ランチ時、私は決まって社員食堂の窓際の席に座る。
通称“窓際族”というものだ。
杉本
◯◯さん、隣いい??

◯◯
いいよ。佐一君今日もガッツリだね。

杉本
◯◯さんは珍しくお弁当じゃないんだね。

◯◯
昨日お給料日だったからね。今日だけは贅沢に。

杉本
それ以外は毎日お弁当だから、しっかりしてるなぁ◯◯さんは。

◯◯
一人暮らしが長いだけだよ。

杉本
俺もやっぱり自炊しないと駄目かなぁ。

◯◯
そうなの??

杉本
うん。どうしてもお惣菜とかインスタントに頼っちゃって。

◯◯
いざ作るとなると何買えばいいか分かんなくなるしね。

杉本
そうそう。

◯◯
献立考えるのもわりと大変。

杉本
やっぱりそうなの??

◯◯
うん。だから私も割引のお惣菜あったらつい買っちゃう。

杉本
割引のお惣菜は救世主だもんな。

◯◯
うんうん。

杉本
レシピ本とかみるの??

◯◯
みるよ。

杉本
なんかオススメない??

◯◯
これとかどう??

食事そっちのけで話しているうち、顔の距離が近くなっていることに気づく。
◯◯
ごめっ、気づかなくて。

杉本
俺は、大丈夫。食べる時間なくなっちゃうね。

◯◯
うん、食べよう。

◯◯
さぁ、午後も頑張ろっか。私、歯磨きしてくるから先戻ってて。

杉本
うん。じゃあ◯◯さんの分も片付けとく。

◯◯
いいの??ありがとう。

デスクに戻ると、佐一君はなにやら部長に言われていて。そして部長に自分も呼ばれた。
杉本
ごめんね◯◯さん、巻き込んじゃって。

◯◯
良いんだけど、何やらかしたの??

杉本
ちょっと強めに詰め寄り過ぎたかなぁ。

◯◯
えー。

杉本
◯◯さん。

杉本
今度、俺に料理教えてよ。

◯◯
わ、私でよければ…!!

杉本
決まりだね。あ、タクシー!!

タクシーに乗ってからも頭のなかで彼のさっきの言葉がループする。
◯◯
(え、佐一君彼女いないの!?あんなこと言うってことは、そうだよね。ね!?)

ちらりと横を向くと、佐一君は王子様スマイルで私を見ている。
◯◯
(ひぇぇぇ!!)

手を繋いだままのことにも気づかず、目的地まで一直線。