──薄暗い部屋。
魅音
魅音は、ふと小さな声をこぼした。 その瞬間——
憂唯
低い声。 すぐに髪を掴まれ、乱暴に顔を上げさせられる。
怒気を孕んだ憂唯の瞳が、真っ直ぐに突き刺さる。
憂唯
憂唯
魅音
憂唯
一瞬で笑みが消えた。
次の瞬間、床に叩きつけられる。
強い力で腕を掴まれ、引きずられる。
ゴトン、と重たい扉が開く音。 地下へと続く暗い階段が口を開けていた。
魅音
魅音
魅音
必死に叫んでも、力で抗えない。
憂唯
冷たい声が響く。
背中から突き飛ばされ、冷たい床に倒れ込む。
狭くて暗い、光の届かない空間。 湿った匂いに混じって、自分の泣き声だけが反響する。
魅音
魅音
必死の声も届かない。
返ってくるのは、冷たい吐息と低い声。
憂唯
憂唯
魅音
憂唯
魅音
パシンッ
魅音
ガチャン!
魅音
暗くて静かな地下に、扉が閉まる音が響いた。
魅音
魅音
鎖が冷たく床に触れる音だけが耳に残る。
足音も、声も、もうしない。
魅音
魅音
膝を抱え、身体を小さく丸める魅音。 泣き声はやがて嗚咽に変わり、肩だけが小刻みに震える。
魅音
魅音
闇は深く、静かで、残酷なほどに冷たい。
一人にされたその瞬間、魅音の胸の奥に、 どうしようもない、ひとつの感情が芽生えていた。
18時間後
ガチャン——
差し込んだ光に、 冷たい床に座り込んだ魅音の体がビクリと震えた。
目は真っ赤に腫れ、顔は涙でぐちゃぐちゃ。 声はもう嗚咽とも呼べない、擦れた音になっている。
でも、その光がたった一人の人を連れてきた瞬間、
魅音
鎖が跳ねる音も構わず、四つん這いで憂唯へと滲り寄る。
手足は冷たく、力も残っていないのに、それでも這って、 目の前の靴に手を伸ばした。
魅音
魅音
魅音
声がひきつれ、床に涙がぽたぽた落ちる。
憂唯の脚にしがみつき、子どものように顔を擦りつける。 嗚咽で息が詰まっても、離れようとしない。
魅音
魅音
震えるその手は爪が食い込むほど 強く服の裾を掴んで離さない。
ただ、"ここにいる"という確信が欲しくて、 必死にその体温を探している。
憂唯は何も言わず、しばらくじっと見下ろしていた。
その沈黙は、刃より鋭く魅音の心を抉る。 何も言われないことすら、怖くてたまらない。
魅音
魅音
自分から、しがみつきながら口にしてしまう。
もう理性なんてなく、ただその腕に包まれたくて、 壊れた声で懇願する。
憂唯
ようやく憂唯が膝を折り、 魅音の腕をそっと剥がして抱き上げる。
その瞬間、魅音は両腕で憂唯の首にすがりつき、 まるで離れないように、指先で必死にその服を掴んだ。
魅音
魅音
涙まみれの顔を胸に埋めながら、しゃくり上げる魅音。
その声は子どものように必死で、 哀しいほど真っ直ぐだった。
憂唯は、失ったものを取り戻すように その小さな体を抱きしめる。
憂唯
憂唯
指先が髪を撫でるたび、 その声は優しいのに、目は笑っていない。
魅音はその声に涙を流しながら何度も頷いた。
憂唯
憂唯
憂唯
憂唯
その低い声が胸元で響く。 呪いのようなその温度に、 魅音は頭を擦りつけて泣きじゃくる。
魅音
その言葉が口からこぼれた瞬間、自分でもゾッとする。
魅音
世界がぐにゃりと歪み、音が遠のいていく。
魅音
カチャ…
魅音
足元で、冷たい音が鳴った。
ゆっくり視線を下ろすと、足首には銀色の枷。 鎖が床に伸び、じわりと肌に食い込んでいる。
魅音
かすれた声が小さく漏れた。 でも、それ以上は声にならない。
魅音
小さな吐息だけが漏れる。
その胸の奥に残っているのは、 恐怖と寂しさと、暖かさを欲する心だけ——。
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コメント
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良すぎる最高