短冊を拾った
咫穏
(なんで短冊が……?)
《あの人のそばにずっといられますように》
小さな文字でぎっしりと書き込まれている
咫穏
…………
《あの人の目に映るのが自分だけでありますように》
《あの人が自分だけを見てくれますように》
咫穏
(……妄執の念を感じる)
《あの人の愛情を独り占めできますように》
《俺からあの人を奪うやつは許さない》
咫穏
独占欲がただ漏れだよ
《特にあの人と仲良さげなアイツはなんだ? 毎回あの人を誘って飲んでいる。 あの人もあの人でなんで一緒に飲んでいるんだ? 俺も酒豪だったらよかったのに…………》
咫穏
(愚痴ってるな)
《あの人ともっと特別な関係になりたい》
咫穏
(しかもこの筆跡、見覚えがあるし)
咫穏
咫穏
拾っちゃいけないものを拾ってしまった……
短冊を落ちていたところに戻し、足早に立ち去ろうとした瞬間──
和装本が落ちた
咫穏
あ……
落ちた拍子に頁が見開く
人間と狐が鬼を取り合っている場面だった
何度も読みかえし、内容は頭の中に入っている
咫穏
(……たしか、このあと…………)
和装本を拾い手で埃を払う
先祖が書き記した大事なもの
咫穏
咫穏
(……嫌な予感がする)
咫穏
ただの杞憂ならいいけど