コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
病院から逃げ出した2人は、拠点までの道のりを全力で引き返していた。
浄海入道
シャアアアアア……
正確には、急いでいたのは浄海だけだ。 桜は自転車を漕ぐ気にもなれず、彼の自転車の後ろに掴まっていた。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
ペダルを全力で漕ぎながら、浄海が慌ただしい様子で語りかける。
だが、返事はない。 桜の脳内には、最早彼女の声が届くことはなかった。
深山桜
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
浄海は走りながら桜に発破をかける。
……心には響かない。
深山桜
かろうじて絞り出す。 声はいまだに震えていた。
深山桜
深山桜
深山桜
深山桜
浄海入道
桜の心からの嘆きに、浄海は舌打ちする。 その後は黙って自転車を走らせた。
行きの半分の時間で、2人は拠点にたどり着く。
浄海の予想は……当たってしまっていた。
ビシィッ!!
息長姫子
姫子の声が聞こえてきた。 2人は庭に突っ込む。
十数人ものZ'feelの社員の黒服達を前に、姫子が倒れ伏していた。 すでに満身創痍の身体だ。
ガシャアン!!
浄海入道
息長姫子
2人は姫子に駆け寄る。 ゴホッ、ゴホッと血を吐いた。
黒服
黒服
取り囲む黒服達は、今までのブランドの社員とは違い、挑発的な言動も、人間らしい言葉も、何もない。 ただ黙って、自分達を囲んでいる。
深山桜
ブンッ!
一番近くに居た黒服が、無表情で襲いかかってくる。
ガッ! ドガァッ!!
浄海が即座に反応する。 黒服が放った右フックを素早く受け止め、返す刀で右ストレートを放った。
黒服は無言で吹っ飛ぶ。 無言で受け身を取り、無言で起き上がる。
浄海入道
殴った浄海の方が、右拳を痛そうにさすっている。
浄海入道
???
深山桜
聞き覚えのある口調に、桜は顔を上げた。
黒服達をかき分けやってきたのは……同じ服装の黒服。
だが姿勢が違う。 腰の悪い老人のように前かがみになり、醜悪に笑っている。
すぐに分かった。 この男は先程の……八ツ木だ。
八ツ木博士
八ツ木博士
八ツ木博士
八ツ木博士
浄海入道
深山桜
浄海入道
浄海入道
怨王
黒服の姿のまま、八ツ木……怨王はくっくっくと笑う。
浄海入道
浄海入道
怨王
怨王
怨王
怨王
一際大きく声を張り上げた。 目をそらしていた現実を突きつけられ、桜の動悸は再び早まる。
息長姫子
2人の手の内で横たわる姫子が、必死に桜に呼びかけている。
怨王
怨王
怨王
深山桜
怨王の言葉が、桜にはたまらなく甘い誘惑に聞こえた。
抑え込んでいた本能が、また顔を覗かせてくる。 詩織に会いたい──。
怨王
怨王
ファサッ……
怨王は3人の目の前に、柔らかく何かを放り投げる。
──弥生の携帯だった。 桜の身体が震える。
怨王
スッ……
怨王は突如姿勢を正す。 にやにやと浮かべていた笑みが、一瞬で無表情に変わり、周囲の黒服たちとなんら変わらなくなた。
ザッ ザッ ザッ
そのまま黒服達は、3人を無視して通り過ぎ、庭から出ていく。
浄海入道
ドゴォッ!!
浄海は苛立だしげに立ち上がり、黒服達の1人を蹴り飛ばした。
黒服は吹き飛ぶ。 機械のように受け身を取り、何事もなかったのように立ち上がり、元の列に加わっていく。
息長姫子
腕の中で姫子は何度も謝る。桜は首を振るだけで精一杯だった。
千秋
泣き腫らした顔で千秋は頭を垂れる。
浄海入道
息長姫子
浄海と姫子はせわしなく声をかけるが、桜は何も言わず、黙って縁側に腰を下ろしていた。
家に入ってすぐ、泣いている千秋を見つけた。
彼女の話では、2人が発ってから数十分後に、大量の黒服達にこの家を囲まれたという。
息を殺して潜んでいたものの、捜索の末に見付かってしまった。 その時に出された条件が……。
千秋
千秋
息長姫子
浄海入道
深山桜
浄海入道
千秋
浄海入道
深山桜
桜は携帯を取り出し、SNSを巡回して……奇妙なことに気付いた。
つい先程まで、異常事態を訴えていたアカウントが……どれも日常の投稿しかしていないのだ。
それも、誰かに無理やり命じられているような、不自然な内容。 今や当たり前となった、ブランドの蛮行を不安がる内容が、どこにも見当たらない。
おかしな様子を見せているのは、中央区に住んでいると思わしき人だけ。
他の区の住民は、異常性を訴える投稿を次々と上げているが……中央区の人のアカウントは、それらを全て無視して、他愛のない日常を淡々と上げている。
現実でもネット上でも、桜と弥生が住む地域の住民が、街ごと隔離されてしまっていた。
浄海入道
桜の携帯を覗いていた浄海が口を開く。
浄海入道
浄海入道
千秋
浄海入道
Z'feelのアジトで起こった詳細を、浄海は千秋に説明する。
千秋
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
千秋
千秋
千秋の言葉に、浄海も姫子も答えなかった。
ポロロン♪ ポロロン♪
軽やかな着信音。 携帯の画面が突如切り替わり、電話を伝えてきた。 知らない番号だ……。
桜は意を決して、電話に出る。
深山桜
母
母だった。 声が震えていた。
深山桜
母
深山桜
母
母
母の様子は明らかにおかしい。 どう考えても、本心からの言葉ではなかった。
深山桜
母
母
バチチチチィッ!!
母
深山桜
桜は反射的に叫ぶ。 母の本音が聞こえた瞬間、携帯の向こうから、電撃音と悲鳴が響いた。
深山桜
電撃音が終わった後も、母の声が聞こえてこない。
だが……その数秒後、
クローン
深山桜
代わって聞こえてきた、記憶に残る声に、桜は思考が止まった。
クローン
クローン
深山桜
また湧き上がる本心を、理性で必死に言い聞かせ、桜は拒絶する。
深山桜
深山桜
クローン
桜の必死の表明も、彼女は意に介さない。
クローン
深山桜
クローン
クローン
クローン
クローン
クローン
クローン
深山桜
電話の向こうで、優しく柔らかく問いかけてくる言葉に、桜は何も言い返せなかった。
クローン
クローン
クローン
クローン
クローン
通話は切れた。 桜は黙って携帯を下ろす。
千秋
深山桜
不安な表情ですがり寄ってくる千秋を制し、桜はゆっくりと立ち上がる。
浄海入道
深山桜
息長姫子
浄海の問いかけに答えられないまま、桜は黙って和室を出ていく。 姫子は声もかけない。
5年前と同じ妹の優しい声が、渦のように反芻を続けていた。
夜になっても、桜の考えはまとまらなかった。
縁側に腰を下ろして、月夜に照らされながら、ただ携帯を眺める。
中央区の人のアカウントが発する投稿を眺めていると……久しく忘れていた、日常への安堵感が心に染み込んでくる。
深山桜
深山桜
深山桜
深山桜
緩やかに更新される、平穏の日常を、桜はただ黙って眺めている。
……それに混ざって、ある1つの投稿が流れてきた。 メモ帳をスクショした、長文の投稿だ。
『私の夫を助けて下さい』
『私は他県から引っ越してきた未登録者(アンレジスター)です』 『東原の中央区に住む夫とは、ブランドに襲われたところを助けて貰ったのをきっかけに知り合いました』 『今はお腹に三ヶ月の子供が居ます』
『今日のお昼、Z'feelというブランドの人達に、夫が連れ去られました』 『当初は私も連れて行かれそうになりましたが、私が未登録者であることが分かると、私だけは解放されました』
『でも、夫は今でも帰ってきません』 『夫とは電話やメッセージでは連絡が取れず、SNSのアカウントにいくら呼びかけても反応してくれません』
『一度だけ夫のアカウントから、縦読みで助けを求めるような投稿がありましたが、すぐに削除されてしまいました』
『夫がいなければ、私はブランドの襲撃が怖くて外に出られません』
『どうか夫を助けて下さい』
深山桜
投稿はまたたく間に拡散されていく……中央区の人達のアカウントを除いて。
投稿の返信には、似たような状況に陥った人達の悲痛な叫びが多数連なっていた。
スッ
後ろの障子が開く。 姫子だった。
息長姫子
深山桜
息長姫子
隣に座った彼女は、携帯を持つ桜の手を、優しく握る。
息長姫子
息長姫子
息長姫子
息長姫子
深山桜
桜は姫子の説得に何も言わない。 そんなことは当に理解していたからだ。
息長姫子
一瞬言葉が詰まった。 ぐっと下を向いて、しばらく震えてから、姫子は顔を上げる。
息長姫子
息長姫子
息長姫子
握る手に力がこもる。 細くしなやかな彼女の指から伝わる熱は、桜の体温よりほんのりと暖かった。
深山桜
桜はうつむいて、姫子と視線を合わせずに吐き出す。
深山桜
深山桜
深山桜
深山桜
目尻に熱が溜まる。 雫となって、自分と姫子の手に落ちていく。
深山桜
深山桜
耐えきれなかった。 心をむき出しにして、桜は泣いた。
仮初だと分かっていても、詩織にまた会いたくて、あの頃の日常に浸っていたくて、桜は泣いた。
深山桜
姫子の顔が見られないまま、桜は頭を下げる。
ギュッ……
その時……手を離した桜に、上半身を柔らかく抱きしめられた。 彼女の熱が伝わる。
深山桜
息長姫子
崩れるような涙声で、姫子が小さく呟いた。桜を抱きしめる手に、より一層力がこもる。
深山桜
息長姫子
息長姫子
嗚咽と共に、彼女が吐き出した言葉が、桜は信じられなかった。
息長姫子
息長姫子
深山桜
息長姫子
桜を抱きしめながら、彼女は吐き出し続けた。 詩織より少し通った、詩織より少し低い声を。
息長姫子
息長姫子
息長姫子
妹より少し筋肉質な身体で、彼女に抱き締められる。
桜は呆然としていた。 自分に熱を伝える、目の前の女性の言葉が、信じられなかったからだ。
浄海入道
その声でようやく、桜は浄海が向こうに立っていることに気付いた。 そばには千秋も居る。
深山桜
千秋
桜と千秋の問いかけにも、浄海は反応しない。 深いため息をつきながら、ただガシャガシャと頭をかく。
息長姫子
彼女は桜を抱きながら、涙混じりの謝罪を繰り返すばかり。 何が起きているのか分からなかった。
浄海はこちらにやってきて──そのまま庭に出る。
浄海入道
ザッ ザッ ザッ……
それだけ言って、彼は庭の片隅……使われていない井戸の方へと向かっていった。
井戸の下には、隠し階段があった。
千秋と、ようやく落ち着いた姫子とともに、桜は浄海の後を追う。
無限に感じられるような、長い長い階段を降りる間……誰も、何も話さなかった。
階段の先に、1枚の自動ドアがあった。
音もなく開かれた、その先には……
深山桜
浄海入道
桜は自分の目を疑い、次に浄海の言葉を疑った。
広大な空間には、サーバーしかなかった。 サーバーだけが乱雑に積み上げられていた。
どこにも接続されていない、電波が届くとも思えない、無機質なサーバーが、まるで建築現場の瓦礫のように、無秩序に積み上げられている。
その一つ一つは、しっかりと稼働している。緑や黄色、赤のランプを、せわしなく点灯させて……。
ズズズズズズ……
深山桜
桜は息を呑む。 積み上がったサーバーがひとりでに震え……少しだけ大きくなったのだ。
ガタガタと、表面のサーバーのいくつかが転げ落ち、中から新たなサーバーが顔を覗かせる。
まるで意思を持っているかのように、サーバーが増殖している。 目の前に広がる光景は、人智を完全に超えていた。
深山桜
浄海入道
千秋
浄海はこともなげにそう言って、サーバーの1つに近付く。 倒れていたそれを軽々と持ち上げ、桜達の前に持ってくる。
ズン……
浄海入道
立てかけたサーバーに手を突いて、浄海はそう言った。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
機械音声のように、感情のこもっていない声で説明を続ける。 桜には言葉の意味がほとんど分からなかった。
深山桜
浄海入道
浄海入道
腕を組み、堂々と言い放った浄海の言葉に、桜と千秋はずっこけそうになった。
千秋
浄海入道
浄海は苛立ち紛れに、サーバーをバンバンと叩く。 そんなことして大丈夫なのか?
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
桜は覚悟を決めて頷く。 もたらされる真実に、目を背けずに向き合う覚悟を。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
浄海入道
浄海は倒れていたサーバーにどかっと腰を下ろす。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
浄海入道
桜がふるふると首を振ると、浄海はいきり立って地団駄を踏む。 ここに弥生がいたら、恐らく痛烈な皮肉でもぶつけていただろう。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海はすっと、姫子を……いや、姫子の身体を、指さす。
浄海入道
深山桜
浄海入道
浄海はわざとらしくそっぽを向いた。
深山桜
浄海入道
浄海入道
千秋
高笑いを浮かべる浄海に聞こえない声量で、千秋がひっそりと呟いた。
浄海入道
高笑いを止め、真面目な口調で浄海は告げた。
深山桜
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海は下を向き、ふうっとため息をついた。
彼の話は一時中断する。フーン……といいうサーバーのファンの音が、静かに響いている。
少し時間が経ってから、顔を上げて、話を再開した。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
浄海入道
ズズズズズズ……
また地響きが起こり、サーバーの山が少しだけ高くなった。
深山桜
桜は背筋を、冷たくドロドロした恐怖が伝っていくのを感じた。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海は無秩序に増えたサーバーを見渡す。 その佇まいはどこか寂しそうに見えた。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
桜はゆっくりと頷く。 説明の細部はいまだ理解が追いつかないが、大枠は掴んだように思う。
桜は腰掛けていたサーバーから立ち上がり、自分達から少し離れた所に立っていた、姫子のもとに向かった。
深山桜
息長姫子
浄海入道
千秋
浄海入道
はっきりとした口調で、浄海は言い切った。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
桜は一歩近付く。
深山桜
桜はそこまで言いかけて、止めた。 気軽に明かしていい話では決して無いことなど、分かりきっていたからだ。
浄海入道
立ち上がった浄海は、サーバーの山を指し示すように腕を広げる。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
千秋
桜はたじろぐ。千秋が全身を震わせる。 自分達の様子を、姫子……詩織は、泣きそうな顔で見つめていた。
深山桜
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海は再び、倒れたサーバーに腰を下ろす。足を大きく開き、前かがみに深く座り込む。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
髑髏の面頬の奥、空洞にしか見えない2つの眼窩が、赤黒く光った気がした。
浄海入道
不敵な雰囲気を崩すように、浄海は上半身を大きく起こす。
浄海入道
千秋
浄海入道
起こした勢いそのままに、浄海はサーバーに背中を預け、寝っ転がった。
深山桜
浄海の説明の間、黙って立ち尽くしていた彼女に、桜は一歩近付く。
深山桜
息長姫子
沈黙の末に、彼女は絞り出すように吐き出した。
息長姫子
息長姫子
彼女はそこで言葉がつまる。 苦しそうに何度かえずいたあと、
息長姫子
息長姫子
顔を覆って、彼女はさめざめと涙を流す。
深山桜
桜はゆっくりと近づき、両腕をその背中に回す。
優しく抱きしめた。 自分より大きな彼女の身体に腕を押し当てると、少し筋肉質な肉体の節々が自分の肌に食い込んでくる。
深山桜
昔の記憶……仲の良かった友達が引っ越してしまい、泣き続けた詩織を慰めた記憶を掘り返し、あの時のように柔らかく声をかける。
深山桜
深山桜
深山桜
息長姫子
深山桜
深山桜
息長姫子
彼女は涙声で何度も呼びながら、桜の身体を抱き返す。 やや強い力が骨を軋ませた。
自分より背の高い彼女の頭を、右腕をなんとか伸ばして撫でる。
彼女が心を落ち着かせるまで、桜は優しく抱擁を続けた。
……その心に、どこか冷めた感情を抱きながら。
泣いている彼女を千秋に任せて、2人には外に出ていってもらう。
浄海と2人きりになった桜は、いまだサーバーの上に寝っ転がったままの彼に対して、
深山桜
浄海入道
深山桜
桜は静かに問うた。 浄海は音を立てずに起き上がる。
彼は黙って、髑髏の面頬をこちらに向けた。 無神経な医師に陰部を触診されているような、拒否感の強い違和を感じた。
先程抱きしめた彼女が……詩織であるとは、桜はどうしても信じきれなかった。
無論、ここまで真実を明かした浄海が、いまさら嘘をつくとは思えない。 本人の様子から見ても、彼女自身が自分を詩織と思っているのは間違いない。
だが……あのクローンに対して詩織を求めてしまうのとは対照的に、彼女を詩織だと信じることができない。
頭では理解していても、重ねた身体が、彼女を詩織だと認められなかった。
浄海入道
深山桜
満たされない自分の心に、強い自己嫌悪を抱きながら、桜は答える。
深山桜
深山桜
浄海入道
浄海はふっと顔を振る。 膝に肘を突き、リラックスした姿勢に座り直す。
浄海入道
深山桜
少し難しい言い回しで発せられた言葉だが、桜にはおおよそ理解がついていた。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
浄海入道
浄海入道
深山桜
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
この数日感で起きた出来事を振り返る。 三度の戦いを乗り越えて、自分自身の心のあり方は、確かに変わっている。
まだ幼く、日本も平和だった5年前と比べれば、比べるべくもない。
深山桜
浄海入道
桜の言葉に、やや食い気味で、浄海は繋げる。
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
浄海入道
深山桜
浄海の言葉を元に、桜は1人思案を重ねる。
身体は同じだが、心が違う『詩織』は……歪んだ形であろうと、かつての日常を追い求めている。
身体は滅び、心も変わってしまった『詩織』は……今ある世界を受け入れ、懸命に戦おうとしている。
2人の『詩織』に対して、自分はどう決めて、何をするべきか。
深山桜