霽月達5人が魔物と戦っている頃、
診療所には避難してきたリアムが居た。
リアムはメグリの肩を優しく叩く。
それに気づいたメグリは振り返った。
メグリ
リアムですか……。

メグリ
きちんと避難できたのですね。

リアム
うん。
霽月さん達に助けられちゃったよ。

リアム
姉さんの方こそ大丈夫?
怪我とかは無い?

メグリ
はい。

メグリ
丁度診療所に訪れた時に襲撃があったので。

メグリ
にしてもリアム……もしかして怪我を沢山しましたか?

リアム
えっと……どうして?

メグリ
鉄臭い……血液の臭いがします。
応急処置はしたんですか?

リアム
一応傷が酷いところは……。
それ以外はまだやってないよ。

メグリ
わたくしと雑談するよりも先に怪我の処置をしてもらってきてください。

メグリ
放置しておくのはよくないですよ。

メグリ
ただでさえ診療所に来るまで疲れたでしょう。
処置が終わった後はゆっくりしてください。

リアム
……うん。

リアム
心配かけてごめん、姉さん。

メグリ
ふふ、いいんですよ。

メグリ
わたくしも、リアムを心配させてしまったことがあるので。

リアム
……そうだね。

看護師
怪我をした方や具合が悪い方はこちらまで来てください!

リアム
……あ、お願いします!

看護師
怪我ですか? 体調が悪くなりましたか?

リアム
怪我です。

看護師
分かりました。

看護師
手当てをするのでこちらに掛けてお待ちください。

リアム
ありがとうございます。

リアムは看護師に向かって控え目にお辞儀をした。
それを見た看護師はにこりと微笑んだ。
看護師
大丈夫ですよ。

看護師
これも私達医療従事者の仕事なので。

看護師
それに、こんな非常事態の時は皆で手を貸し合うべきだと思うんです。

リアム
そう───ですよね。

看護師
手当て、終わりましたよ。

看護師
安静にしていれば1週間程度で治るはずです。

リアム
ありがとうございます。

リアムが再びお礼を言って立ち上がろうとすると、
手当をした看護師がリアムを呼び止めた。
看護師
すみません、少しお伺いしたいことがあるのですが───。

リアム
……はい?

看護師
あなた……リアムさんですよね?

看護師
それにあちらにいるのはメグリさんですよね。

リアム
はい。そうですよ。

看護師
私の家族があなた方お2人に救われたことがあるんです。

看護師
私の父はリアムさんの薬のお陰で体調が良くなったんです。

看護師
父は持病持ちだったんですが、薬を飲むようになってから体調がみるみる回復し、今では父は好きなスポーツが出来る程まで回復しました。

看護師
メグリさんには私が飼っていた犬を助けていただいたんです。

看護師
4、5年程前、愛犬が森奥で迷子になってしまった時に、メグリさんが見つけてくださりました。

看護師
……去年、その愛犬は死んじゃったんですけど。

看護師
あなた達には感謝してもしきれません。
あの時は、私の大切な家族を救ってくださりありがとうございました。

リアム
あぁ、あの時の。

リアム
お父さんはあれから元気になったんですね。
凄く辛そうにしていたから、元気になってよかった……。

リアム
姉にも伝えておきます。

リアム
姉は記憶力が良いので、きっとその時のことを覚えていますよ。

看護師
本当ですか!

看護師
ここからは後ろ姿しか見えなかったんですけど、一瞬でメグリさんだと分かったんです。

看護師
ランが今頃元気にしていたら……。

リアム
亡くなった愛犬の名前はランなんですか?

看護師
はい。

リアム
そうですか……。

リアム
(……そっか、後ろ姿だけだから姉さんが盲目になったことは分からないんだ。)

看護師
あ、ごめんなさい!
自分語りのようにつらつらと……。

リアム
いいえ。大丈夫ですよ。

リアム
それでは、またどこかで会えたらその時はお願いします。

看護師
はい。

リアム
……姉さん。手当終わったよ。

メグリ
おや、終わりましたか。

リアム
そういえば、姉さんが助けた犬の飼い主さんが手当をしてくれたんだ。

リアム
その人の犬は4、5年前に森で迷子になったらしいけど……。

リアム
姉さん、覚えてる?

メグリ
そのことですか。
きちんと覚えていますよ。

メグリ
わたくしが盲目になる前の出来事ですね。

リアム
その飼い主さん、姉さんには感謝してもしきれないって言ってたよ。

リアム
大切な家族をあの時救ってくれて嬉しかった、とも言ってた。

メグリ
ふふ、そうですか。
