あからさまにうっとすると流石に嫌な奴なので抑える。ポーカーフェイスは得意だ。
友達
水
友達
青
友達
水
友達
友達
なぜか得意げなほとけと「まじか!!」と興奮気味な友達に挟まれる。満足そうにこちらを見るほとけになんで?という視線を送る。
が、特に反応してくれなかった。
水
友達
無邪気な声でずいぶん無神経なことを言う。前髪の下の目がやけにニヤついていて、言ってしまえば少し気色悪い。
ほとけはこういうの、反応に困るだろう。得意なやつじゃない。
青
水
水
笑顔を崩さず言い返すほとけ。昔は「無理だ」って言っていたのに、成長したらしい。
ロボット側の友達が、言い返されてうっとした顔になる。
友達
水
水
よくお分かりで。
自分が怒りっぽいと自覚しているのなら直して欲しいと思う。
友達
水
水
水
青
友達
友達
水
友達
友達
友達
ただの俺の妄想だが、自分の価値観を否定されていることに怒っている気がする。さっきまで歩いて話していたのに、急に止まった。
友達
青
パートナーロボットの制度が導入された当時にあった古い思想だ。人間の方が上だと考える人が多かったらしい。
それをロボット側のパートナーが言ってるのは、すごい皮肉だと思うが。
水
こいつは知らないっぽい。
友達
友達
水
友達
水
水
友達
水
ヒートアップしてきた喧嘩。流石に少し目立っている。ストップをかけたいが、ほとけがずいぶん怒っているので近づけない。
水
水
友達
水
水
水
友達
言い返す言葉が無いのか、頭に血が上って限界なのか、ずいぶん目付きが怖い。
「おさまったかな」と思った。 言い返さなかったから。
友達
彼の足元にあった石を乱暴に拾って構えた。完全に、こちらに向かって投げる姿勢だ。
とっさに足が動いた。初めてみるくらいに怒っていて過去一キレた険相をしているほとけが怖くて近づけないとか、もうどうでもよかった。
ビュンッッ(石
青
水
俺の引っ張る力と石を避けようとしたほとけの力でぶつかり合って転けそうになるが、両方なんとかこらえる。
石は跳ねもせず転がりもせず足元にぽつんと落ちていた。
水
一瞬避けたことにぼーっとしていたほとけだが、顔の方向が変わり向こうを睨みつけた。
水
友達
友達
投げた自分に驚きながらも必死に言い返そうと言い訳を探す友達。もう泣きそうな顔をしている。
もともと気が弱そうな雰囲気だと思っていたが、パートナーと居る時はそんなこと無かった。むしろムードメーカー的な存在だ。
1人になると、後が怖い。彼はそれを体験しているように思える。
水
友達
青
たじたじしている友達にさらに怒りが沸いてきたのか、まさかの自身のパートナーまで石を拾っていた。
人に投げるような奴じゃない。ちょっと抜けてても人の痛みを想像できるくらいには賢い。
感情に身を任せてしまうような奴じゃない。
俺の認識はそのはずだった。
そのはずだったのに__
水
ビュンッッ(石
パートナーは投げてしまった。
友達
庇いにいった方へ当たる。しかもおでこらへん。頭に当たってしまったかもしれない。
青
水
思わず反射的に叱責すると、自分の意思を持っていた手と当ててしまった相手を交互に見るほとけ。
俺の顔も混乱していると思うが、彼の顔も泣き出しそうな、恐怖に侵されている顔だった。
青
友達
おでこと髪の境目くらいから血がつたっていくのを見てさらに血の気がひく。
意識を失っている様子が無かったのには安心したが、痛そうに顔を歪めている友達を見てパートナーが石を投げたことの重大さを感じる。
青
友達
"泣き出しそう"ではなく、もはや"ボロ泣き"の彼はよろけながらも走って校舎まで戻っていった。
青
当たったであろうところにハンカチを押し当てる。髪でよく分からないが、「うっ」という声がしたので多分あっているだろう。
友達
青
そっと手を離す。
両手が空いたので、友達の背中を押して校舎へ連れていく。
青
しょうが無いとはいえ、手が空いたのに自身のパートナーに寄り添わなかったのは、今でも後悔している。
青
翌日の放課後。相手の保護者とこちらの保護者が呼び出され、俺とほとけ、言い合いになった本人と怪我した友達も残った。
向こうは2人とも俯いていて、一方の頭にはガーゼらしきものが見える。
水
俺の隣には俯いてはいないものの視線がずっと横に向いている気まずそうなパートナー。
学年主任
学年主任
学年主任
友達
相手のお母さん
食い気味にすこし身を乗り出して俺らの方向(多分ほとけ)を若干睨みつけるような目付きで見てくる相手側の母親。
あまりいい気分では無い。
水
震えて裏返った声で呟くように謝るほとけ。
確かに投げて怪我させたのは事実だが、俺からすると「向こうから投げてきたのに」と思ってしまう。
母
深々と頭を下げる母親。それを見て胸が痛む。それはほとけも同じようで、すごく辛そうな顔をしている。
学年主任
ボードに挟まれた紙を見ながら質問を投げかける主任。向こうの母親の顔がぴくっと動いた気がする。
友達
友達
そこに昨日の勢いは無くて、しぼんだ風船みたいに大人しくなっていた。本気で反省しているのが見てとれる。
俺としてはもうこれで解決でいいと思った。まぁこの中では1番干渉していないし被害も受けていないので、俺が認めたところで何にもならないが。
相手のお母さん
相手のお母さん
母親に問いかけられて言葉につまる友達。完全にあれは当てようとしてたし避けてなければ当たってた。
それは本人が1番分かってると思う。
友達
友達
友達
暴露のように聞こえるが、これはきっと彼の優しさで、言えない事を代わりに言ってあげたのだろう。
学年主任
主任が俺に問いかけてくる。
青
青
怪我した友達がパートナーを庇うように言わなかったのは、パートナーがやった事がちゃんと悪いことだって分かっているからだ。
俺も真ん中に立って意見を言うべきだと思った。
相手のお母さん
相手のお母さん
相手のお母さん
どうやら友達の「昔の思想」は親からきているようだった。古きを重んじる家庭なのだろうか。
伝統を守ることは必要なことだと思うが、その思想を子供に押し付けるのは守株な教育だと思う。
相手のお母さん
相手のお母さん
水
母
母
悲しそうな顔で問いかける母。
その言葉にさらに俯くロボット側の友達。
青
なんで、向こうの母親はなにも言わないのだろうか。そんな涼しい顔で居られるのだろう。
もしかして、その思想に乗っ取ってロボット側の子供を軽く見ているのだろうか。
だとしたら...
友達
こいつもほとけも、可哀想だ。
学年主任
青
学年主任
学年主任
青
青
友達
青
青
要らない言葉かもしれない。
聞いても考えは変わらないかもしれない。
青
「__もそうやろ?」と問いかける。
首を縦にふってほしい。「うん」と言ってくれれば、俺の中の突っかかりが取れる気がした。
友達
水
友達
友達
友達
友達
水
青
水
青
水
学校からの帰り、いつもより少し暗い帰路を2人で並んで歩く。
母は「ご褒美」と言ってたい焼きを買ってくれた後、夕飯の材料を買いに行った。ということで、2人の手にはたい焼きが握られている。
青
水
水
一息ついてたい焼きを1口食べて、飲み込んでからもう一度口を開いた。
水
水
照れくさいのか不本意なのか、目線を「どこ見てんだ」というくらいそらしながら呟くように言うほとけ。
言わなくても分かってたはずのこと。 実際に口で言われるとこちらも変な気分になる。
青
水
青
水
青
水
昔こいつが言っていたのを聞いて魚系は頭から食べる癖がついてしまったのを思い出す。別にガチで信じているわけではない。
けれど、噂みたいな話を信じて楽しそうに過ごしているのに少し憧れたのだ。
青
水
青
青
人に投げるような奴じゃない。ちょっと抜けてても人の痛みを想像できるくらいには賢い。
感情に身を任せてしまうような奴じゃない。
その認識は、間違っていなかった。
青
水
青
人間を怪我させたロボットがどうなるか、1度聞いた事がある。
負わせたのがあまりにも酷い怪我だったら処分されてしまうそうだ。人間もそうだが、ロボットのほうが刑が重いらしい。
別に今回の怪我くらいでは処分なんてされないと思う。けれど、ほとけだけが責められるかもしれないという想像はしていた。
青
水
水
照れて拗ねられると思ったら、素直に受け取ってにへっと笑顔を向けてきた。謎目線からこいつも成長したなと思う。
水
青
水
青
「次同じことが起きたら?」
そんな考えが頭をよぎった。
まだ社会には人間よりロボットが下という思想が残っているのが現状だ。世間の目も気になるだろうし。
青
桃
肩を揺さぶられる感覚。
青
桃
青
数年前の思い出を振り返っていたら、いつの間にかほげーっとしていたらしい。目を覚ますために伸びをすると、ないこに呆れたような顔で見られる。
青
桃
桃
もはや泣き出しそうな顔でそのままさらに肩を揺さぶってくるないこ。
朝のあの爽やかな顔はパートナーと兄達が居たから無理していたようだ。笑顔が引きつっているのはなんとなく感じていた。
青
桃
青
常備している胃腸薬をないこに渡す。
青
桃
青
桃
自分のペットボトルを引き寄せて薬を飲むないこ。「ふぅ...」とか言って、表情は少し落ち着いたようだ。
正直気持ちの問題だと思う。 言ったら拗ねられるけど。
桃
青
桃
この研究所を管理しているAIロボット「chimera Ⅳ」およそ2週間前くらいにその大型ロボットにプログラムのズレが起きた。
そもそも今日の研究発表とは、ずっと研究していた事によりその暴走を止めたないこ(とオマケの俺)のお披露目会というようなところだ。
ちなみに研究内容の題名は「パートナーロボット暴走の対処法」
昔りうらに異変が起きたのがきっかけでないこが調べ始めた研究だ。
桃
桃
桃
青
桃
桃
青
最初「研究所に入りたい」と相談した時、別に驚く様子も猛反対することもなく、すんなりと「いいよ」と言われた記憶がある。
その反応には俺の方が驚いた。なんならどう説得しようか5パターンは考えていた。
ただパートナーは一言、「無理せず、途中で投げ出さないならいいよ」と笑いながら言っただけだった。
青
青
桃
青
桃
別に無理してるわけじゃない。上に押し付けられているだけだ。
...と、言い訳したいところだが、そう言い訳すると「押し付けられたら無理していいの?」と正論で詰め寄ってくるので言えない。
桃
桃
青
ついさっきまで思い返していた記憶がちらついた。
あの時からやけに用心深くなったのは外から見てもすぐにわかった。何をするにも石橋を叩いて渡ってるみたいな。
青
「そうかもな」と適当な返事を返す。何を期待していたのかは知らないが、ないこは面白くなさそうに相槌をうって立ち上がる。
桃
飽きたわけでは無かったらしい。
青
青
桃
水
赤
事前に聞いていた関係者席でりうちゃんと共に待機中。
ずっとそわそわしている隣人に笑えるが、自分も人のことを言えないくらい緊張している。
赤
水
赤
※ドンピシャ
水
2週間前くらいだろうか。りうちゃんがわざわざうちに来て「ないくんが構ってくれない」と相談してきたことがあったのだ。
今朝は仲がいい感じだったが、純粋にどうなったのかが気になった。
赤
赤
あの日、りうちゃんが「なんで研究所なんかに就職したんだろ」とぼそっと呟いた。
りうちゃんのためなのはいふくんとないちゃんが同期で研究所に入った時からなんとなく勘づいていて、本当はその場で言ってしまいたかった。
けど、ふたりの問題はふたりで解決したほうが絶対良い。いふくんならそうする。
水
あえて黙って正解だったみたいだ。
赤
水
赤
水
なぜかたい焼きが頭の中にぽんっと浮かぶ。
あれ?「いふくん=たい焼き」だっけ?
水
赤
赤
水
水
水
赤
僕の答えに全然納得のいっていないりうちゃんが不貞腐れた顔で言ってくる。
その顔に少し笑って、本命の理由を答えた。
水
2週間前
赤
自分の部屋に友達の深いため息が広がる。
水
赤
水
2日前くらいに、めずらしく「相談がある」と言ってわざわざうちまで来たりうちゃん。
いふくんがキレながら「呼び出された」とか言って仕事に向かったので、今日が賞味期限のお菓子(いふくんの分)を出す。「賞味期限きてたし」って言い訳すれば大丈夫。多分。
ちょっと相談されてみたかったし。
水
僕の「機嫌が悪い」という言葉にしかめっ面になる。頬杖をついてぼそっと呟いた。
赤
赤
なるほど。機嫌が悪い理由はそれか。
水
赤
赤
水
あのりうちゃんLoveでパートナー最優先で超絶デレデレもはや盲目(言い過ぎ)のないちゃんが?りうちゃんに?気づかないことあるの!?
水
でもなければ気づかないなんてありえない。
もし何も無いのに気づいてなければ明日槍が降る。世界滅亡の危機だ。
カタンッ
赤
水
倒れたのは棚の上にあるずっと飾っていた写真立てだった。
棚の方まで行って写真立てを持ち上げる。そこには、りうちゃんとないちゃん、初兎ちゃんとアニキ、それと僕といふくんが写っている。
水
小5の頃のりうちゃんがいきなり倒れた時、緊急手術で無事助かった後に撮った写真。みんな幼い姿で、いろんな表情をしている。
ギャン泣き後のまだ泣きそうなないちゃんとこちらもボロ泣き後の頭に包帯を巻いているりうちゃん。
心底ほっとしたお兄ちゃんの顔をしているアニキと初兎ちゃん。
ケロッと泣き止んで笑顔の僕と仕方なさそうに泣きそうな2人を慰めているいふくん。
赤
水
たまたま写真がプリントされていて、使わなくなった写真立てがあって、同じタイミングで見つけたそれを飾ってみたのがそのままになっている。
ずっと飾りすぎてもはや無いと落ち着かない。
水
赤
写真を置いて笑いながら言うりうちゃん。
水
水
赤
赤
笑いながら言う彼だが、ちゃんと覚えているのは僕も分かっている。
あの出来事は、僕ら6人にとって忘れられない不安を味わった苦い思い出でもあるのだ。
ポツッ...ポツッ
水
桃
黄
水
青
紫
水
赤
小5の夏休み中、ないちゃん宅でお泊まり会をすることになった。気分は浮かれすぎて家を出る前にいふくんにウザがられたほど上がっている。
水
水
水
1人で悶々と考えていると、ないちゃんの切羽詰まった声が耳に飛び込んできた。
桃
水
ないちゃんがりうちゃんを必死に揺さぶって名前を叫んでいる。りうちゃんはなぜか泣いていて、なにか伝えようとしている様子だった。
ただ事じゃないのは11歳の僕でも分かる。
赤
声も出ないようで、苦しそうだ。
桃
桃
桃
ないちゃん達に1番近かったアニキといふくんが真っ先に駆け寄った。
僕と初兎ちゃんも1度顔を見合せ、初兎ちゃんに手を引かれりうちゃんの方まで近寄る。
黄
青
アニキがないちゃんを落ち着かせながら状況説明を求めるが、ないちゃんは完全にパニクってて泣き始めていた。
いふくんも必死に呼びかけているけどりうちゃんの苦しそうな顔は変わらない。
紫
初兎ちゃんの声を聞いたないちゃんの手がピタリと止まる。
水
本人の近くで呼びかけても何も返事が無い。目が段々虚ろになっていく。
水
涙で霞んで見えないのだろうか。そんな考えが頭に浮かんできたので、ほぼ意識が無さそうなりうちゃんの涙を拭ってみた。
水
顔が燃えるように熱い。これは生き物が上がっていい温度じゃない。
小さい僕でもわかった。
水
特に頭が熱い。パートナー用のロボットで「頭」というと、プログラムの核。人間の脳と一緒だ。
1番大切で、1番危険に侵されてはならない場所だった。
紫
紫
黄
黄
青
水
桃
紫
黄
水
青
桃
みんなで必死にないちゃんを励ます。が、それは表向きで、励ましてないと自分の中で不安が募って押しつぶされそうになるからだった。
青
ないちゃんの背中をさするいふくん。
普段はポーカーフェイスなパートナーの顔も、不安が渦巻いているのがよく見えた。
水
僕がしっかりしないと。パートナーなんだから。
震える手でガッツポーズを作る。
水
水
桃
いふくんがこちらをぱっと見た。
その泣きそうな顔が僕の目に飛び込む。滅多に見せない弱い顔。
思わず固まっている間も一瞬で、
青
と、すぐに元の顔に戻ってしまった。
桃達の父
みんなの顔が一気に緩む。
紫
黄
水
青
桃
すんっと鼻を鳴らすアニキ。と、それを見て釣られて目に涙を浮かべる初兎ちゃん。
見合わせてにこっとしている2人が視界の端に入った。年上の2人もなかなか弱さを見せない2人だったから、こちらもそれを見て「よかった」という気持ちがひしひしと沸いてくる。
水
水
青
水
涙で濡れまくっているであろう僕の顔を見てぎょっとするいふくん。
青
水
青
滅多に見ることの無い彼の涙目を目に焼きつける。
青い瞳が水につられて揺れて見える。
ずっと強く見えていた。弱い顔を今まで何度こらえてきたんだろう。 僕や周りに弱さを見せないパートナー。
そう思うと、少し悔しかった。
水
水
あの時のいふくんの顔は、今でも鮮明に覚えている。それくらい弱い顔は滅多に見せないのだ。
ある意味貴重な体験をした日だった。
水
赤
水
心ここに在らずという感じのりうちゃん。数回呼びかけても返事が無い。
もしかしたらりうちゃんも思い出しているのかもしれない。
水
赤
水
赤
水
赤
低い声で脅してくる。
水
赤
水
こいつぅ....
ピロンッ
写真立てを戻しに行こうとすると、僕のスマホが鳴った。持っていこうとした写真立てとスマホを持ち替えて、顔認証で開く。
りうちゃんも覗き込んできた。
水
いふくんからだった。
ごめん、仕事意外とでかい 帰るの遅くなる ないこも同じやからりうらに言っといて
水
トラブルだろうか。面倒なことになってそうだ。
「ないこも」ということはないちゃんも呼び出された可能性大だ。普通なら今日は休みだし。
水
「了解」というスタンプを探しながら口に出す。
赤
りうちゃんの言葉に反応してしまう。
普通ならパートナー同士は同じ職場で働くのだが、ロボット研究所では人間しか働けないのだ。
りうちゃんは本人にこそ言ったことは無いのだろうけど、よく着いていけない愚痴をこぼしていた。特に同じ境遇の僕に。
赤
ため息混じりにりうちゃんが呟いた。
りうちゃんがロボット研究所にマイナスなイメージを持ってしまう気持ちも分かる。けれど、勝手な願いとは分かっていても「研究所なんか」と言って欲しくなかった。
水
いふくんが「研究所に就職したい」と思っていたのは、実際言われるだいぶ前から気づいていた。
だって普段よりなんかよそよそしいし、これまで以上にないちゃんとコソコソやってるし、隠しきれてなかったもん。
きっと僕が反対すると思っているから隠してたんだろう。僕自身はついていけないわけだし。
そもそもなんで研究所?という疑問の方が大きかった。なんだかないちゃんと一緒に入りたいと思ってそうな雰囲気なのも不思議だった。
まぁその理由は少し考えてすぐ分かったんだけど。
まったくの不満が無かったというわけではもちろんない。けれど、彼がそうしたい理由をパートナーとして分かってあげたかった。
なにより、僕のパートナーはホントに信じられる奴だったから。
赤
赤
赤
「気まずくしてごめんね」と謝ってくるりうちゃん。
水
なにも解決していない。それに、これは絶対に曖昧のままでいい問題じゃない。
赤
赤
リュックを背負ってもう出ていきそうな勢いのりうちゃん。多分今止めたところで帰ってしまうだろう。
でも、これだけは言わないと。
いや、言うんじゃなくて、せめてヒントを。
水
水
水
君のパートナーは..."君のために"研究所に入ったんだと、気づいてほしかった。
でも今僕が言ったところでふたりの間に何も生まれないはず。ふたりで見つけるべき答えだ。
僕のパートナーならきっとそうする。
赤
赤
笑顔を崩さず手をひらひら振りながら「お邪魔しました」と歩いていく。
見送るため小走りで追いかけながらも、僕の不安はおさまらなかった。
水
午後9時。研究所前。
白い息が建物の光にチラチラ光る。マフラーをつけてこればよかったと少し後悔。
でも待ってる時間も苦では無い。
青
青
向こうも白い息をはきながら、研究所の入り口から出てきた。近くの街灯にくっつくように立っている僕を見てとぼけた顔をする。
水
にやっと笑ってみせると、混乱した顔のまま早足で近づいてきた。
青
水
青
「そんな理由で?」とでも言いたそうな呆れた顔で見下ろされる。いふくんのほうが背が高いので見上げる形になり、逆光でよく見えないけど、オーラでわかる。
青
青
水
水
水
青
青
珍しく弱い顔を見せるいふくん。昼に思い返していた小5の頃のいふくんと重なった。
水
水
青
水
なんなら勤めてくれて感謝さえしてる。
いふくんのおかげで誰かが助かるのなら、パートナーとして嬉しいことこの上ない。誰かの役に立つのは誇れることだ。
水
青
水
水
青
青
水
青
水
水
全然気にせず連れ回したな。申し訳ないことをした。
赤
水
水
赤
水
赤
水
僕といふくんの関係が親友だとしたら、向こうは新婚の夫婦ぐらいだと思っている。だって片方から熱烈な愛飛んできてるもん。
というかもはや推しとオタクだよ。 うん。
赤
水
2人の喧嘩の流れは大体知っている。
りうちゃんが拗ねてないちゃんが仲直りしにいくけど、りうちゃんが言いすぎてないちゃんも怒ってしばらくお互い口を聞かないのだ。
水
赤
赤
水
多分僕の知ってる地獄の空気を越えているんだろうな。
赤
赤
水
確かに普段から小言はお互い愚痴りあっているが、言い合いになって口絶対聞かないみたいな雰囲気になることは少ない。
水
水
水
赤
水
赤
水
水
水
赤
水
水
司会
もう少し喋りたいことがあったのに、研究発表会の司会が始まる。まだまだ時間があったのに、いつのまにか始まる時刻だったようだ。
司会
司会
右手から白衣を着た2人が出てきた。
桃
青
ないちゃんの顔から緊張が伝わる。というか全身から緊張オーラが溢れだしている。右手と右足一緒だし。
あまりにも歩くのがゆっくりなないちゃんを見てニヤつきを必死に隠しているいふくん。バレてるよ。
赤
水
これ以上無いほどに緊張しまくった顔のないちゃんと通常運転の顔のいふくん。見てて面白い。
一礼してから椅子に座った。
水
ないちゃん本当になにも見えてなさそうだ。
桃
あれ。こっち見た。
水
赤
あ、「なんでこっち見てるの」って顔してる。
赤
桃
...りうちゃん、前世アイドルかなんかでしょ。さすがパートナー。ないちゃんの扱いをよくわかってる。さっきの一瞬でないちゃんの顔輝いたよ。
司会
司会さんがある程度紹介し終わった後、ないちゃんがロボットみたいな動きでマイクを持って喋りだした。緊張が見て取れる。
桃
桃
よりによって自分の名前を噛むないちゃん。
水
青
赤
いふくんもう完全に笑っちゃってんじゃん。苦笑い超えてるよそれ。
というかりうちゃん全部口に出るタイプなんだな。
桃
桃
桃
水
赤
↑保護者気分
桃
青
水
いふくんがチラッとこちらを見た。
さっきまでないちゃんを見て苦笑いしていたいふくんだが、マイクを握ると緊張した面持ちでひとつ深呼吸をしているように見える。
不安そうな顔をあまり見ないので、新鮮に感じられた。
水
右手でガッツポーズを作ってみせると、ふっといふくんの顔が緩む。安心したような顔で喋り始めた。
青
青
僕から記者の人達へ視線を移す。
僕が「少しくらい変わってもいい」と思っている理由はここにあるのだ。
僕が唯一無二のパートナーと横に並びたいと思った理由が。
だって、研究者になったって、
青
彼はずっと努力家で、優しくて、
どこまでも信じられる奴なのだから。
「ロボットパートナー」シリーズ ~完~
ついに...!完結しました...!!
長かったぁ...シリーズで合計すると 2500タップくらいかな。 白黒組で書きすぎたよね()
お互い「もっと賢ければ」「もっと頼れる人間だったら」と悔やんでいるシーンがありましたが、
この言葉から2人が高みを目指していた理由が分かりますね! お互いのためなの大好きだ...!!勝負はオマケみたいなものだったのかもね。
完結したロボットパートナーシリーズですが、リメイク連載も出るのでそっちもお楽しみにね!!
それでは〜!