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ゆい
クロス
ゆい
ゆいの視線は、一つの存在に惹かれていった。 クロス――冷ややかに微笑む彼が、静かに前に進む。
クロス
その声は低く、抑えられている。だが言葉の端々に確かな確信が宿っていた。
ゆい
唇が震える。クロスはゆっくりと両手を差し出す。
クロス
ゆい
クロス
ゆいはふらりと膝が崩れるように、クロスの手を取っていた。自分でもなぜ選んだのか説明できない。ただ、そこに「終わり」を期待していたのかもしれない――繰り返す苦しみを終わらせる方法として。
ゆい
クロスは微笑んで、ゆいを静かに抱き寄せる。 その微笑みの奥底で、幾つもの線が弾けるように光った。 告白が終わると同時に、空気が変わった。 他のサンズたちの顔は崩れ、叫びが上がる。だがクロスはただ一人、静かに歩き出した。
クロス
言葉は冷たく、しかし行為は執拗だった。クロスは指先で空間に触れるように振ると、周囲の景色が小さく歪んだ。 薄い亀裂が走るように、屋上の物と人物の輪郭が歪み始める。 クラシックの影が少しずつ崩れ、フェルサンズの叫びが遠くなる。クロスはゆいを抱きしめたまま、静かにささやく。
クロス
その「整理」は誰にも止められるものではなかった。 クロスの手の動きに合わせ、空間が切り取られ、声が断たれ、遠い世界へと押しやられていく。 ゆいの目の前に残されたのは、静かな狭間だけ――そしてクロスの瞳。
ゆい
クロス
日々は削ぎ落とされ、ゆいの世界は一本の線に収斂していく。 食事は与えられ、体は保たれる。だが記憶の周縁部は次第に剥がれ落ち、色彩と音が薄れていく。ゆいの名前は、やがてクロスの世界の一部として埋没していった。
BAD END — 線に閉じられて
クロスを選んだゆいは、彼の“整理”によって現実から切り離された。 全てが一つの線に整えられ、他者の声は届かない。 優しさの名を借りた冷徹さの中で、ゆいは静かに溶けていく。 その場所では、選択すら意味を失い、世界はクロスの描いた輪郭だけが残った。
*はじまる