覚えている
白と黒のしましまの上に舞った
原色の赤と黄色を鮮明に
まだ、忘れられない
7月の海開きの日だった
もうすぐ夏休みだねって話していた
横断歩道の向こうに三毛猫を見て、はしゃいでいた
三毛猫はオスだった
海
みてみて!
海
猫だよ
海
あれ、三毛猫のオスじゃない?
海
珍しいって、おばあちゃんが言ってたよ
海
見に行こうよ!
思わず言ったのは私だった
なのに今日の今日まで姿を現さないのは私じゃなかった
黄色い通学帽に反射した太陽が、まだまぶたの裏に残っている
先生
よーし
先生
みんな見ろ!
先生
新しい蛍光灯がついたぞー!
芽依
先生うるさーい笑
芽依
うわっまぶし
海
目痛い…
眩しい光を見ると、しばらく目の中に光が残る
よくある現象だろうが、私の場合は普通ではないらしい
6年前に見た光が、強い光を見たとき、まだ目の前をちらつくのだ
海
…
芽依
どしたの海〜?
海
いやさ
海
強い光見たとき残像みたいなの見える時ない?
芽依
分かる
芽依
あるあるだよねー
海
6年前…
芽依
え?
海
6年前に見た光でも、見えることってあるのかな
芽依
6年…?
芽依
流石に無いでしょ〜
芽依
どうかしたの?
海
いや…
海
ちょっと気になっただけ
海
それより次の授業の準備、大丈夫なの?
芽依
あっ
芽依
先生のせいで忘れてた
中学に入ってからできた友達のおさげ
その後ろ姿に、いなくなった友達を重ねるのはおかしいだろうか
黄色いつばに見え隠れするおさげ
あの子は色素が薄かった
うみ
う…
りな
うみ
りな〜?
うみ
梨奈
ちょっとまってー
お母さん
もう
お母さん
だから早く起きなさいってあれだけ…
分かってるって〜
梨奈
分かってるって
お母さん
こんな大事な日に…
今準備してるから!
梨奈
もう!
梨奈
分かったって!
梨奈
海の命日だから、ちゃんとした服で行きたいの!
お母さん
もう少し早くおきて準備すればよかったでしょう!
梨奈
ねえお母さん!
梨奈
私色素薄いから喪服似合わない〜!
お母さん
仕方ないでしょうが
お母さん
お墓参りだから私服でも大丈夫よって言ったでしょう?
それじゃ嫌なの!
梨奈
でも…
お母さん
それよりその髪
お母さん
それでいいの?
お母さん
いつものポニーテールにしないの?
何言ってるの?ポニーテールじゃない
梨奈
海といた頃はおさげだったから…
梨奈
おさげで行くの
お母さん
そう…
お母さん
じゃあそれで準備できた?
うん!完璧!
梨奈
うん
梨奈
早く行こ!
お母さん
そうね
お母さん
海ちゃんも喜ぶわよ
そうだね!梨奈も喜ぶよね!
今日は梨奈の…
梨奈
今日は海の…
命日だから
あの夏の暑い日
6年前の海開きの日
横断歩道に散ったのは
あの子の命?
それとも…
私だっけ?