雨に打たれても

なんでみんな幸せなんだろ

ザーザーと雨が降っている

みんなわーわー言いながら 走って駅へ向かう

私は折り畳みの傘を 持っていたから歩いていける

私がチマチマと歩いていると 横から大きな声を出しながら

駆けている女子二人組が わたしの横をすり抜けていく

頭にピンクのお揃いのタオルを のせて

「やだー」 とかなんとか言いながら

走っていく

なんで私は傘をさしていて 彼女達はさしていないのに

こんなに色が違って見えるのか

二人のところだけ まるで雨がやんでいるかのよう

実際はビショビショなのに

わたしの心もビショビショだ

また雨だ

ポツポツと音を立てて降っている

今日は晴れって言ってたのに

でもみんなはなぜか 傘を持っている

あ，折り畳みか…

でもこの雨ならいらないはず

なのに，みんなさしてる

まだ小雨なのに 傘さす必要なくない？

一つの傘に 二人で入ってる女の子達に そう言いたくなる

これじゃ 小雨なのに私だけびしょ濡れみたい

傘って不思議

さしてるひとを守ってくれる

相合い傘をすれば 二人の距離は縮まって

雨なのに幸せな表情になる

私はみじめに頭に タオルをのせて走ってく

げっ，信号だ

止まった時に 相合い傘組がやってくる

これじゃ 「ここにみじめな人がいます」 ってタスキをかけてるよう

心の雨はよりひどくなった

！？

いきなり雨がやんだ

いや，雨は降っている

ふと背後を見ると

例の女の子達が 傘を私の頭の上に持っていっていた

笑った時に 白い歯が見えた

私が傘に入った時だった

名も知らない女の子が 騒いでる

せっかく仲良くなれそう という思いは一瞬で踏みにじられた

え…

というかこの人たちの名前なに…

クラスは？ 部活は？

小さなきっかけで 未来は変わる

小雨だったから 空に虹はなかった

でも私の心の雨はやんで

大きな虹がかかっていた