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スマホの画面を見つめたまま

私は身動きがとれなかった

それほど集中してしまう

表示されているのは

ひとつのテキストファイル

新聞部の新連載用に聞いて回って

なんとか見つけることができた

実話怪談だった

部長

二学期も始まったし!

部長

我が新聞部も少し変わったことがしたいなぁ!

部長が迷惑な思いつきをしたのは

二学期最初の会議のときだった

曰く

1、季節外れこそ美徳である

2、意外性を愛せ

3、人に迷惑がかからない 程度の娯楽提供

そんな流れで部員全員が

連載記事を持つことになった

なったんだけど……

なんで私が怖い話担当に……!

雑誌からのパクりはダメとか言うし

誰も気付かないと思うんだけどなぁ

怖い話なんて知らないっての……

ちなみに他のメンバーは

部員A

桜だけじゃない!
四季折々花見スポット

部員B

ネットで知る、各地の9月

部員C

昔の流行服で街に繰り出せ

などなど

なにも浮かばなかった私だけ

部長

じゃあ怖い話とかどう!?

って言われて、 仕方ないからそれにしちゃった

もちろん、愚痴ってても ネタはでない

そこで、友だちに 怖い話を取材した

 

まぁ当然!

都合よく怖い目に遭った子なんて!

そうそういない!

 

ネタはないし締め切りは迫るし

かなり煮詰まった頃だった

あの、怖い話を募集してるって聞いたんだけど

 

声をかけてきたのは 知らない女の子だった

え、あるの!?

怖い話、探してるって聞いて……

私に実際に遭ったことなんだけど……

いいのいいの!

そういうのがいいの!

あなた何年生? 名前は?

あの、匿名でお願いしたいの

詳しいことは、全部この中に入ってるから……

USB?

できればあなたの口から聞いた方が、取材っぽくて嬉

じゃあ、私これで!

しいんだけど、って、えぇ!?

ちょっと!

……行っちゃった

急ぎの用事でもあるのかなぁ

まぁいいかぁ

とりあえず今日、部室のパソコンでデータ見てみよ

そこに入っていたのがこの テキストファイルだった

パソコンだと読みづらいから スマホに転送して読んでる

まるで小説みたいで 長い文章に慣れてない私でも

引き込まれてしまった

小説を読んでほしいだけのかまちょに引っ掛かったかと思ったけど……

地名は実在してるし

実際そこには変な噂もあるみたいだし

ホントにあったことっぽいなぁ

これ、雑誌に送ったらお金もらえるんじゃない?

そう思えるほど面白くて 気になる話だった

提供者の祖父母が住む山間部の集落

くちなわさまって呼ばれてる籠

それを祀ってる住民たち

それだけでもおもしろいのに

不注意で籠を蹴っちゃった提供者

籠から逃げ出した無数の蛇

それ以来、帰ってきてからもどこかに必ず蛇を見る

どう考えてもヤバいー

でもおもしろいー!

この場所は危険! みたいな感じでまとめるかなー

……ん?

目の端に

なにかが見えた気がして 目をこする

……気のせいかな

今気づいたけど
もう7時じゃん!?

誰もいないし!

部長達、なんで声かけて
くれないかなー

残ってるの
私くらいじゃない?

はやく帰ろ……

電気が消えた廊下を急ぐ

夏休みと違って 外ももうけっこう暗い

やだなぁ

夜に1人で帰るだけでも嫌なのに

怖い話読んだあとなんですけど

……え

うそでしょ

なんで正面玄関の鍵閉まってんの!?

ガタガタ揺さぶっても

分厚いガラス戸はぜんぜん開かない

最悪

たしかこのへんに
内鍵があったと思うんだけど……

そんなことをしてると 廊下から音が聞こえた

あ、よかった!

先生はまだいたんだ

怒られるかもしれないけど
鍵は開けてもらえるよね

先生すみません、ここ――

言いかけて、気づく

その音は足音じゃない

なにか引きずってるような音

そう、例えば

大きな蛇がずるずると

こっちに向かってるような

――っっ!!

気が付いたら走り出していた

一度廊下に出なきゃいけないけど、 玄関じゃ逃げ場がない

振り返らないように全力で走って、鍵の開いてる窓がないかを探した

気のせい、気のせい

気のせい、気のせい……!

こんなの私の勝手な妄想!

あの音だって、先生が明日の準備してるだけ!

だけど……!

怖いものはしかたない!

ロックの外れた窓を乱暴に開けて

スカートがめくれるのも 気にせず乗り越える

やった、校門は開いてる……!

ちょっとホッとして 校門に走りながら振り返る

 

そこには、妖しい光が 二つ揺らめいていた

はぁ
マンションまで帰ってこれた……

もう息は上がりっぱなしだった

ふだん走ったりしない 文化部員だからそんなもんだ

エレベーターで落ち着ければいいや

そう思っていたら 後ろに女の人がいた

……自動ドア、開いたっけ……?

息を整えるのに夢中で 気づかなかったみたい

長い黒髪に、黒い服

どこかでお葬式でも あったのかもしれない

なんにしても 誰かがいるだけで心強い

エレベーターは ぜんぜん下りてこない

……今日、ぜんぜん下りてこないなぁ

なんだか背中がゾクゾクする

静かな感じが居心地悪くて なんとなく女の人を盗み見る

女の人は舌なめずりを したように見えた

……階段で行こう

心臓がはねるような感覚を 気づかれないように

エレベーターホールを離れる

 

女の人の舌は、先が裂けていた

意味分かんないんだけど!

なんで!? 私関係ないじゃん!

なんでこんな怖い思いしなきゃなんないの!?

明日、絶対部長に文句言って……!

文句を叫びながら階段を上がる

こうでもしないと 耐えられそうになかった

私の家のあるマンションは ちょっと古い

階段は少し錆びた 鉄製の外階段だ

歩くとカンカン音がする

上から誰か降りてくる……?

しかも人とすれ違うのが ちょっと困るくらい狭い

だから踊り場でどちらかが 待つのがお約束だ

怖い怖いと思ってるから怖いんだ

誰か、ちゃんと誰かを見れば

怖いのなんて……

そう思って 踊り場で上の人を待つ

カンッ

カンッ

カンッ

とてもゆっくりした足音だ

もしかしたら 私に気づいてないのかも

あの、お先にどうぞ

カンッ

足音が止まる

返事はない

不思議に思ってると ガンッと音がした

なにか落ちたみたいな音

直後、ゾルッと音がした

一目散に下に逃げ出した

理由なんてどうでもいい

転がり落ちそうになる それも関係ない

今は

 

今はアレから逃げるのが最優先

 

そのエレベーター、乗せてください!!

一階まで駆け降りて 閉まりかけていたエレベーターに滑りこむ

どうしたの、大丈夫?

はい……

すみません、大丈夫です

ありがとうございます……

大きく息を吐いて 涙がにじんでた目元を拭いた

明るいエレベーター 普通の人

それだけでこんなに安心する

7階、お願いできますか

なんとか階をお願いして その場にへたりこむ

今日だけで……一ヶ月分走った気がする……

でも、逃げられた

逃げきれた

 

そう思い込んでしまった

男の人は 黒いスーツを着ていた

部長

いやー、すごい!

部長

あの連載めちゃくちゃ好評だよー!

部長

こういうライター向いてんじゃない!?

そんなことないですよ

取材したことをそのまま書いてるだけですから

部長

いやいや、そんなことあるって!

部長

あの連載が始まってから、増刷しまくりだし!

部長

隣の高校の新聞部からも、購読させてくれって連絡がきてさ!

部長

部長として鼻が高いのなんの!

そう言ってもらえれば嬉しいです

ところで部長のところには……

まだ、来ていませんか?

部長

ん? なにが?

いいえ、なんでも

そういえば知ってますか?

『読む』の語源は
『呼ぶ』にあるって

部長

へぇ。知らないや

部長

さすがの博識だな

それに、蛇の憑物は増殖するんですって

蛇憑きをよんだ人間もまた蛇憑きになる

……楽しみですね、部長

部長

ん?

部長

よくわかんないけど……

部長

そうだな

部長

たくさんの人が読んでくれたらいいな!

あなたもよんだね?

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