寧々が失踪して、約2週間
メッセージは既読がつかないし、ミク達もなぜか寧々のスマホに入れないらしい
司
それに、類もだ
あんなに好きだった人が、自分のせいでいじめられた挙句失踪
…類の、誕生日に
司
類
以前のような明るさは、どこかに消えたようだった
オレを爆発させることも、ショーの演出にも、やる気が出ないらしい
司
類
綺麗に澄んだ青空は、まるでいつもと何も変わらないようだった
今にも、寧々がそこの扉を開けて、一緒に昼食をなんていうのではないか
…そんな、気がしてしまう
類
司
司
司
類
弁当箱に入った米を箸で掴み口へ運ぶ
類
類は口を押さえた
顔が青ざめている
司
背中をさする、類はヒューッと喉から音を出している
類
司
司
類
類の、ガラス玉のように光る瞳から水滴がでていた
類
類
司
司
類
類は微笑を浮かべたが、目の奥が笑っていなかった
モブ
さようなら!
元気な声が教室に響き、人が次々と教室から出ていく
モブ
モブ
モブ
司
司
モブ
いつもの司くんからは、考えられないほど怖い顔をし、女子生徒を追い払った
司
類
司
司
類
3、2、1
卒業おめでとーう!!
あれから、もう半年以上経った
僕たちは、卒業してしまった
寧々に、会えないまま
司
類
司
類
類
類
司
司
類
僕は、地方の大学に進学することになった
元有名演出家が、講師として演出を教えているという
類
司
モブ
類
モブ
司
類
司
類
モブ
モブ
類
類
卒業式の後、司くんと別れて、何となく海に来た
綺麗に澄んだ青空と、潮の匂いが通り過ぎる
…なんとなく、寧々がいるような気がした
そんなわけ、ないのに
♪ーーー、♪ーーー…
透き通るような、美しい高音が僕の耳に触れる
……寧々の、声
類
類
♪ーーー…
知っている歌だった
小さい頃、寧々と見た
人魚姫の、歌だ
類
必死で叫んだ
ちゃんと心の準備ができないまま、別れてしまった彼女を探して
類
類
寧々
類
寧々は、歌いながら海の方に歩いて行く
顔が見えない、今、どんな顔をしているんだ
類
それ以上行ったら、溺れてしまう
待って、置いていかないでくれ
類
??
腕を引っ張られ、その場に尻餅をつく
えむ
司
類
類
司
司
類
類
えむ
えむ
類
司
司くんは、一通のメールを僕に見せた
はじめまして、突然こんなメールを送ってしまい、申し訳ありません 草薙寧々さんの件で、お話ししたいことがあり本日メールをさせていただきました。 単刀直入に言うと、草薙寧々さんは先日亡くなりました。 寧々さんは、半年前、ボロボロの体で私の経営するカフェに入店し、そのままうちで匿うことにしました。寧々さんはとても良く働いてくれて、とても感謝しています。 ある日、私のメッセージアプリに死んでくるとだけ送り、その後寧々さんが海で溺死していたのが発見されました。 寧々さんのスマホから、連絡先を見て、天馬さんなら何か知っているかもと思い、連絡しました。 寧々さんの身元がまだわかっていません。親御さんなどご存知なら、折り返し連絡いただけると嬉しいです。 カフェTANAKA店長 田中
類
類
司
えむ
無言で涙を流すえむくんを見て、やっと現実なんだと認識する
類
司
司
寧々
田中
寧々
田中
寧々
寧々
類
類
類
司
えむ
司くんとえむくんは、僕を優しく抱きしめた
僕はもう、泣くことしかできなかった
…僕がまた寧々は、一体何だったのだろう
…幻覚、かな
類
司
えむ
もう、泣くことしかできなくて、どうしたらいいのかわからなくて
……僕は、どうしたらいいんだ、寧々
ふわっと、僕の目の前に緑がかった灰色の髪の女の子が、こちらを見て笑った
類
寧々
寧々
へらっと笑う彼女をただ茫然と見ることしかできない
寧々
寧々
寧々
寧々
寧々
寧々
寧々
寧々
寧々
最後まで笑い話だったかのように、彼女は僕に背を向けて歩いて行った
類
類
類
類
類
類
類
類
田中
類
田中
類
寧々を半年間匿ってくれたカフェの店長、田中さんと話しながら墓石に目を向ける
草薙寧々
そう掘られた墓石は、いつ見ても慣れる気がしない
生きていたら、今君はどんな人だっただろう
世界的歌姫にでもなっていたかな?笑
僕はあの時、君を救うほどの錬金術は使えなかったけど
今はきっと、君の満足のいく演出ができるはずだよ、人魚姫様
なんとなく寧々の気配を感じ、振り返るも、そこには誰もいなかった
…でも
きっと君は、どこかで見守ってくれているんだろうね
「わたしの彼氏」
end
最後までご愛読いただき、ありがとうございました
コメント
4件
やばい…涙が止まらない…こんな素敵な話をありがとうございます…!
いい話だな、、 ほんとにあるお話みたいで、、 この物語好きです、!