雨上がりの街。
高く見える空。 路面の水溜まり。 水滴をまとった花。
水溜まりに、水滴に、陽の光が反射して街全体がキラキラと輝いて
まるで知らない世界に迷い込んだような、不思議な感覚になる_____
雨が上がった。
部活終わりの塾に向かう道は、傘の出番は無さそうだ。
___風に乗って雨独特の匂いが鼻孔を通り抜けた。 吸いよせられるように空を見上げる。
雨上がりの空は こんなに綺麗だったのか_____…
しばらく空を見上げて、また視線を正面に戻すと__
____女の子が2人立っていた。
1人は雨は上がっているのに傘をさし、もう1人は「500」とプリントされた帽子を目深に被っていた。
幼い少女たちは無表情で___だけど心の奥底まで見透かしそうな瞳で、俺を見ていた。
_傘をさしている少女が俺から片時も目を離さず口を開いた。
カサ
帽子を被った少女が同じく目を離さずに口を開いた。
500
……誰のこと言ってるんだろう…?総受け?
カサ
500
女の子2人は俺を挟む形で両側に立った。 少し灰色がかった瞳が両方から俺を見上げる。
カサ
500
カサ
山崎 孝太
カサ
山崎 孝太
500
山崎 孝太
カサ
500
山崎 孝太
山崎 孝太
傘をさしている少女が傘を一回回した。 帽子の少女がさらに深く帽子を下げた。
カサ
500
女の子2人は俺から視線を外すとそのまま歩き始めた。 遠ざかって行くのに声だけは 耳打ちでもされているかのようにすぐ近くで聞こえる。
カサ
500
カサ
500
カサ
500
女の子達の姿は完全に見えなくなった。もう声も聞こえない。
水滴が反射して宝石のように輝いてる街中で ずっとその場に立っていたいけど、そうはいかない。塾がある。
雨上がりの空を見上げながら、俺は歩き出した。
もしかしたら
もしかしたら会えるかもしれないと思って 水溜まりを蹴散らしながら走った。
___私が孝太君と初めて話した交差点。あそこに来たら信号より先にあの人を探す。
部活の後塾に向かうと聞いて、もしかしたら会えるかもしれないと思って、大学が終わると走った。
私が急げばもしかしたら____… 淡い期待は交差点に着く前に願望に変わった。 ___だから最初は見間違えたのかと思った。
____孝太君がいた。 もしかしたら が現実になった。会えた。
息を整える時間も惜しくて私は再び駆け出した。 __同時に孝太君が振り向いた。
山崎 孝太
相原 澪
そっと孝太君の指に触れた。
山崎 孝太
指と指が絡まった。
横断歩道を渡ってちょっと進むと楽しい時間は終わってしまう。 孝太君は左に、私は右に曲がらないといけない。
「今日電話していい?」を「さよなら」の代わりにして別れた。返ってきた返事も「さよなら」じゃなかった。
口元に手を当てた。今私はどんな顔をしてるんだろう_____…
カサ
500
両側から、声が聞こえた。 いつの間にか幼い少女2人が私を挟む形で立っていた。
カサ
500
相原 澪
カサ
500
傘をさしている少女が傘を一回回した。 帽子の少女が帽子をさらに深く下げた。
カサ
500
カサ
500
女の子二人は無表情のままさらに私との距離を詰めた。
「「彼が大好きだから」」
相原 澪
変な声が出てしまった。 面と向かって言葉にされると恥ずかしすぎる。
カサ
500
女の子二人は私から一瞬たりとも目を離さない。 __私は観念して頷いた。
相原 澪
相原 澪
カサ
500
女の子二人は私から視線を外した。
カサ
500
カサ
500
相原 澪
二人は私の言葉を遮るように1歩前に出て振り向いた。
カサ
500
相原 澪
二人の少女は前を向くと、もう言葉を発することもなく振り返ることもなく歩いて行った。
きっと私の顔は今 物凄く赤くなってるけど それでも口元が緩んだ。
だって嘘じゃない。それが私の気持ちだから。
……今日の夜はどんな話をしよう。
17時半には大学を出られる__はずだった。
講義が長引いたのと、トイレが混んでたのと、化粧直しに手間取ったのとで結局大学を出たのは18時2分前だ。
約束の時間にはどう足掻いても間に合わない。 柚月君に遅れる旨をラインすると
「<(`^´)>」 とだけ返って来た。かわいい。 ___って違う!
今どの辺りを走っているのかと、窓の外を見ると夕暮れの雨上がりの空が思いがけず綺麗でしばらく目を奪われた。
ぼんやりと窓の外を眺めているうちに電車が駅に滑り込んだ。反対側の扉が開く。
__ようやく窓の外から視線を外した私は、周りの乗客が全員いなくなってることに気づいた。
___皆降りたのかな…全然気づかなかったけど
私以外誰もいないやけに静かな車内に____二人の少女が乗って来た。 1人は傘をさしてもう1人は帽子を深く被っている。
扉が音もなく閉まった。アナウンスも無しに電車が動き出す。 女の子二人は私の前まで来ると、灰色がかった瞳で私を見上げた。
カサ
500
ド直球な第一声に心臓が跳ね上がったけど___ ____この2人には、話しても大丈夫な気がした。て言うか隠しても無駄な気がする。
山川 のぞみ
カサ
500
山川 のぞみ
山川 のぞみ
傘をさしている少女が傘を一回回した。 帽子の少女がさらに深く帽子を下げた。
カサ
500
カサ
500
私は灰色がかった二つの瞳をまじまじと見つめた。
山川 のぞみ
カサ
500
女の子二人は視線を外すと扉の方に歩き出した。
カサ
500
カサ
500
___音もなく電車が駅に滑り込み扉が開いた。
私が何か言う前に女の子二人は電車を降りて行った。 入れ替わりに たくさんの人が乗って来る。
___ベルが鳴り「発車します」のアナウンスとともに電車が動いた。 いつもの景色。
もう車内に誰もいない、なんてことは起きない……そんな気がする。 でも女の子二人の声は耳に残ってる。 ___私は再びラインを開いた。
「あと3駅💦💦ごめんね💦」
「o(^-^o)(o^-^)o」 「間違えた」 「<(`^´)>」
私は次の文を打ち始めた。
取り巻き
今日は遠出してご飯食べよう、と思ったのがまずかった。
18時過ぎ、駅に向かうと駅前の広場で吉田くん達が屯(たむろ)していた。
良く言えば「親しみやすい人」認識されてる、悪く言えばちょっと舐められてる俺は普段から 「成績上げろ」だの「掃除手伝え」だの いろいろ大変な目に遭っている。
今も俺というカモを発見した取り巻きが吉田くんに嬉々として報告している。 このままだと身ぐるみ剥がされる…!
___しかし。 吉田くんは手元のスマホゲームに夢中らしく取り巻きの報告を超適当にあしらっていた。
_____が、集中は乱されたらしく…
吉田
………公共の場だよ吉田くん
吉田
取り巻き
吉田くんは鼻を鳴らすと、貧乏揺すりをしながらゲームを再開した。
取り巻き
吉田くんの機嫌を損ねてしまった取り巻きは慌てて自販機に向かった。 一軍社会は怖いなぁ。
___飲み物を買って来た取り巻きは、「シね」とか「クソが」とか呟きながらゲームに熱中してる吉田くんの近くに置いた。
その飲み物を____傘をさしている少女が手に取った。
傘をさしている少女は無表情で飲み物を上下に振った。 ……それ吉田くんのだよ。
女の子はそのまま20回くらい振ると、飲み物を隣の帽子を目深に被っている女の子に手渡した。
帽子の少女もこれまた無表情で飲み物を上下に振る。 不思議なことに吉田くんも取り巻き達も二人の存在には気づいていないようだ。
___帽子の少女が飲み物を元の場所に置いた数秒後
苛立たし気にため息を吐いた吉田くんが シェイク&シェイクされた飲み物(炭酸)の蓋を開けた______……
雨上がりの空に虹が出来た。 (訳:炭酸水が派手に逆バンジー)
これがテレビ番組なら違う角度で3回くらいスロー再生していると思う。
炭酸水の雫を垂らして呆然としている吉田くんと青ざめる取り巻き達__…。
「大乱闘☆スマッシュ吉田ーズ」が起きる前に俺は慌てて退散した。 一軍社会は怖いなぁ。
とりあえず身ぐるみ剥がされなくて良かった、と駅のエスカレーターを上りきると___ あの二人が待ち構えていた。
西谷 春翔
本気でびっくりしたので思わず声を上げると、女の子二人は心なしかゴミを見るような目で俺を見上げた。
カサ
500
カサ
西谷 春翔
カサ
西谷 春翔
500
西谷 春翔
カサ
500
傘をさしている少女が面倒臭そうに視線を外した。
カサ
西谷 春翔
500
カサ
500
西谷 春翔
鳴沢 柚月
ため息を吐きながら電光掲示板に目をやる。
あと3駅と言っていたから7分後に来る電車に乗っているはずだけど、 時間の進みがひどく ゆっくりに感じる。
僕は駅のホームで何度目かのため息を吐いた。 …これだと僕が張り切りすぎてるみたいだ。
カサ
500
___いつの間にか両隣に二人の女の子が立っていた。
びっくりして声を出せずにいる僕を、少し灰色がかった瞳が両方から見据えた。
傘をさしている少女が傘を一回回した。 帽子の少女がさらに深く帽子を下げた。
カサ
500
カサ
500
鳴沢 柚月
カサ
カサ
500
この二人がどんな人なのかまだよく分からないけど___ __僕は背筋を伸ばして答えた。
鳴沢 柚月
鳴沢 柚月
カサ
鳴沢 柚月
500
そして不思議な女の子二人からの質問責めが始まった。
カサ
500
鳴沢 柚月
これでもかと根掘り葉掘り訊かれて、僕は結構疲れていた。(恥ずかしくて)
女の子二人はそれには答えず___両側から僕の頬を触れた。
カサ
500
鳴沢 柚月
電車が来るまで二人の手は離れなかった。
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
僕はこれ以上のぞみさんが頬に触って来れないように、のぞみさんの腕に手を絡めた。
僕の背中をあの不思議な女の子二人の声が撫でた___気がした。
カサ
500
夜。 そして朝。
___夢を見た。
夢にしてはリアルで、だけど不思議な
二人の少女の 夢を見た。
取り巻き
駅前の広場に、制服を着崩した中学生が屯(たむろ)していた。
知った顔を発見した中学生の1人が集団のリーダーらしき人に勇んで報告する。
しかしリーダー格の中学生は全く興味無いようで、中学生の報告を超適当にあしらっていた。
__が、集中は乱されたらしく…
吉田
吉田
取り巻き
リーダー格の中学生は鼻を鳴らすと貧乏揺すりをしながらゲームを再開した。
取り巻き
機嫌を損ねてしまった中学生が慌てて立ち上がると__ __リーダー格の中学生の手が止まった。
リーダー格の中学生は何事か考え込む表情を見せた後、顔をしかめた。
吉田
取り巻き
吉田
陽の光が反射して、雨上がりの街は宝石のように輝いていた。
女子大生と男子中学生が交際している話 番外編 カサミネさん 久遠あゆみさん 友情出演
コメント
10件
本当に夢のようでした…!!😭 あゆみさんと一緒に出演させて頂けたの嬉しすぎますし、灰色の目をして傘をくるりと回す、不思議な雰囲気を纏った人物像にしていただけたのがとても嬉しいです!! 主要キャラの皆とお話することが出来たことや、「ずっと見てきた」の言葉に感動してしまいました🥲
ありがとうございます😭😭😭 めちゃくちゃかっこかわいいミステリアスロリに書いていただけて嬉しいです…! あの不思議な存在って感じが好きです…!!! マジでありがとうございます🙏🙏🙏🙏
カサミネさん、久遠あゆみさん、を書かせて頂きました。快く出演を引き受けて頂きありがとうございました! 溢れる感謝が244タップを生み出しました! 「僕/私も出演したい!」とあれば「こんなキャラとこういうことしたい」と希望を添えて非リア弟にコンタクトを取ってください。(希望が無ければ四天王と共演です😏) 大歓迎ですよ😉非リアは頑張ります😌😌 読んでくださりありがとうございました❗