死番

まさか、とは思い 都内の大きい病院にいる。

ソレ が言ってたのが本当なら 俺はここで肺がんと診断される。

死にたくない。

ソレ の戯言だったら良かったのに。

冗談だったら良かったのに。

死にた＿＿＿

死にたくない死にたくない死にたくない

死にたく、ない

頬を温かい何かがつたる。

涙だ。

普段涙なんて感動しても 出すことはなかった。

生きたい、と思ったんだ。

職業柄、死は間近でもあった。

けど、自分の番だとわかった瞬間に その役目を放棄したくなる。

死にたくない、と。

家に帰り、書類を書く。

借りてたマンションの書類と 仕事の退職の。

遺族のへと、 身の回りの書類。

役割が切れる保険のも。

死にたくないな、って涙がつたう。

生きてたいなって、胸が苦しくなる。

ポケットのタバコの箱に手を伸ばすが 完治したいのもあってなかなか 吸う決心がつかない。

どうせ死ぬのに。

いつか死ぬのに。

我儘だなって思い泣いた時間は

何時だったのか、もう知らない。 ーーー