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15 - 第十三話 「静かなる裏切り、あるいは忠誠」

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2025年08月07日

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第十三話 「静かなる裏切り、あるいは忠誠」

愛知は、一本の線香を花紋の前に立てた。

香の煙が、ぼんやりと黒く揺れている。

愛知

……動いた、な。

静かに入室したのは、北海道。

愛知は振り返らずに言った。

愛知

“内部に第九がいる”。

愛知

それを信じて、いいんだな?

北海道は一拍置き、静かに言う。

北海道

ああ。

北海道

でも、“どこにいるか”までは言えない。

北海道

証拠が見える前に、疑いを口にすれば、

北海道

それこそ“第九の術中”だ。

愛知の目が細くなる。

愛知

なら、黙って疑い続けるしかない。

愛知

マフィアにとって、それが一番厄介なんだよ。

宮城は一本の煙草に火を点けた。

視線の先には、記録室にある分厚い帳簿。

『第八席・粛清計画』

『HYDRANGEA黒帯組織・暗部記録』

重なる文字の中に、一枚だけ挟まれたメモ。

『― 京西ノ者、粛清二参加セズ。理由:不明 ―』

宮城

……裏切られた、のではなく。

宮城

“共謀を拒否した”者がいた……?

広島は、昔の地図を広げていた。

その端に、かすかに記された地名。

『京西――別称:第零の花』

広島

HYDRANGEAが“七大都市”と定義される前……

広島

第零の花は、“拒絶された都市”だった。

広島

なら……“香京”の怒りは、

広島

“参加できなかったこと”ではなく――。

広島

“拒絶した側”への報復だ。

東京は、暗号解読チームの報告を聞いていた。

部下

“香京”が発信していた座標の断片が一致しました。

部下

目的地は……愛知の北側、“駿河境”です。

東京の瞳が一瞬揺れる。

東京

“あの場所”か……。

東京

まだ、埋まってなかったんだな。

それは――

HYDRANGEA創設以前に、“血の契約”が交わされた場所。

東京

歯車が回る。

東京

過去が、戻ってくる。

大阪は路地裏の取引現場に立っていた。

足元に転がる死体のポケットから、小さなケースが落ちる。

開けると、中には七枚の花びら。

だが、その中心には“黒い石”が埋まっていた。

大阪

……なるほど。

大阪

“第九”は、既に花を咲かせてたんやな。

大阪

ただの“空席”やない。

大阪

“黒花”が、咲いとる。

福岡は、ある暗殺依頼の情報を受け取った。

『標的:北海道』

目を伏せ、拳を強く握る。

福岡

HYDRANGEA内で、殺しが動き出した――。

福岡

第九……あんた、本気で“崩しに来てる”な。

背後にいる幹部が問う。

部下

どうします?

部下

止めますか?

福岡は答えない。

ただ、銃に弾を込め、静かに言った。

福岡

止めるのは俺じゃない。

福岡

“撃つ前に考える奴”が、いるかどうかだ。

再び、円卓。

七人の視線が交差する。だが、誰も口を開かない。

花紋の中央に、小さな揺れ。

第八の花が、わずかに傾き、第九の方向へ滲んでいく。

東京は、立ち上がりながら言う。

宮城

次に動いた者が、“黒花”に手を伸ばした者だ。

宮城が低く呟いた。

広島

動かぬ者も、また疑われる。

愛知は静かに目を閉じた。

愛知

じゃあ、こうしよう。

愛知

“動いた者”全員を、止めるしかないな。

均衡は、微かに揺れ始めた。

“誰が”動いたのか、“なぜ”動かないのか。

HYDRANGEAの中に入り込んだ「第九」の存在が、次回いよいよ

――触れる。

次回

火種が確実に内部に燃え広がり始めたHYDRANGEA──。

第十四話 「火花の先にあったもの」

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コメント

54

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400くれるなら400あげます(???) 裏切り……だと…?(( まじで第九が気になる()

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