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寧々が失踪して、約2週間

メッセージは既読がつかないし、ミク達もなぜか寧々のスマホに入れないらしい

(…心配だな、寧々)

それに、類もだ

あんなに好きだった人が、自分のせいでいじめられた挙句失踪

…類の、誕生日に

…類

…あぁ、司くんか

以前のような明るさは、どこかに消えたようだった

オレを爆発させることも、ショーの演出にも、やる気が出ないらしい

…屋上、行くか

…あぁ

綺麗に澄んだ青空は、まるでいつもと何も変わらないようだった

今にも、寧々がそこの扉を開けて、一緒に昼食をなんていうのではないか

…そんな、気がしてしまう

……

食べないのか

いくら心配でも、食事は取れ

体を壊してしまう

…そう、だね

弁当箱に入った米を箸で掴み口へ運ぶ

…う"ッ、

類は口を押さえた

顔が青ざめている

類っ?!

背中をさする、類はヒューッと喉から音を出している

っは…はぁ、けほっ、…

…落ち着け、類大丈夫だ

大丈夫、だから

…ッは、ぁ…ッ泣

類の、ガラス玉のように光る瞳から水滴がでていた

…ありがとう、司くん

少し、落ち着いたよ

…いや、オレが食べろと言ったからだろう

無理に食べさせて悪かった

…優しい、ね。司くんは

類は微笑を浮かべたが、目の奥が笑っていなかった

モブ

起立、礼

さようなら!

元気な声が教室に響き、人が次々と教室から出ていく

モブ

類く~ん♡

モブ

彼女ちゃんと別れたんだっけ?

モブ

じゃあもう浮気じゃないよねっ!一緒にどこか遊びに

やめろ

類に近づくな

モブ

ひっ…

いつもの司くんからは、考えられないほど怖い顔をし、女子生徒を追い払った

…大丈夫、ではないよな

…そうだけれど、そろそろ慣れないとね

…そう簡単に慣れるものじゃないだろう

類のペースでいいんだ

…ありがとう

3、2、1

卒業おめでとーう!!

あれから、もう半年以上経った

僕たちは、卒業してしまった

寧々に、会えないまま

卒業おめでとう、類

…あぁ、司くんも

…もう、行くのか?

…そうだね

大丈夫さ、ワンダショとしての活動は続ける

しばらくは、セカイでしか会えないけどね

寂しいが、仲間の成長は見守るべきだからな!!

快く祝ってやろうじゃないか!!

フフ、ありがとう

僕は、地方の大学に進学することになった

元有名演出家が、講師として演出を教えているという

まあ、すごく遠い、というわけではないのが救いかな

あぁ!会おうと思えば会えなくもないからな!!

モブ

あの!!

モブ

神代先輩の第二ボタン、くれませんか…?

いいよ司くん、僕1人で

…あぁ

…すまないね、この第二ボタンは、1番大切な人にあげるんだよ

モブ

…そう、ですか

モブ

誰ですか…?えっと、田村さん(美少女)とか、ですか?

…いや

半年前に失踪した、僕のお姫様に、だよ

卒業式の後、司くんと別れて、何となく海に来た

綺麗に澄んだ青空と、潮の匂いが通り過ぎる

…なんとなく、寧々がいるような気がした

そんなわけ、ないのに

♪ーーー、♪ーーー…

透き通るような、美しい高音が僕の耳に触れる

……寧々の、声

っ寧々?!

…どこに

♪ーーー…

知っている歌だった

小さい頃、寧々と見た

人魚姫の、歌だ

寧々!!

必死で叫んだ

ちゃんと心の準備ができないまま、別れてしまった彼女を探して

寧々!、

…あ…

寧々

♪ーーー、ーー…

…寧々?

寧々は、歌いながら海の方に歩いて行く

顔が見えない、今、どんな顔をしているんだ

待ってくれ!!寧々!!

それ以上行ったら、溺れてしまう

待って、置いていかないでくれ

寧々!!!

??

類/類くん!!!

腕を引っ張られ、その場に尻餅をつく

えむ

わぁっ!

うお?!

司…くん?

えむ、くん‥どうして

どうしてもなにもあるか!!

なんてことをしようとしたんだ類!!この時期に海だと?自殺行為だぞ!!

…っちが、違うッ!!寧々がいたんだ

そこに寧々が!!早く助けないと寧々が溺れて

えむ

しっかりして類くん!!

えむ

…寧々ちゃんは、いないよ

…は?

…‥見ろ

司くんは、一通のメールを僕に見せた

はじめまして、突然こんなメールを送ってしまい、申し訳ありません 草薙寧々さんの件で、お話ししたいことがあり本日メールをさせていただきました。 単刀直入に言うと、草薙寧々さんは先日亡くなりました。 寧々さんは、半年前、ボロボロの体で私の経営するカフェに入店し、そのままうちで匿うことにしました。寧々さんはとても良く働いてくれて、とても感謝しています。 ある日、私のメッセージアプリに死んでくるとだけ送り、その後寧々さんが海で溺死していたのが発見されました。 寧々さんのスマホから、連絡先を見て、天馬さんなら何か知っているかもと思い、連絡しました。 寧々さんの身元がまだわかっていません。親御さんなどご存知なら、折り返し連絡いただけると嬉しいです。 カフェTANAKA店長 田中

……え

寧々…が死んで…?

……あぁ

えむ

……泣

無言で涙を流すえむくんを見て、やっと現実なんだと認識する

‥どうして、ここがわかったんだい?

…この田中さんって人から、もうひとつメールが来ていたんだ

文章ではなく、スクショだったんだが、これだ

寧々

田中さん

田中

どうしたの?寧々さん

寧々

もしわたしに何かあったら、司かえむって子に、類から目を離すなって言っておいてくれませんか?

田中

どうして?

寧々

類って子、わたしの彼氏なんです。
類はきっと、私がいなくなったらよくないことするから

寧々

だから、お願いします

……っはは

どうしてそこまで、僕のことを理解しているのに

僕を…この世に置いていくんだ、寧々

……辛かったな、類

えむ

類くん…

司くんとえむくんは、僕を優しく抱きしめた

僕はもう、泣くことしかできなかった

…僕がまた寧々は、一体何だったのだろう

…幻覚、かな

うあぁ…泣

っ…泣

えむ

うあぁん…泣

もう、泣くことしかできなくて、どうしたらいいのかわからなくて

……僕は、どうしたらいいんだ、寧々

ふわっと、僕の目の前に緑がかった灰色の髪の女の子が、こちらを見て笑った

(…ね、ね…?)

寧々

『ごめん、類』

寧々

『死んじゃった笑』

へらっと笑う彼女をただ茫然と見ることしかできない

寧々

『…辛かったんだよ、色々』

寧々

『わたしの分まで生きて、類』

寧々

『わたしを苦しめた分、悲しませた分』

寧々

『…それから』

寧々

『わたしが愛した分』

寧々

『生きてもらわないと困るんだから』

寧々

『わたし、類が死ぬまで、生まれ変わるの見送っとくから』

寧々

『ずっと待ってるから』

寧々

『…次は、一緒に不細工に生まれようね笑』

最後まで笑い話だったかのように、彼女は僕に背を向けて歩いて行った

(…待ってる、か)

(ありがとう、寧々)

(僕は生きるよ、君の分まで)

…ほら、寧々。今日はアジサイを持ってきたんだ

……それと

この指輪をね

来世では、ちゃんと結婚できるといいね

寧々、生きていれば成人おめでとう

田中

あら、神代さん

田中さん、こんばんは

田中

いつもありがとうね、寧々さんも喜んでるわ、きっと

…そうだと、嬉しいですね

寧々を半年間匿ってくれたカフェの店長、田中さんと話しながら墓石に目を向ける

草薙寧々

そう掘られた墓石は、いつ見ても慣れる気がしない

生きていたら、今君はどんな人だっただろう

世界的歌姫にでもなっていたかな?笑

僕はあの時、君を救うほどの錬金術は使えなかったけど

今はきっと、君の満足のいく演出ができるはずだよ、人魚姫様

なんとなく寧々の気配を感じ、振り返るも、そこには誰もいなかった

…でも

きっと君は、どこかで見守ってくれているんだろうね

「わたしの彼氏」

end

最後までご愛読いただき、ありがとうございました

この作品はいかがでしたか?

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コメント

6

ユーザー

初コメ&時差コメ失礼します! マジで最高ですやん……神ですか?いや神ですね☆ 普段感動系で泣かない私でも泣きましたわ…… 現在1人で号泣中です、𐤔𐤔 フォロー失礼します!

ユーザー

やばい…涙が止まらない…こんな素敵な話をありがとうございます…!

ユーザー

いい話だな、、 ほんとにあるお話みたいで、、 この物語好きです、!

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