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それは、ほんの一瞬、通学路の風景が“歪んだ”ように見えた瞬間だった。

空が、音もなくひび割れた。 家々の影が、にじむように広がった。 見慣れたはずのアスファルトの地面が、ざらざらと紙のようにめくれ、真っ黒な何かがその下から覗いた。

そして——

狐面の存在

「よく、ここまで歩いたな」

声が、どこからともなく降ってきた。

ナナセが振り向くと、そこにいたのは、狐面の存在だった。

夕暮れの光の中で、白い狐面が不気味に鈍く光る。金色の瞳が面の内側からのぞいているように錯覚する。着ているものは、どこか時代劇で見たような狩衣だが、ひどくくたびれていた。異質なものなのに、不思議とそこに“いるべき存在”のような馴染みを感じさせる。

ナナセ

「……あんた、誰?」

狐面の存在

「忘れたか? いや、思い出す前だったな。なら名乗ってやる義理もない」

狐面は、くすくすと笑う。

狐面の存在

「記憶が欲しいんだろう? じゃあ取引だ。お前に刻まれた“印”を媒体にして、怪異を狩れ。狩った分だけ、記憶を返してやる」

ナナセ

「怪異……?」

ナナセは口元をひきつらせる。夢の中のような、現実味のない言葉だった。

ナナセ

「なによそれ。ゲームじゃないんだから」

狐面の存在

「現実だ。怪異はこの町に実在する。“向こう”と“こっち”の境界が揺らいでいる。お前が“狩る”ことで、その穴を塞ぐこともできる」

ナナセ

「どうして私が」

狐面の存在

「お前がそれにふさわしい存在だからさ」

狐面はナナセの背中へ目を向ける。いや、正確には、その“印”へ。

狐面の存在

「その印は、お前自身の“本質”だ。封じられた記憶の痕。呪いと贖罪の印だよ」

ナナセ

「……なんの話」

ナナセの中で、言葉にできない恐怖と懐かしさが交錯する。

狐面の存在

「やるか、やらないかは選ばせてやる。だが言っておくぞ」

狐面は声の調子を変えた。嘲るような調子が、急に鋭く、切り裂くように変わる。

狐面の存在

「お前がそのままでいられる時間は、もう長くない。あの印が完全に“開いた”とき、記憶は否応なしに戻ってくる」

ナナセの背中に、じわりと熱が走った。

狐面の存在

「思い出してしまう前に……せいぜい、自分の“意思”で狩れ。お前が人間でいたいならな」

狐面の姿は、次の瞬間、掻き消すようにして消えた。

——地面は、空は、街の音は、いつも通りの世界に戻っていた。

だがナナセの背中に、確かに熱は残っていた。

そして、制服の袖口からは、小さな紙切れがはらりと落ちた。

そこには、見覚えのない一筆書きの筆文字で——

《最初の怪異:喪女ノカカシ》

とだけ、書かれていた。

シロイヒガンバナ

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