テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

一覧ページ

見知らぬ本屋と12冊の呪われた絵本

第61話 - バトル９　カウントアップゼロ【終】

2025年01月26日

#ミステリー

#心理戦

#デスゲーム

#推理

#第4回テノコン

日比野響

七星

もし、貴様に敗因があるのだとすれば、偶然にも私がこのコーディネートで来てしまったことだ。

七星は得意げに言う。

十一月二十九日

そのコーディネート？

十一月二十九日

ジャケットとストールの色を合わせた、そのセンスのないコーディネートが、どう関係すんだよ？

七星

――やはり、同じ色に見えているんだな。私のジャケットとストールの色が。

十一月二十九日

――あ。

十一月二十九日

くそ、そんなことで……。

七星

特別に教えてやろう、私のコーディネートは淡い赤色のジャケットに、緑のストールを組み合わせたものだ。

七星

知っているか？

七星

緑色……。

十一月二十九日

くっ……。

十一月二十九日

それくらい分かってる。

七星

ならば、なぜ苦言を呈さない！

七星

今、この場所は【赤い】照明で、真っ赤に染まっているのに！

十一月二十九日

(この女……俺の策略を見破ったってのか！)

十一月二十九日

そ、そういう細かいことは気にしないタイプなんだよ。

七星

いいや、貴様は気にしないのではない。気づけないんだよ。

七星

――色覚異常。色盲のせいでな。

十一月二十九日

(俺の特性。それをあっさりと見破りやがった！)

七星

貴様は私のコーディネートを見た時、ジャケットにストールが同化している――というコメントしたな。

七星

あれを聞いた時、妙な違和感があったんだ。

七星

なぜなら、私のジャケットとストールは、赤と緑という異なる色だったからだ。

七星

だが、よくよく考えてみれば、私のジャケットとストールが同化……同じ色に見えてしまう可能性がある人間がいることに気づいた。

十一月二十九日

(今まで、これは俺のコンプレックスだった。ただ、大多数と見え方が違うってだけで、異常とされるのも面白くなかった。だからこそ、これを利用することを思いついたのに)

七星

正確に言うと、貴様は赤緑色覚異常なんだろ？

七星

色覚異常の中でも典型的なタイプだな。

七星

こいつは、赤から緑方面の色、緑から赤方面の色が、極端に言えば同じ色に見えてしまう。

七星

そして、その性質を利用して、貴様は絵本のナンバーを判別していたのだろう？

七星

あの、表紙の水玉模様でな。

十一月二十九日

だとしたら？

十一月二十九日

だとしたらなんだ？

十一月二十九日

見えているものは、俺もあんたも同じものだ。別に俺はなにもしていない。

七星

そう、私にも提示されている情報は同じだ。

七星

ただ、私には色とりどりに見えていた水玉模様だが、貴様にとっては、ほぼ赤と緑の中間色である茶色のように見えていたはずだ。

七星

ここまで言えばもう分かるな？

七星

表紙にあしらわれていた水玉模様は、そのほとんどが貴様にとって判別できない色で構成されていたんだよ。

七星

例えば、まるで判別できない色ばかりの絵本は【０】。

七星

ひとつだけ判別できる色があれば【１】。ふたつ判別できる色が混じっていれば【２】――同様に、みっつ判別できる色があれば【３】という具合に、自分が判別できる色の数で、貴様は絵本のナンバーを読み取っていたんだ。

七星

これの巧妙なところは、私も全く同じものを見てはいるが、色覚異常でなければ判別はできないというところ。

七星

私からすれば、色とりどりの水玉模様があしらわれているようにしか見えないものも、貴様からすれば絵本のナンバーを読み取る重要な情報になっていたということ。

七星

だから――情報を操作させてもらった。

七星はそう言うと、天井を指差した。

十一月二十九日

さっきブースに行った時に、照明の色を変えたのか……。

七星

あぁ、そもそもここに来た時点で照明の色は赤かったが、なぜか貴様はそれに気づいていない様子だった。

七星

だから、照明の色を変えても気づかれないと思ってな。

七星

万が一、気づかれてしまったら、うっかりスイッチに手が触れたということでごまかせばいい。

七星

まぁ、案の定というか、貴様は照明の色が変わったことに気づいていないようだったがな。

十一月二十九日

じゃあ、俺が【０】だと思っていたのは――。

七星

そう、赤の照明によって上書きされた表紙だったんだよ。

七星

水玉模様の色を赤で上書きすることで、貴様からすれば【０】に見えるように欺いたんだ。

十一月二十九日

(水玉模様が少し薄く見えたのも気のせいじゃない。上から表紙全体に照明が当たっていたからだったのか――)

七星

そして貴様は、私の出した【３】を【０】だと宣言した。

七星

つまり【ノンオープン】は失敗、私のポイントになる。

これにて七星３ポイント先取。

カウントアップゼロ――決着。

七星

色覚異常を利用した不正は見事なものだったが、私の勝ちだ。

七星

今日、このコーディネートで私が来てしまったことが、最大の敗因だったな。

十一月二十九日

くそ……。

十一月二十九日

ひとつだけ言っておく。

十一月二十九日

俺は判別できないが、赤と緑の組み合わせは、一般的にクリスマスカラーと呼ばれる組み合わせだから――。

十一月二十九日

ダサいことに変わりない。

七星

…………。

七星、なぜか辛勝。

見知らぬ本屋と12冊の呪われた絵本

作品ページ

次の話を読む

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

日比野響

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

見知らぬ本屋と12冊の呪われた絵本

第61話 - バトル９　カウントアップゼロ【終】

作者の他の作品すべて見る

#ミステリーの新着小説
一覧

関連するタグ

見知らぬ本屋と12冊の呪われた絵本

第61話 - バトル９ カウントアップゼロ【終】

作者の他の作品すべて見る

#ミステリーの新着小説一覧

関連するタグ

第61話 - バトル９　カウントアップゼロ【終】

#ミステリーの新着小説
一覧