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支倉亜湖、旅館を継ぐ跡取り娘だが、若女将業が嫌で今は貸家となっている亡き祖母の家に一人で暮らす能天気女子。 ある日、亡き祖母の友達から手紙を受取り驚愕!祖母の友達の孫と同居する事になってしまった。 一緒に暮らすのはなんと、同じ学校で有名なイケメン男子、藤宮善だった。

こんな事ってある? 何よ孫って…知らないし。 だいたいなんでここ?

おばぁちゃんの友達って誰?もー、なんで~

ていうか、、

孫って男?女?

藤宮 史乃(善の祖母)

不在着信

不在着信

支倉 亜湖

はい…どちら様ですか?

藤宮 史乃(善の祖母)

実代さんのお孫さんの亜湖ちゃんかしら?

支倉 亜湖

はい、そうです…

藤宮 史乃(善の祖母)

良かった、手紙を送った者です。急な事で困ってるでしょ?ごめんなさいね

支倉 亜湖

いえ…あの、ここに孫が住むと書いてあったんですけど

藤宮 史乃(善の祖母)

そうなの、以前実代さんが空いてる時は不動産屋とあなたのご両親へ連絡してくれれば好きに使っていいと言われていてね

支倉 亜湖

あ~…… そうなんですね

藤宮 史乃(善の祖母)

連絡入れたら亜湖ちゃんが住んでるから聞いてみてくれと言われたから手紙を出したの

支倉 亜湖

そうですか… でも、私が住んでるし大丈夫ですか?部屋はあるからいいですけど

藤宮 史乃(善の祖母)

助かるわ、実代さんとの夢が実現しそうで嬉しいわ。もう少ししたらそちらに孫が行きますので仲よくしてくださいね、では…

支倉 亜湖

あ…切れちゃったし。

支倉 亜湖

あー、どうしよう!!一緒に暮らすの?孫って誰よ~
もうわけわかんなーい!

支倉 亜湖

はぁ…

私の亡き祖母の友達で史乃さんの孫、まだ詳しくは知らないが一緒に暮らす事が決まっていた。 両親の願いを踏み倒し決められた道より自ら決めて進みたいと懇願し家を出た。 それには祖母の後押しがあったからこそで、その祖母が亡くなって両親は心配ばかり。だからこそ一人より二人、ましてや祖母の信頼する友達の願いとあらば当然両親は首を縦に振る。 だから今私に拒否権はないのだ。

支倉 亜湖

おばぁちゃんの友達だから信用してるよ、でもね、男だったらどーしよー
私 女のコなんだよ、神様~

インターホンが2回鳴る

支倉 亜湖

え… まさか、来た?

支倉 亜湖

ヤバい…

支倉 亜湖

とりあえず返事返事…
はーい!今行きますー

ドタドタと慌てて玄関先に来て止まる。 一呼吸して、ソローリと静かに玄関ドアに耳を当ててみる。

支倉 亜湖

……

ピンポン!また鳴されるインターホン。

支倉 亜湖

!!

支倉 亜湖

はい、今開けますね

鍵を開ける手がどんなにドキドキしているか… ガチャリとドアをゆっくり開けてみるとそこには…

藤宮 史乃(善の祖母)

…あんた誰

支倉 亜湖

は…?

藤宮 史乃(善の祖母)

誰かって聞いてんの、耳に穴ないの?

支倉 亜湖

ちょっ… な……

ん?あれ…あれっ?見たことあるよね、私… この顔ってもしかして?ううん、もしかしなくてもだよっ

支倉 亜湖

あー、あなた、あの、あれよね!あの人!!

藤宮 史乃(善の祖母)

……バカっぽいって言われない? あ、バカなんだな

支倉 亜湖

な、なっ…

藤宮 史乃(善の祖母)

藤宮 善、あんたが俺の大家さん?若くていいけどガキとはね…

支倉 亜湖

な、あ…

藤宮 史乃(善の祖母)

ちゃんと口から言葉出してくれる?俺の部屋どこ、早く案内しろよ

支倉 亜湖

う…

嘘だ、あの噂の藤宮善が目の前にいるー!!目の錯覚?白昼夢? ねぇおばぁちゃんの友達の史乃さんの孫ってほんとにあの藤宮善なの? てか、本物だよ… 知らない子はいないもん。 ほんとに、藤宮善がいるよ……

藤宮 史乃(善の祖母)

おーい、大家さん早くして

支倉 亜湖

は、はいー!ただいま参りますっ

支倉 亜湖

って何言ってんの私~

藤宮 史乃(善の祖母)

家だから家具付きで荷物要らないって言うから服とか最低限いるのだけ持ってきた。あとは届くから。

支倉 亜湖

そうなんですね…

藤宮 史乃(善の祖母)

で、大家さんの名前は?大家何?

藤宮 史乃(善の祖母)

大家さんでいっか

支倉 亜湖

そ、そんな!私にも名前あります!
では改めて… 支倉亜湖と申します、これから一緒に生活するので男女であること、未成年であることを肝に命じ健全に共に協力し合い助け合い生活していきたいと思っています。なので…

藤宮 史乃(善の祖母)

思ってねーだろ

支倉 亜湖

……

う…なんでわかったの!? 建前的な挨拶はしないとと思ってたんだけど

支倉 亜湖

あはは~……まぁ、ご挨拶って事で。

藤宮 史乃(善の祖母)

嘘つきなんだな

支倉 亜湖

なんでそうなるの!違うもん!

藤宮 史乃(善の祖母)

先が思いやられるね…

くー……なんか噂の藤宮善と違ーう!優しくなーいっ 私と同級生なのに俺様言葉でムカつくー

藤宮 史乃(善の祖母)

腹減った

支倉 亜湖

え?

藤宮 史乃(善の祖母)

俺に飢え死にしろって?

支倉 亜湖

え…

藤宮 史乃(善の祖母)

夕飯は大家さんが?

支倉 亜湖

えっ

藤宮 史乃(善の祖母)

あ~ 喉乾いたし枯れる…

支倉 亜湖

はぁ?

藤宮 史乃(善の祖母)

……

藤宮 史乃(善の祖母)

支倉亜湖、あんたと同居してるってバレたら俺とあんた、どっちが叩かれるんだろうな

支倉 亜湖

っ!?

な…なんて奴なの…… おばぁちゃん、藤宮善は危険な奴だって知ってた? 容姿端麗な藤宮善、入学式前から注目の的になってた彼。 寡黙でいて友達と騒ぐ事もあってその時の笑顔は半端なく…優しさ見えた時の笑顔の破壊力は計り知れない。 当然女子は目にはハートが散乱、だから私もいつか本人と話してみたいと思ってた…… なのに、なのに…… こんな奴だなんてー!!

藤宮 史乃(善の祖母)

あんた、彼氏いないと思うけどいないよね?

支倉 亜湖

普通にムカつく事平気で言わないでもらえる?

藤宮 史乃(善の祖母)

……ふーん。身長157くらいか、B、60、7… まぁいいや、とりあえず合格範囲だな

支倉 亜湖

藤宮 善君、それは完全なるセクハラです

藤宮 史乃(善の祖母)

何、違う?

支倉 亜湖

じゃなくて!

藤宮 史乃(善の祖母)

女ってめんどくさ

支倉 亜湖

そうでしょうね、ごめんねめんどくさい女が大家さんでー!

藤宮 史乃(善の祖母)

じゃ決定だな

支倉 亜湖

何が!

藤宮 史乃(善の祖母)

支倉亜湖、俺の彼女になれ

支倉 亜湖

え…

ただいま思考回路停止中……

停止中…

支倉 亜湖

は!何事!?

藤宮 史乃(善の祖母)

めんど… ほら、こっち見ろ

支倉 亜湖

へ…

藤宮 史乃(善の祖母)

あんたは今から俺の彼女です、わかったか

彼、藤宮善が言うと私のおでこをピン!と弾いた。

とんでもない宣言をされてしまった。 少なからず憧れていた人にまさかの彼女宣言。 嬉しいなんて言えない、だって彼は… 私のイメージしてた彼とは違うから。 噂は怖い、私は知ってしまった… そしてさらに、彼が私に言った一言が私の女心を砕く。

藤宮 史乃(善の祖母)

彼女って言っても形だけだから、忘れんなよ

私、これからどうなるの? おばぁちゃん、これって神様のイタズラ?

あれから夕食を作ることになって、私が私なりに出来る料理は… レンジ様々チン料理。 わかっていた反応、上から目線の彼が睨むのは冷凍のペスカトーレスパ。

支倉 亜湖

……何か?

藤宮 史乃(善の祖母)

ないだろ、絶対に、ないね

支倉 亜湖

急に料理とか無理だもん!

藤宮 史乃(善の祖母)

無理だもん!って言って頼るのがレンジかよ!

支倉 亜湖

悪い?だったら食べないでっ

藤宮 史乃(善の祖母)

いらねーし。外行く

支倉 亜湖

え、外?何しに…

藤宮 史乃(善の祖母)

飯のため、生きるため

支倉 亜湖

うぅ…

そこまで言うとは… 料理はしなくても出てきてたし、板さんが作ってくれてたんだもん。だから…出来ないんだよ、私。

支倉 亜湖

お好きにどーそ、これ家の鍵だからなくさないで。あと、私の番号と家の番号…
念のため登録してよね

私はペスカトーレを手に自分の部屋へ。 一人ブツブツ文句言いながら食べていると玄関の閉まる音がした。 フォークを机に置いて溜息…… もういらないや。

なんでこうなるの… レンジで温めただけだけどちゃんと食べ物だよ。サラダくらいなら出来たかも… でも絶対文句言うでしょ、あの藤宮善だもの。 悔しい…… ムカつく…… 同居人だなんて私の方が知られたくないよ!

支倉 亜湖

あ、そういえば…
夢が実現しそうで嬉しいわって言ってたよねぇ…
なんの? ……ま、いっか。

しばらくしていつものように静かな一人暮らし時間の中、彼を気にせずお風呂に入りさっぱり。 タオルドライしまだ濡れる髪に流さないトリートメントでケアをする。 そんな時、玄関が閉まる音がした。

支倉 亜湖

あ… 帰ってきた?

藤宮 史乃(善の祖母)

……

藤宮 史乃(善の祖母)

いたのか

支倉 亜湖

いますとも!

支倉 亜湖

何、その大量の…

藤宮 史乃(善の祖母)

食材

支倉 亜湖

え、私への当て付け?すごい嫌だ

藤宮 史乃(善の祖母)

喋るのやめれば?

支倉 亜湖

……

支倉 亜湖

ねぇ なんでそんなに嫌な事ばっかり言うの?意地悪したり傷つけたり、楽しいの?

藤宮 史乃(善の祖母)

意地悪も傷つけたりもしてない、なんでそう思うわけ?
まさか、俺が好き?あんたも他の女と同じか… あ、女だもんな

支倉 亜湖

ねぇ!!
やめてよ… 私と藤宮君、今日初めて話したのに…
お互いにこんな風じゃ一緒に暮らしていけないじゃん!
なんでこんな…

藤宮 善

優しくして笑ってるだけで満足?
俺の何を見てて何を知ってる?
互いに知らないから嫌だとは考えない?
女と暮らすって、それがまさか同級生で、あんた俺に何を望むんだ?
勝手に俺のイメージとか…知らねーよ、そんなん!
だから嘘で付け回す女達を避けたくてお前を彼女にって提案したんだ、好きでやるかよっ

支倉 亜湖

……

ビックリした……

ほんとに、ビックリしたの。

だって、藤宮善が怒ってるから。

藤宮君、もしかして私と同じでこの同居に戸惑ってる? 玄関開けたら私がいて驚いた? 同級生が同居人って困るよね…

支倉 亜湖

ごめん。

藤宮 善

……

支倉 亜湖

これって神様のイタズラかな?
ごめん、藤宮君…
怒ってるのわかる気がする。

藤宮 善

だから?

支倉 亜湖

私みたいにどうしようって困ったんだよね、同じ学校の同級生だもん。
そりゃ嫌だよね…
だから、ごめん。

藤宮 善

意味わかんね

支倉 亜湖

うん…
この同居二人で続けてくにはみんなに知られるのも困るし、藤宮君を好きな子達を遠ざけるのに、私が役立つなら嘘でも彼女でいい、なんでもやる。
だから、一からやり直そうよ

藤宮 善

……

藤宮 善

バカなりに考えたわけね。

支倉 亜湖

バカじゃないし

藤宮 善

…亜湖

へ…

今、私の名前言った?

支倉 亜湖

亜湖って呼んだよね?

藤宮 善

彼女だろ、嘘でも。

支倉 亜湖

そうだけど…
ちょっと嬉しいなぁって。

藤宮 善

何が

支倉 亜湖

名前、呼ばれるの嬉しい。みんな名前で呼んでくれるから、近くに感じるのがね、嬉しい。

藤宮 善

みんな…

支倉 亜湖

うん

藤宮 善

俺は善、彼女なら堂々と呼べよ

支倉 亜湖

え… 藤宮君じゃダメ?

藤宮 善

彼女だろ、嘘でも。

嘘でもって言い過ぎじゃないの? はー、覚悟決めなきゃね。 だって私たち、現実に今、二人でいるんだから。

藤宮 善

で、短パン短すぎて隙間からパンツ見えてるぞ

支倉 亜湖

え…

支倉 亜湖

っ!?

支倉 亜湖

いやぁーっ!!

藤宮 善

うるせ…

前途多難です。 神様、本当にイタズラしたんじゃないですか? 私と彼、これからどうなるんですか?

誰にも言えない秘密が出来てしまった…

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