優希
冬夜
優希
「人、殺しちまった」
夏の空、消えゆく君の姿
冬夜
8月5日、夏休みも中盤に差し掛かってきた頃
親友の優希(ゆうき)に言われた衝撃的な言葉
「人を殺した」
初めは冗談だと思った
でも、優希の目があまりにも真剣で
これは事実なんだなと確信した
冬夜
優希
優希
優希
冬夜
言葉が出ない
今のこの現状に頭が追いついていない
冬夜
何とか言葉を探して口を開く
ただ、ありきたりなことしか言えないが
優希
冬夜
優希
優希は突然笑いだした
そして、再び俺に向き直り
手を差し出した
優希
優希
冬夜
俺たちは今山を昇っている
「付き合ってくんね?」
あれは山登りに付き合えという意味だったようだ
完全にそこら辺の店とかだと勘違いしていた
優希
冬夜
優希
昔から運動神経が良い、いわゆる体育会系の優希はズンズンと山の奥へすすんでいく
対して運動が苦手な文化系の俺は既にヘトヘトだ
冬夜
優希
あれから5分ほど歩いて、開けた場所に出た
さすが8月、太陽がギラギラと照らしている
冬夜
優希
へとへとになった俺を嘲笑うように優希は俺をからかった
冬夜
優希
冬夜
「ははっ」と笑いながらカバンを漁る優希
汗もほとんどかいてないからほんとに余裕みたいだ
優希はカバンからお菓子を出して俺に差し出した
優希
冬夜
優希からお菓子を受け取り、袋を開けながら俺は優希に尋ねた
冬夜
優希
優希
冬夜
そうだ、こいつ
山で人を殺したんだ
あまりにもいつもどうりに振舞っていたから、忘れていた
優希
優希
冬夜
冬夜
あれから10分ほど休憩して、俺たちはまた山登りを再開した
そして、また開けた場所に出た
ここはすごく綺麗だ
優希
冬夜
優希
冬夜
サァァッと風が吹いた
優希
名前を呼ばれて優希の方を向くと、そこには
少しづつ消えていく優希の姿が
冬夜
優希
優希はにっと笑った
冬夜
優希
優希
冬夜
優希
優希
冬夜
優希
優希に言われて、俺は恐る恐る崖の下を覗いた
冬夜
崖の下にちょっとした空間があり、そこに倒れている優希の姿があった
冬夜
優希
優希
優希
優希
そのまま優希は消えていった
真っ青な夏の空の下で
1ヶ月後
あの後、俺はすぐに優希のいる場所に下りた
カバンに食料があり、何とか生き延びていたようだった
すぐに救助を呼んで、優希は病院に運ばれた
でも、優希は助からなかった
悔しかった、もしあそこで休憩をとっていなかったら助かってたのだろうか、もっと早く気づいてれば と、後悔ばかりが自分を襲った
でも、今はそんな気持ちほとんど消えている
だって、優希に言われたから
朝起きた時に、手に握られていたメモ
あれは絶対に優希の字
「夏は俺の月!ぜってー忘れんなよ! まー、あれだ、ちょーっと早くあっちいってるからさ、優希はもう少しこっちに居て。 てか俺来週発売の漫画読みたかったからお前代わりに読め!」
「後悔ばかりしてたら俺が夏をもーっとあつくしてやるから、やだろ?だから後悔すんな!お前のせいじゃないから」
後悔するな、たったそれだけの言葉なのに
どうしてこんなにその言葉に従いたくなったんだろうか
冬夜
冬夜
夏の空、消えゆく君の姿
完
コメント
6件
めちゃくちゃ良かった… (語彙力はバカンス中です)