テラーノベル
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「○○」 名前を呼ばれるたびに、まだ少しだけ胸がはねる。 呼び捨てになって数日。 伊作は自然に○○のことを名前で呼ぶようになった。 最初こそ照れていた○○も、少しづつ慣れてきている。 それでも嬉しいものは嬉しい。 その日も実習が終えた帰り道だった。 ○○は一人で裏山を走り回っていた。 最近、少し焦っていたのだ。 六年生は強い。 伊作たちは卒業を控えた最高学年。 自分も少しでも近づきたい。 追いつきたい。 そんな思いから、授業が終わったあとも自主練習を続けていた。 木から木へ飛び降り、手裏剣を投げ、何度も技を繰り返す。
○○
額から汗が流れる。 足も重い。 けれど、まだ足りない気がした。 もう一度。 そう思って木の枝へ飛び乗った瞬間。 足が滑った。
○○
体制が崩れた。 咄嗟に受け身を取ったものの、地面へ転がる。
○○
幸い大きな怪我ではない。 ただ膝を少し擦りむいた。 ○○はまた立ち上がろうとしてーー。
善法寺 伊作
聞きなれた声が響いた。 振り向くと伊作が駆け寄ってくる。
○○
善法寺 伊作
すぐに膝を見られる。 伊作の顔は思った以上に真剣だった。
○○
善法寺 伊作
○○
そう答えると、伊作は少しだけ安心したようだった。 けれど表情はまだ曇っている。
善法寺 伊作
○○は言葉に詰まった。図星だった。
善法寺 伊作
優しい声だった。 怒っているわけではない。 心配してくれているのがわかる。
○○
○○は俯く。
○○
伊作は黙って聞いてくれている。
○○
言葉が次々に溢れる。 自分でも気づかないうちに焦っていたらしい。 伊作はしばらく考えたあと、小さく笑った。
善法寺 伊作
○○
善法寺 伊作
善法寺 伊作
○○は顔を上げた。 夕暮れの光の中。 伊作は穏やかな表情をしていた。
善法寺 伊作
○○
善法寺 伊作
その通りだった。 わかっている。 けれど焦ってしまうのだ。 すると伊作がそっと○○の頭に手を置いた。
善法寺 伊作
○○
善法寺 伊作
心臓が大きく跳ねる。 伊作は少し照れたように笑った。
善法寺 伊作
○○
善法寺 伊作
善法寺 伊作
○○の胸がじんわりと熱くなる。 ずっと一人で頑張なければならないと思っていた。 弱音を吐いては行けないと思っていた。 けれど。
○○
善法寺 伊作
○○
善法寺 伊作
伊作は優しく笑う。 その笑顔を見た瞬間、肩の力が抜けた。 夕焼けが二人を照らしている。 並んで歩く帰り道。 ○○は思う。 強くなりたい気持ちは変わらない。 でも、一人で頑張る必要はない。 隣には支えてくれる人がいる。 そう思えるだけで、不思議と前を向くことができたのだった。
コメント
1件
よかった…。怪我のシーンで一瞬ハラッとしたけど、伊作の「頼って欲しいんだ」って台詞、すごく胸にきたよ。恋仲だからこそ、甘えていいんだよってちゃんと言葉にしてくれるの、安心するなぁ。○○の「頑張らなきゃ」って気持ちもすごくわかるし、それでも一人で抱え込まなくていいんだって教えてくれる展開が温かくて好きだな。
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#暗め