──柔らかい朝の光がカーテン越しに差し込んでいる。
眠たげに目を擦りながら、 魅音がふらりと部屋から出てきた。
足取りはまだ不安定で、 寝ぼけたような顔のままリビングへと向かう。
憂唯
キッチンから声をかけた憂唯が、 ゆっくり火を弱めて鍋をかき混ぜた。
香ばしいスープの香りが部屋に広がっている。
魅音はぼんやりとした目のまま、 声のする方へ視線を向ける。
魅音
魅音の目元にはまだ不安と怯えが混じっている。
小さくあくびを漏らしたあと、 周囲をちらと見回してから俯くように立ち尽くしている。
憂唯
そう言って椅子を引くと、 憂唯は自分の足をポンポンと叩いた。
憂唯
魅音は数秒、その場で躊躇った。
昨日、怒らせてしまったのに、優しいから。
足元で冷たく揺れる鎖がカランと音を立て、 身体がピクリと強張る。
魅音
声は小さく、目は逸らしたまま。
けれど、憂唯がそんなことを許すはずもなかった。
憂唯
優しいけれど逃れられない声で自分の名を呼ぶ。 その声に、魅音の肩がピクリと揺れた。
魅音
か細く返事をしながら、 魅音はそろりと憂唯の膝に腰を下ろした。
その動きは、まるで触れると崩れてしまう 硝子細工のように慎重で——
だけど、それでも魅音は逃げなかった。
憂唯はそんな魅音をしっかりと支えて、 片手でそっと頭を撫でる。
憂唯
魅音
魅音の声は震えていた。
その震えが伝わるのか、憂唯の手がそっとお腹に回り、 包むように優しく抱き寄せられる。
憂唯
憂唯
その言葉に、魅音の目が少しだけ開いて、 ほんのわずかに唇がゆるんだ。
魅音
憂唯
憂唯は用意していたマグを片手に、 スプーンでそっとスープをすくった。
憂唯
魅音
魅音は少し恥ずかしそうに、でも拒まず口を開ける。
ひと口含んだ途端──ふわりと優しい味が舌に広がった。
魅音
憂唯
憂唯は静かに笑って、もう一口分すくう。
憂唯
魅音
ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"
魅音
黎翔
憂唯
魅音は差し出されたスプーンを見て、 ほんの一瞬ためらった。
けれど次の瞬間、ふいに憂唯の胸へと身体を預ける。
憂唯
憂唯は微笑みながら、そっと魅音の髪を撫でる。
魅音
この一言に、憂唯は心当たりがあった。
憂唯
その声は試すようでいて、どこまでも優しい。
魅音
魅音は胸の奥がぎゅっと締めつけられて、唇を噛んだ。
魅音
憂唯
言葉を遮るように憂唯がそう言った。
魅音
憂唯
憂唯
魅音
目を伏せたまま呟く魅音を、憂唯は優しく抱きとめて、 耳元で低く囁いた。
憂唯
魅音
声は震えて、思い出しただけで胸が詰まる。
憂唯
憂唯
憂唯
魅音
憂唯の腕の力が、さらに強くなる。
憂唯
低く囁きながら、髪に口づけを落とした。
憂唯
指先が優しく前髪をながす。
けれどその目は、底が見えないほど冷たかった。
憂唯
魅音
魅音の胸の奥がぎゅっと縮む。
その言葉は優しいのに、ひどく冷たい刃みたいに響いた。
憂唯
笑いながら落とされたその声は、 冗談みたいなのに冗談じゃない。
魅音は思わず胸に置いていた手で憂唯を押そうとする。
だが、その手首を憂唯がそっと包んで、動きを止めた。
憂唯
憂唯
耳元に近づいた声は、低く甘く、 逃げ道を塞ぐようだった。
胸を押す手に力が入らない。 震えるばかりで、もう拒むことすらできない。
その手首を包んだまま、憂唯はぐっと抱き寄せる。
強い腕に絡め取られ、 抗おうとする身体ごと引き寄せられる。
魅音
息が詰まりそうなのに、 近くのぬくもりに逆らえなかった。
怖い。だけど、確かに温かい。
その矛盾に心が揺れて、声にならない吐息が漏れる。
背に回された大きな手のぬくもりから逃げられず、 小さな安堵と大きな不安の間に、ただ沈んでいった。
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静かなシーンにしたいと思ったら、 地の文が多くなった💦 読みにくかったらごめんなさい🙇♀️
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